R.シュトラウス/サロメ(2011年10月22日 新国立劇場 オペラパレス)
2011/2012シーズン
リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)/サロメ(Salome)
全1幕休憩なし【ドイツ語上演/字幕付】
2011年10月22日(土)15:00 新国立劇場 オペラパレス(3階3列50番)
【サロメ(Salome)】エリカ・ズンネガルド(Erika Sunnegårdh)
【ヘロデ(Herodes)】スコット・マックアリスター(Scott MacAllister)
【ヘロディアス(Herodias)】ハンナ・シュヴァルツ(Hanna Schwarz)
【ヨハナーン(Johanaan)】ジョン・ヴェーグナー(John Wegner)
【ナラボート(Naraboth)】望月哲也(Mochizuki Tetsuya)
【ヘロディアスの小姓(Ein Page der Herodias)】山下牧子(Yamashita Makiko)
【5人のユダヤ人1(5 Juden 1)】大野光彦(Ono Mitsuhiko)
【5人のユダヤ人2(5 Juden 2)】羽山晃生(Hayama Kosei)
【5人のユダヤ人3(5 Juden 3)】加茂下 稔(Kamoshita Minoru)
【5人のユダヤ人4(5 Juden 4)】高橋 淳(Takahashi Jun)
【5人のユダヤ人5(5 Juden 5)】大澤 建(Osawa Ken)
【2人のナザレ人1(2 Nazarener 1)】大沼 徹(Onuma Toru)
【2人のナザレ人2(2 Nazarener 2)】秋谷直之(Akitani Naoyuki)
【2人の兵士1(2 Soldaten 1)】志村文彦(Shimura Fumihiko)
【2人の兵士2(2 Soldaten 2)】斉木健詞(Saiki Kenji)
【カッパドキア人(Ein Cappadocier)】岡 昭宏(Oka Akihiro)
【奴隷(Ein Sklave)】友利 あつ子(Tomori Atsuko)
【管弦楽(Orchestra)】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)
【指揮(Conductor)】ラルフ・ヴァイケルト(Ralf Weikert)
【演出(Production)】アウグスト・エファーディング(August Everding)
【美術・衣裳(Scenery and Costume Design)】ヨルク・ツィンマーマン(Jörg Zimmermann)
【振付(Choreographer)】石井清子(Ishii Kiyoko)
【再演演出(Revival Director)】三浦安浩(Miura Yasuhiro)
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尾高忠明が指揮する予定だった新国立劇場の「サロメ」、健康上の理由(肩が完治していなかったのだろうか)でラルフ・ヴァイケルトに変更して上演された。
またヘロデ王も「指環」に出演していたクリスティアン・フランツの代わりにスコット・マックアリスターが出演した。
今回の上演、新国立劇場ではすでに過去何度も上演しているプロダクションのようで、演出家と美術・衣裳の担当者はすでに故人となってしまっている。
しかし、私は「サロメ」を二期会のコンヴィチュニーによる奇抜な演出で見たのがはじめてで、今回のエファーディング版の正統的な演出がかえって新鮮に感じられた。
それにしても、このオスカー・ワイルドによる猟奇的な作品、ヘロディアスの小姓はナラボートを思い、ナラボートはサロメを思い、サロメはヨハナーンを思い、ヨハナーンは神を思い、決して報われることのない一方通行の愛情が切ない。
今回俳優も含めてかなり人数の多いステージな為、3階席からは細かいところまではよく分からない面はあるものの、衣裳などで出演者の区別がしやすいように工夫されているように感じた。
歌手たちは主役から脇役にいたるまで充実していたし、演技もみな力演だった。
最初にサロメへの思いを切々と打ち明けて、最後は失望して命を絶つナラボートを歌った望月哲也はやはりうまいなぁと思う。
この人は歌曲も歌うけれど、やはりオペラのステージでこそ、その良さが最も発揮されるように思う。
ヘロディアスを歌ったハンナ・シュヴァルツは高名な歌手だが、実演を聴くのははじめて。
期待にたがわぬ見事な歌唱で朗々と響く声と余裕をもった自然な表現が実に素晴らしかった。
ヨハナーン役のジョン・ヴェーグナーは井戸の底からその低音を響かせるだけでその圧倒的な存在感を示していた。
代役でヘロデを演じたスコット・マックアリスターもなかなかの歌唱。
そして、主役のサロメを演じたエリカ・ズンネガルドは容姿も美しく、声もリリカルながら高音はよく通り、サロメの配役としては適任だろう。
低音域が3階席では若干聞き取りにくかったのはソプラノとしてはやむをえないのだろう。
ナラボートが魅了され、王が骨抜きにされる対象として、彼女はよく演じ、よく歌ったと思う。
ヨハナーンに「キスして」としつこく迫る狂気は鬼気迫るものがあり、この作品の常軌を逸した雰囲気を見事に体現していた。
そして、「7枚のベールの踊り」では幕の後ろのシルエットで始まり、その後官能的なダンスをステージいっぱいで繰り広げ、最後には下着まではずしてヘロデに投げつけ、プロ根性を見せ付けた。
ラルフ・ヴァイケルト指揮の東京フィルはシュトラウスの官能性を見事に表現していたように感じた。
ユダヤ人やナザレ人など多くの脇役が出るわりに、殆ど数人の主役級の役ばかりが歌うという贅沢な作品だが、舞台にいることに意味があるのだろう。
確かにグロテスクな内容で登場人物に共感はできないが、それだからこそフィクションと割り切って楽しめるし、演出や歌手、オケによって様々な可能性があるように思う。
さらにいろいろな演出で見てみたい作品である。
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