ダニール・トリフォノフ/ピアノ・リサイタル(2011年9月9日 紀尾井ホール)
ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル
2011年9月9日(金)19:00 紀尾井ホール(2階BL2列12番)
ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov)(Piano)
ショパン/舟歌 嬰へ長調 作品60
Chopin / Barcarole op.60
ショパン/練習曲集 作品25
Chopin / Etudes op.25
~休憩~
シューベルト;リスト編/
Schubert; Liszt /
春のおもい Frühlingsglaube
ます Die Forelle
水の上で歌う Auf dem Wasser zu singen
魔王 Erlkönig
シューマン;リスト編/献呈
Schumann; Liszt / Widmung
リスト/パガニーニによる超絶技巧練習曲集S140/R3aより 第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ(鐘)」
Liszt / La campanella
リスト/メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」
Liszt / Mephisto Waltz No.1, S514/R181 "Der Tanz in der Dorfschenke"
~アンコール~
チャイコフスキー/18の小品から 第15曲「少しショパン風に」
ショパン/ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」変ホ長調 作品18
チャイコフスキー/18の小品から 第13曲「田舎のエコー」
ショパン/マズルカ ハ長調 作品56-2
ショパン/タランテラ 変イ長調 作品43
バッハ;ラフマニノフ/パルティータ第3番から ガボット
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今年はじめにショパンコンクール入賞者のガラ・コンサートの為に来日したダニール・トリフォノフが再来日してリサイタルをもった。
今回は第14回チャイコフスキー国際コンクールのグランプリ受賞記念とのことだが、その他にも5月にルービンシュテイン国際コンクールで優勝しており、その活躍は目覚ましい。
そのうちチケットを入手するのが困難なピアニストになるだろうと、今回は早めにチケットを購入して聴いてきた。
紀尾井ホールはピアノを聴くにはうってつけである。
舞台中央に置かれたピアノは、トリフォノフが好んで弾くFAZIOLIであった。
私の席はホール左横の2階席2列目。
背もたれに寄りかかると、トリフォノフの顔だけが見える位置だが、ピアノの鍵盤の蓋にトリフォノフの手が鏡のように写るので、蓋ごしに彼の指使いを楽しむことは出来た。
1月にショパンコンクール・ガラコンサートで聴いた時にはショパンばかりだったからだろうか、実に細やかで繊細、みずみずしさをたたえた演奏が印象に残っている。
そして、今回、さらに2つのコンクールでの優勝を経て、彼の演奏の幅がぐっと広がったように感じた。
前半のショパンの小品では以前に聴いた清々しいみずみずしさが前面に出ていて、気持ちの良い演奏だったが、後半のリスト作品に入ると、デモーニッシュで憑かれたような激しさが随所にあらわれていた。
そして、それが作曲者リストの意図したものを完全に再現していただけでなく、さらに余裕をもって自身のものとしていたような印象を受けた。
「メフィスト・ワルツ」はどこまでいけるのか自身でも挑みながら弾いているのではないかという程、急き立てるようなドラマティックな表現が素晴らしかった。
シューベルトやシューマンの歌曲をリスト編曲したものはロシア出身のピアニストがよく弾くが流行のようなものなのだろうか。
これらは時にシューベルトたちの歌曲を素材にしたリスト自身の作品のように響く時もあれば、原作者の意図をそのまま尊重してあまり装飾を加えていないものもある。
しかし、いずれの場合もピアノで歌うことが要求され、それをトリフォノフも見事に表現できていたように思う。
生で聴く「魔王」の迫力はやはり凄い。
選ばれた人のみのレパートリーであろう。
「ラ・カンパネッラ」はテクニック的には非の打ちどころのない見事なものだったが、さらに数年後にはより感銘深い演奏になっているのではないかという気がする。
満席の客席は大喝采でこの若きピアニストの名演を讃え、それに対して6曲ものアンコールが演奏された。
今後、このようなちょうどよい空間のホールで演奏する機会があるのか、それとも大ホール専門のピアニストになってしまうのか、ちょっと心配なところもあるが、まだ若い才能あふれるピアニストを環境が潰してしまわないことを祈りたい。
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