ホルツマイア&東響&スダーン/第602回定期演奏会(2012年7月21日 サントリーホール)
<マーラー・リーダー(歌曲)・プロジェクト>
東京交響楽団第602回定期演奏会≪東響コーラス創立25周年記念①≫
2012年7月21日(土)18:00 サントリーホール 大ホール(1階4列26番)
ヴォルフガング・ホルツマイア(Wolfgang Holzmair)(Br:*)
チャールズ・キム(Charles Kim)(T:**)
東響コーラス(男声合唱:**)
東京交響楽団
ユベール・スダーン(Hubert Soudant)(C)
マーラー(Mahler)/歌曲集「さすらう若人の歌(Lieder eines fahrenden Gesellen)」(*)
Ⅰ.恋人の婚礼の日
Ⅱ.朝に野原を往けば
Ⅲ.ぼくは燃える刃を抱え
Ⅳ.恋人の碧い二つの瞳
~休憩~
リスト(Liszt)/ファウスト交響曲(Eine Faust-Symphonie)S.108 (**)
Ⅰ.ファウスト
Ⅱ.グレートヒェン
Ⅲ.メフィストフェレス
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マーラーの「さすらう若人の歌」をヴォルフガング・ホルツマイアが歌うというので、サントリーホールに出かけてきた。
東響コーラス創立25周年記念シリーズの一環である。
ほかに長大なリストの「ファウスト交響曲」も演奏された。
久しぶりにステージで見たホルツマイアは中年になっても清々しい容姿を維持していた。
歌声は紛れもなく懐かしいホルツマイアの歌唱であったが、高音域になると、さすがに「エイッ」とばかりに飛びつくような感じで音を捉えるのは年齢的に致し方ないだろう。
それゆえに高音は力みが感じられたが、音程を外さないのはさすがである。
中・低音域は彼らしい柔らかく優しい響きが維持されており、そこに年輪を加えた味わいが増し、心地よい歌唱を聴かせてくれた。
ただ、時折声がかさかさする箇所もあったが、これも現在の彼の年齢を考慮すれば気にするほどではなかろう。
マーラーの傷心の歌曲集をホルツマイアは基本的に左手を後ろに回し、右手をのぞきこむような特有のポーズで、演じ、歌った。
若者らしい覇気よりはむしろ諦念を交えた悟ったような歌であり、それは彼ならではの解釈と感じた。
傷心に身もだえするというよりは第三者的な視点で優しく救いを感じさせるかのような歌唱であった。
あるいは放心状態に焦点を合わせた歌唱とも解釈しうるだろう。
スダーン指揮のオケも繊細に美しく表現していた。
後半のリスト「ファウスト交響曲」に関しては、生ではじめて聴く作品なのだが、3つの楽章それぞれがファウスト、グレートヒェン、メフィストーフェレスにあてられて、各人の感情や表情を描き出すといったもの。
最終楽章の「メフィストーフェレス」の最後の締めにテノール独唱と男声合唱が加わり、「永遠に女性的なるもの」云々のテクストが厳かにかつ力強く歌い上げられる。
ちなみに最終楽章が始まっても合唱団と独唱者が登場しないので、いつ出てくるのかと思っていたら、歌いだしの少し前のトレモロのあたりで一気に入場して、すぐに歌が始まった。
東響コーラスは年配の方が多いようにお見受けしたが、それゆえか優しく温かい響きが心地よい。
ソリストのチャールズ・キムは初めて聴いたが、ステージ後ろ側からも朗々と響く豊かなヴォリュームと輝かしい美声をもったテノールだった。
最後の盛り上がりは素晴らしく、独唱、合唱、オケが渾然一体となった高揚感は素晴らしかった。
ユベール・スダーン指揮のもと、非常に精度の高い演奏を聴かせてくれた東京交響楽団にも大きな拍手を贈りたい。
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コメント
ご無沙汰しております. Sandmanです.
実は私, 1994年から東京交響楽団のサントリー定期の会員で, それ以来, ほとんど毎回聞きに行っています.
それ以前は, N響の会員だったのですが, ふとしたことから, 東響の演奏を一度聴き, その選曲と演奏の新鮮さに感銘を受けて, それ以来の会員で, 東響以外の交響楽団はあまり聞かないというほどの東響ファンです.
そんな訳で, 7月21日の演奏会も聞きました.
マーラのさすらう若人は, バリトンの生で聞くのは初めて, リストのファウスト交響曲も初めて聴く曲で, 私にとっては, 新鮮な感動を得られたコンサートでした.
特に, ファウスト交響曲は, 最近の東響の演奏のなかでもとびっきりの熱演で, 初めて聞く私も感銘を受けました.
マーラも, 青春の痛々しさが伝わってくる演奏でした.
今年度は, マーラの歌曲特集ということで, これからの定期公演も楽しみです.
投稿: Sandman | 2012年8月16日 (木曜日) 22時31分
Sandmanさん、こんにちは。
コメントを有難うございます。
ご返事が遅くなりまして、すみません。
Sandmanさんも会場にいらしたのですね。
東響の会員になられて、オケの活動をサポートされているのは素晴らしいですね。
私はオケの曲はあまり聴かず、ソリストや曲目次第でたまに出かけるというあまり良くない聴き手なのですが、今回のコンサートは胸に訴えかけてくるものを感じ、素敵な演奏でした。
特に「ファウスト交響曲」は私も歌、合唱、オケの全員の熱気あふれる演奏に感銘を受けました。やはり生演奏はいいですね。
東響は今後もマーラーの声楽曲を続けて演奏してくれるようなので、私も予定があえばぜひ聴いてみたいと思います。
投稿: フランツ | 2012年8月18日 (土曜日) 13時39分