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ワーグナー/ローエングリン(2012年6月1日 新国立劇場 オペラパレス)

2011/2012シーズン
[New Production]
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)/ローエングリン(Lohengrin)(全3幕)
【ドイツ語上演/字幕付】
上演時間:第1幕65分 休憩40分 第2幕85分 休憩40分 第3幕65分
合計4時間55分

2012年6月1日(金)17:00 新国立劇場 オペラパレス(4階1列7番)

【ハインリヒ国王(Heinrich der Vogler)】ギュンター・グロイスベック(Günther Groissböck)
【ローエングリン(Lohengrin)】クラウス・フロリアン・フォークト(Klaus Florian Vogt)
【エルザ・フォン・ブラバント(Elsa von Brabant)】リカルダ・メルベート(Ricarda Merbeth)
【フリードリヒ・フォン・テルラムント(Friedrich von Telramund)】ゲルト・グロホフスキー(Gerd Grochowski)
【オルトルート(Ortrud)】スサネ・レースマーク(Susanne Resmark)
【王の伝令(Der Heerrufer des Königs)】萩原 潤(Hagiwara Jun)
【4人のブラバントの貴族(Vier brabantische Edle)】大槻孝志(Otsuki Takashi);羽山晃生(Hayama Kosei);小林由樹(Kobayashi Yoshiki);長谷川 顯(Hasegawa Akira)

【合唱(Chorus)】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽(Orchestra)】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)
【指揮(Conductor)】ペーター・シュナイダー(Peter Schneider)

【演出(Production)】マティアス・フォン・シュテークマン(Matthias von Stegmann)
【美術・衣裳(Scenery and Costume Design)】ロザリエ(rosalie)
【照明(Lighting Design)】グイド・ペツォルト(Guido Petzold)

新国立劇場の今シーズン最後の演目、ヴァーグナーの「ローエングリン」をはじめて生で聴いた。
シュテークマン演出の新プロダクションの初日である。
この日は5時開演とのことで、あらかじめ休暇をとり、睡眠と体調管理をしっかり整えたうえで会場に向かった。
その成果が出たのか、9割方は起きていられたのは私としては珍しいぐらいだ。
ヴァーグナーのオペラは演奏者も大変だろうが、聴く方もある種の持久力が求められる。
各幕間40分ずつを含めて5時間もの長丁場は私のようなヴァーグナーに普段あまり馴染んでいない者にとっては徐々に辛くなってくる。
何故これほどストーリーの展開を長々と続けるのか、その必然性はあるのか、正直なところ今の私には分からない。
だが、聞き終えた時の解放感と充実感は確かに他の作曲家のオペラでは味わえないものであろう。

マティアス・フォン・シュテークマンの演出は簡素で、象徴的な装置が置かれた中、格子模様の背景にこれまた抽象的な光の効果を用いて、必要以上のものをつめこまないスタイルだった。
衣裳は分かりやすく役柄に応じたものだったが、決して現代風アレンジではなく、オーソドックスといっていいのではないか。

今回は、タイロルロールのテノール、クラウス・フロリアン・フォークトの圧倒的な歌唱と存在感に尽きるといえるだろう。
声質が普通のヴァーグナー歌手とは異なり、優しい肌触りの心地よい声なのだが、声がどの音域でも全くむらがなく、無理せずとも会場の隅々にまで響き渡る声のヴォリュームをもっている。
さらに常に安定した音程、それに華やかな舞台姿は、紛れもなく世界的なスターであり、日本のオペラハウスでこのような素晴らしい歌手と出会えた幸運にただ感謝したい気持ちである。

エルザのリカルダ・メルベートは時々固さも感じられたものの、全般的にはこの役の複雑な心理を素晴らしく表現していた。
ハインリヒ国王(鳥刺しハインリヒ?)のグロイスベックの重厚な声の素晴らしさ、テルラムントのグロホフスキーの美声と細やかな演技、それにオルトルートの威力を見事に表現しきったレースマークにも感銘を受けた。
王の伝令を務めた萩原潤が外国勢に全く見劣りしない朗々たる歌唱を聴かせてくれた。
合唱団も演技を伴いながらも素晴らしいハーモニーを聴かせていた。
ペーター・シュナイダー指揮の東京フィルも後半若干疲れが感じられたものの、最後までヴァーグナーの世界をくっきりと描ききっていてブラヴォーである。

なお、第1幕の途中、ローエングリンが天上から登場して「私の氏素性を決して尋ねてはならない」と歌う箇所で比較的揺れの大きい地震が来た。
一瞬客席がざわめいたが、オケも歌手たちも全く動じず、何事もないかのように演奏が継続されたのは凄いと思った。
後で知ったのだが、地震が起きた時の心構えが事前に打ち合わせされていたようだ。

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コメント

フランツさん、今晩は。
私は4日のマチネーでしたが、2時に開演、終わったのが7時近く。2回の休憩があったものの、やはり途中で夢心地になったところがありました。音楽は聞こえていましたが・・・。
フランツさんは、休暇を取って、万全の備えでいらしたのですね。
観劇の最中に地震があったとのことですが、あの地震は、結構大きかったですね。
私は別のオペラの時に経験しましたが、舞台は演奏が続き、客席もスタッフも、冷静でした。
同じ演目を見たときは、フランツさんがどんな記事を書かれるだろうと、いつも関心を持って拝見していますが、今回は、私も同じような感想を持ちました。
主役のテノールは良かったですね。声がのびのびとしていて、とても素晴らしかったです。
歌とオケが、ちょっと合っていないなと思う箇所もありましたが、全体に良かったです。
最近は東フィルの演奏、オペラ以外でも聴きたいなと思うくらい、気に入ってます。

投稿: Clara | 2012年6月10日 (日曜日) 01時30分

Claraさん、おはようございます。
Claraさんは4日のマチネをご覧になったのですね。
ヴァーグナーは長いのでマチネの方がいいかもしれませんね。
私はいつもオペラに行ってはかなりの時間寝てしまい、後で後悔するので、今回はかなり意識的に体を休めてから出かけて成功しました(それでも各幕の終わりぐらいでぼーっとしてしまいましたが)。
Claraさんも観劇中に地震にあった経験がおありとのことですが、私はこれほど揺れたのは初めてで、さすがに動揺しました。しかし、事前にアナウンスで「この劇場は耐震構造です」というようなことが言われていたので、場内はみなパニックにならずにいられたのだと思います。
私もClaraさんのご感想を拝見するのをいつも楽しみにしていますよ。
主役のテノールは素晴らしかったですね!
他の歌手たちもみな粒が揃って素晴らしかったと思うのですが、フォークトはさらに上をいく素晴らしさを感じました。
東フィルも頑張っていますよね。これだけの長丁場を演奏するだけでも大変なのに、普段の定期公演もこなすわけですから、相互作用で演奏がますます充実しているのではないかと思います。オペラ以外でも私も聴いてみたいと思いました。

投稿: フランツ | 2012年6月10日 (日曜日) 04時44分

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