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モイツァ・エルトマン&ゲロルト・フーバー/リサイタル(2012年6月7日 王子ホール)

モイツァ・エルトマン
2012年6月7日(木)19:00 王子ホール(B列1番)

モイツァ・エルトマン(Mojca Erdmann)(Soprano)
ゲロルト・フーバー(Gerold Huber)(Piano)

フランツ・シューベルト(Franz Schubert)作曲

幸福(Seligkeit) D433
乙女(Das Mädchen) D652
恋はいたるところに(Liebe schwärmt auf allen Wegen) D239/6
あちこちに矢が飛び交っている(Hin und wieder fliegen die Pfeile) D239/3
男なんて 皆ろくでなし(Die Männer sind chamant!) D866/3

若き修道女(Die junge Nonne) D828
アルゼルモの墓で(Am Grabe Anselmos) D504
月に寄せて(An den Mond) D259
グレートヒェンの祈り(Gretchens Bitte) D564
糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade) D118

~休憩~

リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)作曲

ひどいお天気(Schlechtes Wetter) Op.69-5
さまよう心(Ich schwebe) Op.48-2
万霊節(Allerseelen) Op.10-8
ぼくの考えのすべて(All mein Gedanken) Op.21-1
夜(Die Nacht) Op.10-3
知りはしない(Nichts) Op.10-2

口の堅い者たち(Die Verschwiegenen) Op.10-6
高鳴る心(Schlagende Herzen) Op.29-2
心を飾る王冠(Du meines Herzens Krönelein) Op.21-2
あした(Morgen) Op.27, Nr.4
花束を編みたかった(Ich wollt' ein Sträusslein binden) Op.68-2
セレナード(Ständchen) Op.17-2

~アンコール~
メンデルスゾーン/歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op.34-2
モーツァルト/魔術師(Der Zauberer) K.472
モーツァルト/ラウラに寄せる夕べの想い(Abendempfindung an Laura) K.523

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ソプラノのモイツァ・エルトマン(母国では"r"を母音化して“エアトマン”と発音することが多いようだ)の日本初リサイタルを聴いた。
ピアノはゲアハーアー(ゲルハーエル)の共演者として知られるゲロルト・フーバー。

胸元の大きく開いた鮮やかなブルーのドレスで登場したエルトマンは実物も美しい。
一体何頭身なのだろうかと思うほど顔は小さくブロンドの髪をもち、愛らしい容姿で舞台人としての魅力を発散していた。

声はリリカルで声量も充分、清楚な魅力をふりまいた。
前半のシューベルトではその選曲が今の彼女向きと思われる軽めの作品中心だったが、これがぴったりはまって、気楽に聴くことの出来る歌唱だった。
「糸を紡ぐグレートヒェン」では清楚な声で狂おしい恋心を歌うのだから、そのギャップでより惹きこまれる。
人によっては物足りないと感じる方もいると思うが、私にはこの作品、それほど重量感は必要ないと思うので、彼女の歌唱に素直に共感できた。
恋人の不実を目撃した女性の愚痴を歌った「男なんて 皆ろくでなし」では手を腰にあてて、表情豊かな語り口でコケットリーを発揮する。

後半のシュトラウスでは声はより柔軟に孤を描き、伸びやかな美声でホールを満たした。
他の多くの歌手のような濃密さではなく、爽快感が吹き抜ける歌唱で素敵だった。
「万霊節」の真摯さから、「花束を編みたかった」の珠をころがすようなメリスマまで、その表現の幅と技巧は素晴らしい。
女声歌手がこうして頻繁にシュトラウス歌曲をとりあげるのは、歌手、聴衆両者にとって好まれるということかもしれない。

ピアノのゲロルト・フーバーは、相変わらずオカルト映画ばりの低いうなり声を発しながら演奏するが、さすがにゲアハーアーの時よりは声のヴォリュームも頻度も抑えているようだ。
スタジオ録音では全く聴こえないのに(我慢しているのだろうか)、生演奏になると唸り出すというのが面白い。
演奏においては、抑えたり主張したりの変幻自在さは相変わらず見事で、ゲアハーアーの時ほどやりすぎ感は感じなかった。

アンコールは3曲。
いずれも3日後のコンサートの演目からメンデルスゾーンとモーツァルトの名作で、愛くるしい今の彼女にぴったり。
「ラウラに寄せる夕べの想い」などその美しさはめったに聴けないものだった。

男声歌手たちの活躍に比べて、リリック・ソプラノが今ひとつ冴えない昨今、彼女にはさらにリートを歌い続けてほしい(オペラに引っ張りだこでなかなか時間はとれないだろうが)。

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