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ユリアンナ・アヴデーエワ/ピアノ・リサイタル(2011年11月7日 川口リリア 音楽ホール)

2010年 ショパン国際ピアノコンクールの優勝者
ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル

2011年11月7日(月)19:00 川口リリア 音楽ホール(B列6番)
ユリアンナ・アヴデーエワ(Yulianna Avdeeva)(Piano)

ショパン(Chopin)/舟歌 嬰ヘ長調 op.60(Barcarolle in F-sharp major op.60)

ラヴェル(Ravel)/ソナチネ(Sonatine)
 Modéré
 Mouvement de Menuet
 Animé

プロコフィエフ(Prokofiev)/ピアノ・ソナタ第2番 ニ短調 op.14(Piano Sonata No.2 in D minor op.14)
 Allegro ma non troppo
 Scherzo: Allegro marcato
 Andante
 Vivace

~休憩~

リスト(Liszt)/悲しみのゴンドラ2(La lugubre gondola No.2)
リスト(Liszt)/灰色の雲(Nuages gris)
リスト(Liszt)/調性のないバガテル(Bagatelle ohne Tonart)
リスト(Liszt)/ハンガリー狂詩曲第17番 ニ短調(Hungarian Rhapsody No.17 in D minor)

ワーグナー(リスト編)(Wagner; arr. Liszt)/オペラ「タンホイザー」序曲("Tannhäuser" Overture)

~アンコール~
ショパン(Chopin)/マズルカ イ短調 op.67-4
ショパン(Chopin)/マズルカ 変ロ長調 op.7-1
ショパン(Chopin)/マズルカ ロ短調 op.33-4

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ショパンコンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエワのリサイタルを聴いた。
今年に入ってから日本で行われた入賞者のガラコンサートでショパンの協奏曲第1番を聴いて、音楽家としての完成度の高さに魅了されたが、今回のリサイタルではショパンはたった1曲のみ。
そのほかの作曲家の作品をどのように演奏するのかという点にも興味をもって出かけた。

今回も黒のシャツとパンツ。
予想以上に小柄なのに驚く。
しかし、最初のショパン「舟歌」で、彼女の無駄な動きのない引き締まった音楽の世界に惹き込まれる。
すでに完成されたアーティストの演奏といった安定感がある。
続くラヴェルの「ソナチネ」ではクールな雰囲気で、ショパンとの違いを際立たせる。
そして前半最後のプロコフィエフのソナタ第2番が凄かった。
こんなに小柄で華奢な女性のどこに、これほどのずしりと芯のある低音やドラマティックな表現を可能にするエネルギーがあったのだろうか。
ここではその強靭な打鍵によって、彼女がロシアのピアニストであることを思い知らされた。

休憩後の最初のブロックはリストの比較的マイナーな作品を4曲。
こうした珍しい作品を聴ける機会をもてて、アヴデーエワに感謝!
最初の2曲は静かな中に陰鬱な表情が込められている。
「灰色の雲」などは最低限に切り詰められた音が、リストが晩年に達した世界の先見性を印象づける。
「メフィストワルツ第4番」とも題された「調性のないバガテル」は、悪魔的な響きを持ちながらも、有名な第1番に比べるとあっという間に終わってしまう。
そして最後の「ハンガリー狂詩曲第17番」もそれほど規模は大きくなく、華美さよりも暗さが印象に残った。
技巧を誇示する作品ならば他に沢山あっただろうが、ここでこのような派手さを排したモノクロに近い4作品をあえて選曲したところにアヴデーエワの知性を感じさせた。

そして、プログラム最後はリスト編曲によるワーグナー「タンホイザー」序曲。
ワーグナーお馴染みの曲をリストはそれほどテクニックを誇示するような装飾をすることもなく、作品そのものをピアノ一台で素直に演奏できるようにした作品だった。
リストのピアノ編曲にもいろいろな作風の違いがあるのだろう。
アヴデーエワはこのような編曲作品に対しても真摯で安定した演奏を聴かせていた。

アンコールでは、聴衆が待っていたであろうショパンばかり3曲。
マズルカを実に美しく味わい深く演奏し、聴き手を魅了した。

彼女のレパートリーがショパンだけではないことを知ると同時に、彼女のショパン演奏の素晴らしさもあらためて感じた一夜だった。
ステージ上にはコンクール優勝に浮き足立つことなく、作品に真摯に向き合う一人の芸術家の姿があった。

今回の日本ツアーはかなり長期にわたるようだ。
今後ますます広がり深まっていくであろう彼女の演奏を応援していきたい。

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