マルクス・ヴェルバ&ガリー・マシューマン/シューベルト&ブラームスの歌曲(Radio4 Concerthuis)
オランダのインターネット・ラジオ局Radio4が無料で音源を一定期間配信するConcerthuis、以前はオランダ国内での配信に限定されていたが、いつからか日本でも聴けるようになっていた。
そうした中、モーツァルトのオペラ公演などで来日経験のあるオーストリアのバリトン、マルクス・ヴェルバのリサイタルを見つけたのでご紹介したい。
録音:2010年10月25日, Wigmore Hall, London (live)
マルクス・ヴェルバ(Markus Werba)(BR)
ガリー・マシューマン(Gary Matthewman)(P)
1.シューベルト(1) 計16分02秒
1)アリンデ(Alinde, D904)
2)ヴィルデマンの丘で(Über Wildemann, D884)
3)夕映えの中で(Im Abendrot, D799)
4)ノルマン人の歌(Normans Gesang, D846)
5)タルタロスの群れ(Gruppe aus dem Tartarus, D583)
2.シューベルト(2) 計14分50秒
6)漁師の調べ(Fischerweise, D881)
7)歌びとの持物(Der Sängers Habe, D832)
8)孤独な男(Der Einsame, D800)
9)プロメテウス(Prometheus, D674)
3.ブラームス 計15分08秒
10)窓の前で(Vor dem Fenster, op.14-1)
11)ソネット(Ein Sonett, op.14-4)
12)恋人への通い道(Der Gang zum Liebchen, op.48-1)
13)マリーの殺害(Murrays Ermordung, op.14-3)
14)昔の恋(Alte Liebe, op.72-1)
15)おお涼しい森よ(O kühler Wald, op.72-3)
16)打ち勝ちがたい(Unüberwindlich, op.72-5)
マルクス・ヴェルバという名前を聞いて、リートファンならばその姓に反応すると思うが、往年の名伴奏者エリック・ヴェルバ(Erik Werba: 1918-1992)はマルクスの大叔父にあたるそうだ。
若く張りのある声と男性的な力強さをもった声質は将来を期待させる逸材だろう。
日本でもリートリサイタルを開いたはずだが、確か新人としてはかなり高価だった為チケットを買うのを見送ってしまった。
今回のウィグモア・ホール・ライヴのプログラムを見ると、決してポピュラーな曲の寄せ集めにはなっていない。
歌曲を深く味わう者だけが組めるような意欲的な選曲である。
そして、実際の歌唱も期待を裏切らぬ声の魅力と言葉さばきの美しさ、そしてテキストを重視しながらもメロディーラインを美しく際立たせる才能を感じた。
シューベルトも素晴らしいが、特にブラームスはヴェルバの良さがひときわ生きる素晴らしい歌唱である。
「マリーの殺害」のドラマをぜひ聴いていただきたい。
ピアノのガリー・マシューマンはイギリス出身の歌曲ピアニスト。
イギリスは昔から歌曲伴奏の名手を数多く輩出してきた。
ハロルド・クラクストン、アイヴァー・ニュートン、ジョージ・リーヴズ、ジェラルド・ムーア、アーネスト・ラッシュ、ジェフリー・パーソンズ、ジョン・コンスタブル、ロジャー・ヴィニョールズ、グレアム・ジョンソン、チャールズ・スペンサー、ジュリアス・ドレイク、マルコム・マーティノー等々。
上記のピアニストの中にはイギリス生まれではない人も含まれているが、みな活動の拠点をイギリスに置いた人たちばかりだ。
こうしたイギリスの伝統の一つを脈々と受け継ぐ人材が現れてくるのは頼もしい限りである。
ここでのマシューマンの演奏は、堅実だが雄弁で、細やかな表情をつけて実に気持ちよいピアノを聴かせている。
「夕映えの中で」の内声の響かせ方や「恋人への通い道」での歌わせ方など思わず惹き付けられる。
いつまで聴けるか分からないので、興味のある方はお早めに!
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