ポール・ルイス/シューベルト・チクルス Vol.2(2011年7月1日 王子ホール)
シューベルト・チクルス 全5回 Vol.2
2011年7月1日(金)19:00 王子ホール
ポール・ルイス(Paul Lewis)(ピアノ)
フランツ・シューベルト(Franz Schubert)作曲
12のワルツ、17のレントラーと9つのエコセーズ Op.18, D145より11曲
1.ワルツ1番 ホ長調
2.ワルツ2番 ロ長調
3.レントラー2番 変ホ長調
4.レントラー3番 変イ長調
5.レントラー10番 変ニ長調
6.レントラー11番 変ニ長調
7.ワルツ9番 嬰ヘ長調
8.ワルツ10番 ロ短調
9.ワルツ8番 変ホ短調
10.ワルツ6番 ロ短調
11.ワルツ12番 ホ長調
4つの即興曲 Op.90, D899
~休憩~
ハンガリーのメロディ ロ短調 D817
ピアノ・ソナタ第18番ト長調 Op.78, D894「幻想」
~アンコール~
シューベルト/アレグレット ハ短調 D915
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イギリスのピアニスト、ポール・ルイスを初めて聴いた。
今回は4月から始まったルイスによるシューベルト・ツィクルスの第2回。
第1回は別のコンサートと重なって聴けなかった為、今回は楽しみに出かけてきた。
会場は満席。
すでに人気ピアニストとなりつつあるようだ。
ルイスはブレンデル門下とのこと。
そして、実際にルイスの演奏を聴いて、シューベルトの作品をこれほど細部にわたるまで立派に演奏するピアニストはそう多くないのではないかと思った。
それほどの完成度の高さ、安定感、そしてほどよい情感と歌心があった。
確かに現在聴ける最高のシューベルト演奏の一つだとは思った。
しかし、健康的で肉付きのよいその音は、時にシューベルトにしてはがっちりし過ぎていて、あたかもベートーヴェンを聴いているかのような気にさせられたのも事実である。
ルイスがシューベルトの世界に深く共感しながら演奏しているという印象は確かに受けたが、そこに作曲家の声、訴えかけのようなものがもっと感じられたならばさらに良かったに違いない。
とはいえ、これだけまとめてシューベルトのピアノ音楽を極めて充実した演奏で聴けたのは私にとって至福の時であった。
「幻想」ソナタなど、ともすれば聴衆を置いてけぼりにした自己陶酔の世界になりがちだが、ルイスの無駄のない若干早めのテンポによる演奏は、このファンタジーにあふれた作品をもたれることなく楽しませてくれた。
やはり非凡なピアニストであることは間違いない。
このシリーズはあと3回続けられる。
そのうちにルイスの演奏からシューベルトのより人間的な肉声が感じられる日が来るかもしれない。
今後の活動を楽しみにしたい。
アンコールで演奏された「アレグレット」は晩年の作品のようだが、非常に美しく哀感の漂う印象的な曲だったことを付け加えておきたい。
NHKが録画していたので、いずれBSで放送されるだろう(放送日は未定とのこと)。
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コメント
こんにちは。ルイスは人気も評価も高くなってきましたね。
私はシューベルトはほとんど聴かないのですが、ベートーヴェンの全集を試聴してみたら、CDを買おうかしらと思っています。
どこかシューベルト的(というのか)な歌心と、フレーズ末尾でふっと力を抜くような力み(りきみ)のなさがあって、曲によってはベートーヴェンにしてはしなやかだなあと感じるところはありますが、ピアノソナタ第1番の終楽章やテンペストの第3楽章とか、ピタっとはまる演奏も多いです。
>そこに作曲家の声、訴えかけのようなものがもっと感じられたならばさらに良かったに違いない。
ルイスのシューベルト録音についても、同じような感想を書いていらっしゃる方、あちこちで見かけました。
ベートーヴェン風なシューベルトのピアノ・ソナタ19番のルイスの録音は聴きましたが、たしかにそういうところがあるのかもしれませんが、個人的にはマイベストのエゴロフのライブ録音の次に好きな演奏です。
投稿: yoshimi | 2011年8月 9日 (火曜日) 12時27分
yoshimiさん、こんばんは。
コメントを有難うございます。
yoshimiさんはポール・ルイスのベートーヴェンの録音を聴かれたそうですね。ご感想を拝見して、「ベートーヴェンにしてはしなやかだなあ」と思われたというのは特に興味深かったです。というのも私は今回、シューベルトのコンサートを聴いて、彼は絶対ベートーヴェンのいい演奏家だろうと思ったからです。
もちろんシューベルトの歌心も充分にあったのですが、その隙のない構築感はベートーヴェンではさらに生かされるのではないかと感じながら聴いていました。
そのうちベートーヴェンの録音も聴いてみたいと思います。
投稿: フランツ | 2011年8月 9日 (火曜日) 22時13分