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プッチーニ/「蝶々夫人」(2011年6月18日 新国立劇場 オペラパレス)

ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini)/「蝶々夫人(Madama Butterfly)」
【全2幕/イタリア語上演/字幕付】(2時間35分:休憩30分含む)

2011年6月18日(土)14:00 新国立劇場 オペラパレス (4階L4列4番)

蝶々夫人(Madama Butterfly):オルガ・グリャコヴァ(Olga Guryakova)(S)
ピンカートン(Pinkerton):ゾラン・トドロヴィッチ(Zoran Todorovich)(T)
シャープレス(Sharpless):甲斐栄次郎(Kai Eijiro)(BR)
スズキ(Suzuki):大林智子(Obayashi Tomoko)(MS)
ゴロー(Goro):高橋 淳(Takahashi Jun)(T)
ボンゾ(Lo zio Bonzo):島村武男(Shimamura Takeo)(BR)
神官(Il commissario imperiale):佐藤勝司(Sato Shoji)(BR)
ヤマドリ(Il principe Yamadori):松本 進(Matsumoto Susumu)(BR)
ケート(Kate Pinkerton):山下牧子(Yamashita Makiko)(MS)
子役:池袋遥輝

合唱(Chorus):新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
管弦楽(Orchestra):東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)
指揮(Conductor):イヴ・アベル(Yves Abel)

演出(Production):栗山民也(Kuriyama Tamiya)
美術(Scenery Design):島 次郎(Shima Jiro)
衣裳(Costume Design):前田文子(Maeda Ayako)
照明(Lighting Design):勝柴次朗(Katsushiba Jiro)

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オペラの代名詞的な超有名作「蝶々夫人」を初めて劇場で見てきた。
ここのところいろいろとオペラを見る機会をもってきたが、最後に涙腺がゆるんだのは初めてのことだった(もちろん結末はあらかじめ知ってはいたのだが)。
外国人による外国語による作品であっても、日本を舞台にし、所作も含めて日本人の心を大切にしたステージに接すると、自分が日本人であることをつくづく実感させられた。

まず蝶々夫人を歌ったロシア出身のオルガ・グリャコヴァの素晴らしかったこと!
どちらかというと終始明るい表情と表現をしていただけに、最後にすべてを悟った後の彼女の変わりようが非常に印象づけられ、胸に突き刺さってきた。
ピンカートンは今見るとつくづく嫌な奴だが、当時としては特に珍しいことでもなかったのかもしれない。
彼があまり悪びれず、ごく当たり前のように現地妻として婚礼の儀式をしているのも、当時の特殊な風習に従ったまでなのではないか。
しかし、そういう風習を10代半ばの蝶々さんが理解していなかったからこその悲劇ということなのだろう。
ある意味、全く古さを感じない、普遍的な感情をもっているところに私たちは惹かれるのかもしれない。
「君が代」「宮さん、宮さん」のような日本の曲を引用しているのもプッチーニの作品にかける思いの強さがしのばれる。

歌手では蝶々夫人とピンカートンが最初のうち若干声が出にくかったように感じられたのに対し、シャープレスの甲斐栄次郎の一貫して朗々たる深みのある声は素晴らしかった。
ウィーンで重用されているのも納得できる凄い歌手だった。
スズキやゴロー(個性的な役柄をやらせたら今や高橋淳は第一人者ではないか)、合唱も含めて、全キャストが哀しい最後を予感させながら真実味をもって演じていたのは見事で、イヴ・アベル指揮の東京フィルの演奏も非常に美しかった。

Madama_butterfly_20110618_chirashi

栗山民也氏の簡素だが効果的な演出は日本人の心をしっかりつかんでいたように思う。
いいステージだった。

なお、終演後、芸術監督の尾高忠明氏のミニトークが1階席で行われ、震災後の苦労話など興味深い内容を聞かせてもらった。
中止となった「マノン・レスコー」もいずれ出来る限り当初どおりの内容で舞台にかけたいと望んでおられたのはうれしいことである。

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コメント

フランツさん、こんばんは。
私も同じ時間、2階の左階段席で、家族4人で見てました。
蝶々夫人、着物の着付けもきちんとして、体型も細身、外国人歌手にありがちな違和感がなく、役にぴったりでしたね。
ところどころ音程の不安定なところがありましたが、全体として演技も含め、よかったです。
最後の場面は、私もジーンとしました。このオペラ初めての息子も「泣いちゃった」と言ってました。
拍手もたっぷりして出てきたのですが、あとで尾高さんのミニトークがあったことは知りませんでした。
ぎりぎりで会場に行ったので、事前にアナウンスがあったかも知れませんね。
「マノン・レスコー」キャンセルになったのは残念に思ってましたので、再演されるとしたら嬉しいです。

投稿: Clara | 2011年6月20日 (月曜日) 22時19分

Claraさん、こんばんは。
ご家族で同じ日にいらしてたのですね。
最後のシーン、私一人だけ涙が出てきたのかと恥ずかしく思っていたら、周りでも目頭を押さえている人がいました。Claraさんも息子さんも感動されたようで安心しました。
ロシア人のタイトルロールは遠目だったのですが、背丈も他の日本人たちに溶け込んでいて、所作も自然で美しく感じられましたね。
この人、秋に「ルサルカ」を歌うそうで、私も絶対にチケットを買うことにしました!
尾高さんのミニトークは宣伝不足だったと思います。あまりアナウンスしていなかったように感じました。尾高さんは初日も聴かれたそうで、今回の方が声が断然良く出ていたので、演奏時間がその分延びたのだとおっしゃっていました。
「マノン・レスコー」については、尾高さんの任期中にもし無理だとしても、次の人への置き土産にしたいとおっしゃっていたので、いずれは上演が期待できそうですね。

投稿: フランツ | 2011年6月20日 (月曜日) 22時47分

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