ペーター・レーゼル&S.ザンデルリング/ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス II(2011年10月8日 紀尾井ホール)
ペーター・レーゼル
シュテファン・ザンデルリング&紀尾井シンフォニエッタ東京
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス II
2011年10月8日(土)14:00 紀尾井ホール(1階12列4番)
ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(ピアノ)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
(Guest Concertmaster: José Maria Blumenschein)
シュテファン・ザンデルリング(Stefan Sanderling)(指揮)
ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)
ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op. 15
Allegro con brio
Largo
Rondo: Allegro scherzando
~休憩~
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op. 73「皇帝」
Allegro
Adagio un poco mosso
Rondo: Allegro, ma non troppo
------------------------
昨年から始まったペーター・レーゼルのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲シリーズの2日目を聴いた。
昨年の第2~4番に続き、今年は第1番と第5番「皇帝」。
つまり今年でレーゼルのベートーヴェンのソナタシリーズと協奏曲シリーズが同時完結となるわけであり、感慨深いものがある。
指揮のシュテファン・ザンデルリングは先日惜しくも亡くなったクルト・ザンデルリングの息子である。
レーゼルはザンデルリング親子二代にわたって共演したことになり、思いもひとしおではないだろうか。
さて、今回はベートーヴェンの両端の番号が演奏されたわけだが、第1番は、第2番より後に作曲されたそうなので(改訂などの都合で出版の順序が逆になったようだ)、内容はかなり充実している。
3つの楽章とも中身の濃い作品だったが、レーゼルはいつもの熟練したテクニックのもと、決して荒れないまろやかな美音で作品そのものを描き出していた。
特に第3楽章の途中に出てくる場末の酒場で演奏されるようなフレーズは印象的だが、その箇所も含めて、余裕をもって味のある演奏をしていて素晴らしかった。
その意味では後半の「皇帝」は人によってはよりドラマティックな演奏の方がいいと思われたかもしれない。
しかし、あたかもオーケストラの一部となったかのように「対決」よりは「協調」したピアノの音は、上質な室内楽のような趣で、もちろん作品のもつがっしりした壮大さも彼なりに表現されていた。
私にとっては紀尾井ホールで聴くピアノ協奏曲としてまさに理想的な響きと感じた。
また「皇帝」の第2楽章は、両端楽章とは対照的な天上の音楽のような美しさ。
そちらでのレーゼルの一見淡々としているようでありながらしっとりと沁みてくる演奏は絶妙だった。
紀尾井シンフォニエッタ東京はさすがに紀尾井ホールの響きを知り尽くしているかのように積極的で色どり豊かな演奏をしていて素晴らしかったし、指揮のシュテファン・ザンデルリングは拍手にこたえる時に常に笑顔でレーゼルとオケに敬意を表していたのが印象的だった。
レーゼルの2年にわたるピアノ協奏曲プロジェクトの完結に客席からは割れんばかりの拍手が長く続いた。
数日後のピアノ・ソナタ・シリーズ最終日がますます楽しみになってきた。
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