デジュー・ラーンキ/ピアノ・リサイタル(2012年10月2日 浜離宮朝日ホール)
【浜離宮朝日ホール 開館20周年記念公演】
デジュー・ラーンキ ピアノ・リサイタル
2012年10月2日(火)19:00 浜離宮朝日ホール(1階1列2番)
デジュー・ラーンキ(Dezső Ránki)(piano)
ハイドン/ピアノ・ソナタ第49番変ホ長調Hob XVI/49 Op.66
ドビュッシー/子どもの領分
ドビュッシー/版画
~休憩~
シューマン/クライスレリアーナ
~アンコール~
シューマン/「幻想小曲集」~「夕べに」Op.12-1
関東に戻っても、宗次ホールで聴いたラーンキの素晴らしさが頭からはなれず、もう一度聴きたくなったので、東京公演も聴くことにした。
久しぶりの浜離宮朝日ホールは若干私の家からは遠いが、音響は非常に素晴らしかった。
プログラムは前半が名古屋公演と同じで、後半がリストなどの代わりにシューマンの「クライスレリアーナ」だった。
やはり関心はラーンキがどのような「クライスレリアーナ」を聴かせてくれるかという点にあった。
今回ホールの1列目で聴いたが、やはり鼻息はもちろん、音を出さないように歌っているのが終始聞かれ、彼の「癖」が健在だったことを再認識した。
今回の席は左端の方だったので、彼の姿をほぼ斜め後ろから見る形になったが、こうして眺めると、背筋は伸びていながらも音楽に合わせて必要最低限に体を動かしているのが分かる。
ただ、それが常に音楽と結びついた動きなので、聴き手は音楽に集中することが出来た。
今回あらためて聴いて、彼のダイナミクスの自在さに最も印象付けられた。
ラーンキは一体どれほどの強弱の種類をもっているのだろうか。
一つとして単調な繰り返しはなく、同じ楽句をダイナミクスやフレージング、ペダリングなどの様々な手段を用いて、何色もの輝きを放つ。
いくら腕の立つ若手が沢山出てこようが、これほどの豊富なパレットを自在に操れる人はそうはいないだろう。
ハイドンのソナタはユーモラスな軽快さが印象的で、それをラーンキは引き締まった音でなんとも魅力的に表現する。
あらためて、ハイドンのピアノソナタはもっと頻繁に演奏されてもいいのにと思える充実感があった。
ドビュッシーでもラーンキの余計なものを削ぎ落とした引き締まった演奏が各曲の持ち味を見事に浮き立たせる。
ドビュッシーの多彩な書法をくっきりと抽出するラーンキの演奏をたっぷり聴けて、なんとも充実した時間だった。
後半の「クライスレリアーナ」は一般に冒頭から飛ばす演奏が多い中、彼はテンポも音量もセーブしてスタートし、それは音のうねりよりもさざなみのような感じで新鮮だった。
その後も各曲の性格をさらりと、しかし含蓄のある響きで見事に表現し、30分かかる全曲があっという間に感じられたほどだった。
それにしても、先日「子供のためのアルバム」を聴いた時にも感じたが、シューマンの作品は確かにビーダーマイアー的雰囲気をまとっていることが少なくないが、それが決して単調にならず、聴き手の心に引っかかる響きが聴かれるのは、この作曲家がいかに非凡だったかを思わせる。
アンコールのシューマン「夕べに」がまた素晴らしい歌に満ち溢れ、彼こそ今聴くべきピアニストだとあらためて感じさせられた。
今回は聴衆のみなさんも素晴らしく、その集中力は一体感があり、気持ちよく演奏を聴くことが出来たのはうれしかった。
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コメント
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