METライブビューイング《ワルキューレ》(2011年6月13日 新宿ピカデリー)
METライブビューイング2010-2011
ワーグナー(Richard Wagner)/〈ニーベルングの指環 第1夜〉《ワルキューレ(Die Walküre)》(新演出)
上演日:2011年5月14日
上映時間:5時間14分
2011年6月13日(月)10:00-(休憩2回) 新宿ピカデリー スクリーン1(S列31番)
指揮(Conductor):ジェイムズ・レヴァイン(James Levine)
演出(Production):ロベール・ルパージュ(Robert Lepage)
美術:カール・フィリオン
衣装デザイン:フランソワ・サンオーバン
照明:エティエンヌ・ブシェ
映像デザイン:ボリス・フィルケ
インタラクティブ・プロジェクション:ホルガー・フォータラー
ブリュンヒルデ(Brünnhilde):デボラ・ヴォイト(Deborah Voigt)(ソプラノ)
ヴォータン(Wotan):ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)(バスバリトン)
フリッカ(Fricka):ステファニー・ブライズ(Stephanie Blythe)(メゾソプラノ)
ジークリンデ(Sieglinde):エヴァ=マリア・ヴェストブルック(Eva Maria Westbroeck)(ソプラノ)
ジークムント(Siegmund):ヨナス・カウフマン(Jonas Kaufmann)(テノール)
フンディング(Hunding):ハンス=ペーター・ケーニヒ(Hans-Peter König)(バス)
The Metropolitan Opera
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METライブビューイングの2010-2011シーズン最終作で、最大の目玉でもある《ワルキューレ》を休暇のとれた今日見てきた。
最近体調がすぐれず降板も多いレヴァインだが、この日は無事指揮台に登場した。
しかし、歩くのも辛そうで、カーテンコールも指揮台からお辞儀をするのみである。
今回も演出のルパージュは多くの板を並べてコンピュータ制御で動かしながら様々な場面を表現していく。
「ヴァルキューレの騎行」の場面など、メットの客席から思わず拍手が出たほどである。
歌だけでなく、時にアクロバティックなこともしなければならない歌手たちはやはり重労働の仕事だなぁと感じさせられる。
ヴァーグナーの音楽はやはりオーケストラの書法が素晴らしい。
弦も管もメットの素晴らしいオケだからこそかもしれないが、実に雄弁に聴き手をドラマに引き込んで離さない。
事前にライトモティーフを予習しなくても、なんとなくこの人の時はこのモティーフが出てくるななどとある程度想像がつくように聴き手を引っ張っていってくれる。
特に金管セクションが活躍するヴァーグナーの音楽はその出来が成功の鍵を握っているのではないか。
さすがメットの金管は見事だった!
歌手たちは皆声もよく出ていたし、演技も細やかな表情をつけて見る者を惹きつける。
デボラ・ヴォイトは初めての役らしいが、さすがに脂ののった歌唱である。
最後の逆さ吊りも大変だったのではないか。
ヴォータンのターフェルは個性的な歌唱は好みが分かれるかもしれないが、妻フリッカへの頭があがらない様子や、娘ブリュンヒルデを愛しながらも罰しなければならない表情がなんともいえない哀愁を醸し出していて、その表情に感銘を受けた。
フリッカのブライズは堂々たる貫禄で聴かせる。
ヴェストブルック演じるジークリンデも、旬のスター、カウフマン演じるジークムントも、そのういういしさがなんともはまっている。
それにしてもカウフマンはテノールにしては随分暗く重い声をしている。
いずれバリトンの役にも進出するのではないか。
フンディング役のケーニヒは朗々たる歌唱だが、フンディングのキャラクターにしては優しそうな雰囲気で、もっとドラマティックでも良かったかもしれない。
8人のヴァルキューレたちも良く、映像ならではの細かい表情が見れたので違いが分かりやすかった。
なお、今回の案内役はプラシド・ドミンゴとジョイス・ディドナートの2人。
ディドナートが巧みに話を引き出すのはすでに知っていたが、ドミンゴの決して流暢とはいえない英語で出演者たちに語りかける言葉の優しさ、そして眼差しと気配りのなんと温かいことか。
世界の第一線で歌い続けてきたスターは、その歌声だけでなく、人柄でも人を惹きつけるものをもっているのだとすっかり感心してしまった。
今回の特典映像ではレヴァインの短いドキュメンタリーも流されて、これがまたすごかった。
レヴァインはオーケストラのパートをピアノで弾きながら、さらに歌手たちの相手役のパートも言葉をつけて歌いながら稽古をつけていく。
きっとオペラまるまる1曲分が歌詞も含めて完全に頭に入っているのだろう。
若かりしドミンゴとの練習風景など貴重な記録であり、ぜひご覧いただきたい映像である。
今シーズンのライブビューイング、結局12作中4作見逃したが、もしアンコール上映があれば是非見たいと思う。
全体的に充実した演目で充分楽しむことが出来た。
来期も「指環」の残り2作も含めて楽しみである。
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コメント
フランツさん、こんにちは。
愉しまれたようで、良かったですね。
このところ、震災の影響で、オペラが中止になったり、指揮者、出演者が変更になったりすると、ライフビューイングなどで、愉しむ方がいいのかなあと思ったりします。
まだ経験したことがないのですが、新宿ピカデリーがいいのでしょうか。
今まで、余り気を留めていなかったのですが、私も、次の機会には、行ってみたいと思っています。
投稿: Clara | 2011年6月14日 (火曜日) 13時06分
Claraさん、こんばんは。
コメントを有難うございます!
オペラは本来は劇場で生の声に接するのが一番だと思いますが、私のような初心者にとっては、ライブビューイングの至れり尽くせりの映像は有難く感じます。
まずチケット代が安い、そして歌手たちの歌う表情をアップで見ることが出来、演出の意図もクローズアップした映像で理解しやすい等々魅力的に感じられます。
実際のメットの時間の流れに沿って休憩も入るので疲れを軽減できます。また、舞台裏の様子も見ることが出来るので、私は今まで以上にオペラに関心をもつようになりました。
Claraさんも機会がありましたら是非お好きな演目をご覧になってみてください。ちなみに新宿ピカデリーは最後列の席がお勧めです(前の方の席は見上げることになるので首が疲れます)。
投稿: フランツ | 2011年6月14日 (火曜日) 22時12分