アンドリュー・フォン・オーエン/ピアノ・リサイタル(2012年9月23日 愛知県芸術劇場コンサートホール)
アンドリュー・フォン・オーエン ピアノ・リサイタル
2012年9月23日(日)13:30 愛知県芸術劇場コンサートホール(1階13列4番)
アンドリュー・フォン・オーエン(Andrew von Oeyen)(piano)
ベートーヴェン(Beethoven)/ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調「悲愴」op.13
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調「ワルトシュタイン」op.53
~休憩~
ショパン(Chopin)/舟歌 嬰ヘ長調 op.60
ショパン/ワルツ ロ短調 op.69-2
ショパン/エチュード ホ短調 op.25-5
ショパン/幻想即興曲 嬰ハ短調 op.66
ラヴェル(Ravel)/亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル/ラ・ヴァルス
トーク
~アンコール~
ショパン/ノクターン第20番嬰ハ短調
ショパン/子犬のワルツ
ドビュッシー/月の光
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今年も遅めの夏休みをとり、ふだん行けない関西のコンサートホールに出かけてみようとあれこれ調べた結果、今年は名古屋を訪れることに決めた。
出発した日に泊まるホテルの近くに「電気文化会館」というホールがあり、先日王子ホールで聴いたばかりのサンドリーヌ・ピオー&スーザン・マノフの歌曲コンサートが開かれるとのことで、
もし開演時間(16時)に間に合って、当日券が残っていたらもう一度聴こうかと思っていたのだが、結局家を出る時間が遅くなり、間に合わなかった。
まあ、それはもし可能だったらということで、実際の目的はその翌日の2公演だったので、諦めはついた。
そして、本来聴こうと思っていたコンサートの場所は、新幹線の名古屋駅から地下鉄東山線で2駅目の「栄」駅近くの2つのホールである。
まずは愛知県芸術劇場のマチネー公演である。
こちらの劇場は大ホール、小ホール、コンサートホールという3種類の音楽ホールがあり、さらに美術館やアートスペース、さらに芸術関係の図書館のような施設もあり、名古屋のアートの中心地としての役割をもっているようだ。
ちなみにこのコンサートが終わった後、大ホール前に聴衆の行列が出来ていたので、誰が来るのかと思ったら、米米クラブの石井竜也のライヴだった。
容姿を売りにするアーティストは数多い。
演奏家もビジネスとして舞台にたつわけだから、戦略の一つとして容姿を武器にするのは悪いことではない。
だが、この売り出し中のアメリカ人ピアニスト、アンドリュー・フォン・オーエンはただその容姿の良さだけを前面に押し出すのではない。
確かに、今回のコンサートで前半と後半で衣裳を変えたり、正規のプログラム終了後に女性スタッフを伴って舞台に現れ、トークコーナーが設けられたりしたのは、イケメンピアニストならではと言えなくもないだろう。
だが、ベートーヴェン、ショパン、ラヴェルといった3人の国も様式も異なる作品を聴いて、このピアニストが豊かな音楽性と清潔な美音をもった実力派であることははっきり感じられたのである。
いわゆる「イケメン」の演奏は、本当の実力よりも軽く見られがちに思われる。
しかし、オーエンという若いピアニストは、ベートーヴェンの構築感も、ショパンの繊細な歌も、ラヴェルのグロテスクさも、どれもしっかりと感じさせてくれる聴きごたえのある演奏だった。
テクニックは安定しているし、テンポも恣意的なところがなく自然で、タッチは美しく音が汚れたりすることはない。
地に足をつけて、しっかりと作品のスタイルを表現していたのは好感がもてた。
知名度はまだこれからというところだろうが、すでに若い女性ファンが増えている予感は感じられる。
ステージマナーなどはまだ若干固さが感じられた。
後は、演奏に彼ならではの魅力がさらに加わるといいと思うが、それは経験を積むことによって獲得されることだろう。
望むらくは、才能を磨耗させずに、充分に熟成させる時間をもちながら演奏活動を続けてほしいものだ。
最後に一つ愚痴を。
プログラム1000円は明らかに高過ぎ!
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