小森輝彦&服部容子/Duo Recital vol.7(2011年8月6日 東京文化会館小ホール)
小森輝彦(バリトン)&服部容子(ピアノ)Duo Recital vol.7
2011年8月6日(土)14:00 東京文化会館小ホール(D列16番)
小森輝彦(TERUHIKO KOMORI)(バリトン)
服部容子(YOKO HATTORI)(ピアノ)
●H.ヴォルフ/メーリケ歌曲集より
H.Wolf / Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
1. 春だ!(Er ist's)
2. 春に(Im Frühling)
3. 庭師(Gärtner)
4. 出会い(Begegnung)
5. こうのとりの使い(Storchenbotschaft)
6. 火の騎士(Feuerreiter)
7. 新しい愛(Neue Liebe)
8. 隠棲(Verborgenheit)
9. 散歩(Fussreise)
10. 戒めに(Zur Warnung)
11. 別れ(Abschied)
●J-M.ラヴェル/道化師の朝の歌(ピアノ独奏)
J-M.Ravel / Alborada del gracioso
~休憩~
●チャイコフスキー/『スペードの女王』より
P.I.Tchaikovsky / The Queen of Spades
イェレツキー侯爵のアリア「私は貴女を愛しております」
Я вас люблю
●L.ヤナーチェク/『利口な女狐の物語』より
L.Janáček / Přihody lišky Bystroušky
森番のアリア「やっぱりだ!絵に描いた様なべっぴんだ」
Neřikal jsem to?! Malovaný jak vojaček!
●S.プロコフィエフ/バレエ『ロミオとジュリエット』からの10の小品より(ピアノ独奏)
S.Prokofiev / Romeo and Juliet 10 pieces for piano
第4番「少女ジュリエット」
第6番「モンタギュー家とキャピュレット家」
Op.75-4 & 6
●E.W.コルンゴルト/『死の都市』より
E.W.Korngold / Die tote Stadt
ピエロのアリア「あなたが命じられるので~私の憧れ」
Da Ihr befehlet - Mein Sehnen
●W.R.ワーグナー/『さまよえるオランダ人』より
W.R.Wagner / Der fliegende Holländer
オランダ人のアリア「期限は過ぎた」
Die Frist ist um
~アンコール~
武満徹(Takemitsu)(谷川俊太郎:詞)/死んだ男の残したものは
シューベルト(Schubert)/音楽に寄せて(An die Musik)
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小森輝彦&服部容子のデュオ・リサイタルを聴いた。
このコンビのリサイタル、今回で7回目とのことだが、私ははじめてだった。
ヴォルフの「こうのとりの使い」や「火の騎士」等が聴けるということで期待して出かけたら、実に素晴らしいコンサートで、心底満喫することが出来た。
今回はステージ上方にスクリーンが置かれ、訳詩とイメージ写真が映された為、オペラの時にように舞台を見ながら逐一意味を確認することが出来る。
そのような配慮がどれほど聴き手には有難いことか。
歌曲、オペラアリア(独語、露語、チェコ語の三ヶ国語!)、そしてピアノ独奏と盛り沢山のプログラミングだが、どれをとっても真摯に演奏していて、安心して作品の良さを味わうことが出来た。
ヴォルフは「メーリケ歌曲集」から11曲が歌われたが、叙情的で親しみのある作品だけでなくバラードも多く選ばれているのがうれしかった。
特に「こうのとりの使い」では、主人公とこうのとりとのやり取りが実に巧みに細やかに語るように歌われていて最高だった。
ネイティヴでもここまで見事な歌唱はなかなかないのではないか。
小森輝彦のバリトンはどの音域をとっても朗々とした充実した美声で、ドイツの宮廷歌手の称号を日本人としてはじめて受けたというのが納得できるほど美しいドイツ語の発音も魅力的だった。
まさに今が脂の乗り切った時期といえるのではないか。
服部容子のピアノは丁寧で、派手なところはないが非常に安定している。
「火の騎士」や「別れ」のような難曲をなんでもなく平然と弾いている(ように見える)のは、余程の実力者とみた。
アンコールでは2人からそれぞれ挨拶があった。
小森氏は震災時にドイツにいた為、被災していないことに罪悪感があるとおっしゃり、感情がこみあげていったん舞台袖に戻るという場面もあった。
しかし、こうして今日本にやってきて素晴らしい演奏を聴かせてくれたということだけで感謝の気持ちで一杯であり、何も後ろめたいことは感じなくていいですよと心から伝えたい。
アンコールの谷川俊太郎詞、武満徹作曲の「死んだ男の残したものは」という歌曲は初めて聴いたが、胸に沁みた。後であらためてテキストを読み、なんと簡潔で強さをもった詩なのだろうと感じた。
ちなみに来年は12月頃にシューベルトの作品で8回目のデュオ・リサイタルを開く予定とのことで、今から楽しみにしている。
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