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河野克典&野平一郎/バリトンリサイタル 歌の旅Vol.2(2011年5月20日 東京文化会館 小ホール)

河野克典バリトンリサイタル 歌の旅Vol.2
ウィーンの空 マーラーとヴォルフ

2011年5月20日(金)19:00 東京文化会館 小ホール(B列18番)

河野克典(Katsunori Kono)(Bariton)
野平一郎(Ichiro Nodaira)(Piano)

フーゴー・ヴォルフ(Hugo Wolf)作曲

“メーリケ歌曲集(Mörike Lieder)”より
 祈り(Gebet)
 散歩(Fussreise)
 少年とみつばち(Der Knabe und das Immlein)
 ヴァイラの歌(Gesang Weylas)
 旅先で(Auf einer Wanderung)

“ミケランジェロの詩による3つの歌曲(Michelangelo-Lieder)”
 わたしはしばし思う(Wohl denk' ich oft)
 この世に生を受けたものは全て滅びる(Alles endet, was entstehet)
 わたしの魂はかんじえようか(Fühlt meine Seele)

~休憩~

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)作曲

“さすらう若人の歌(Lieder eines fahrenden Gesellen)”
 愛しい女(ひと)の結婚式の日に
 今朝 野原をとおっていった
 灼熱のナイフを僕は持っている
 彼女のふたつの青い瞳が

“子供の不思議な角笛(Des Knaben Wuderhorn)”より
 少年鼓手(Der Tamboursg'sell)
 歩哨の夜の歌(Der Schildwache Nachtlied)
 魚に説教するパドヴァの聖アントニウス(Des Antonius von Padua Fischpredigt)
 高き知性への讃歌(Lob des hohen Verstandes)

~アンコール~
ヴォルフ(Wolf)/世を逃れて(Verborgenheit)
ヴォルフ/アナクレオンの墓(Anakreons Grab)
ヴォルフ/あばよ(Abschied)
ジーツィンスキ(Sieczynski)/ヴィーン、我が夢の街(Wien, du Stadt meiner Träume)

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実に充実したコンサートだった。
ドイツ歌曲の歌い手として日本にこれだけ素晴らしく歌えるバリトン歌手がいたのかという思いで胸が熱くなった一夜だった。
それと同時にピアニストの野平一郎氏の驚くべき繊細かつ濃密な表現力!

河野克典氏の実演は4月に伊藤恵さんとのコンビでマーラー「亡き子をしのぶ歌」を聴いたのが初めてで、今回はリサイタルでたっぷり聴けるとあって楽しみにしていた。
ドイツ語の響きはネイティヴかと思うほど自然で美しく(しかしあまりごつごつしていなくて、適度にまろやかな感じ)、また声質も軽やかさと力強さを兼ね備え、どの声域でも全くむらのないまろやかな美声が保たれていた。
歌曲のミクロな世界からこれほど豊かな音楽を引き出せる人はドイツ人でも稀なのではないか。

唯一歌詞のミスがヴォルフでしばしば聞かれたのが惜しかったが、それでも自然に聴かせてしまうのはドイツ語をしっかり身につけておられるからこそだろう。
マーラーの「角笛」歌曲集のみ楽譜を見ながらの歌唱だったが、ヴォルフも歌詞が飛んでしまうのならば楽譜を見ながらでも良かったのではないか。

ヴォルフは渋みの比較的少ない、親しみやすい作品中心の選曲だったように感じたが、どの曲も非常に魅力的な歌唱とピアノだった。
しかし、休憩後のマーラーはさらに素晴らしかった。
「さすらう若人の歌」の真摯な演奏も魅力的だったが、特に「角笛」歌曲集、最後の2曲でのコミカルでシニカルな表現が印象に残った。

野平一郎氏は以前フォーレ歌曲のシリーズで数曲聴いたが、その時の素晴らしいピアノ演奏は強く印象に残ったものだった。
そして今回、フランスものだけでなく、全くタイプの異なるドイツリートへの同化力の凄さを感じて、とんでもなく優れたピアニストだとはっきり実感した。
ソロも室内楽も歌曲もこなし、さらに作曲もするとはなんと多才な音楽家なのだろう。
真にオールラウンドな芸術家なのだろう。
ヴォルフのピアノパートをこれほどの完璧さと豊かな輪郭と表現力をもって弾いたピアニストはなかなかいないのではないか。
決してだれることのない前へ前へと進む推進力と構成力は作曲家としての側面が影響しているのかもしれない。

アンコールは4曲中ヴォルフが3曲。
「世を逃れて」も「アナクレオンの墓」もヴォルフ入門には最適な美しい作品。
聴衆への気配りも感じられた選曲で、演奏も良かった。

Kono_nodaira_20110520_chirashi

惜しむらくは空席が多かったこと。
派手なプロモーションをしない為かもしれないが、真に優れた芸術家は声高に己をアピールしないものなのかもしれない。
ドイツリートの醍醐味をたっぷり味わえた素晴らしいコンサートだった。

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