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大萩康司&浦井健治/『プラテーロとわたし』ほか(2011年4月23日 川口リリア・音楽ホール)

Platero_20110423

新世代のトップを走るギタリストと俳優のコラボレーション
リリア音楽ホールで聴く
「スペインのスケッチ」~アンダルシアへ

2011年4月23日(土)14:00 川口リリア・音楽ホール(P列19番)

大萩康司(Yasuji Ohagi)(ギター)
浦井健治(Kenji Urai)(語り、歌)
濱田滋郎(音楽評論家/スペイン文化研究家)(ゲスト)

バッハ/サラバンド(東日本大震災犠牲者への追悼)

ヴィラ=ロボス/5つのプレリュードより第2番ホ長調「カパドシオ(リオの下町の伊達男)の歌」
スペイン民謡/愛のロマンス(映画『禁じられた遊び』より)
F.タレガ/アルハンブラの想い出

モーツァルト(F.ソル編曲)/歌劇『ドン・ジョヴァンニ』よりカンツォネッタ「窓辺においで」(浦井健治:日本語訳による歌)

ゲスト:濱田滋郎によるお話

~休憩~

M.カステルヌオーヴォ=テデスコ(J.R.ヒメネス詩;濱田滋郎・訳詩)/ギターと語りのための『プラテーロとわたし(Platero y yo)』作品190より(第1巻全7篇+第2巻「ロンサール」)
 1.プラテーロ
 2.アンジェラスの鐘
 3.帰り道
 4.ロンサール
 5.春
 6.井戸
 7.雀たち
 8.憂愁

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川口リリアホールで大萩康司と浦井健治によるカステルヌオーヴォ=テデスコ作曲『プラテーロとわたし』抜粋ほかを聴いてきた。
このコンサート、本来は21日の夜に予定されており、その日は別のコンサートのチケットを買っていたので行けないなと思っていたら、計画停電の影響との理由で23日午後に延期された為、出かけてきた。

大萩のギター実演を聴くのは昨年に続き2回目。
今回も前回同様マイクを用いてトークを交えながらのコンサートだった。
この会場で数日前にリハーサルをしている時にも余震があり、1回1回の演奏を「これが最後かもしれない」という危機感をもって演奏するようになったとのこと。
犠牲になった方々や動物たちへの思いを述べた大萩により、正規のプログラムの前にバッハの「サラバンド」が演奏された。

ヴィラ=ロボスのプレイボーイを描写したかのような作品を弾いた後、ギター曲の代名詞ともいうべき2つの有名曲が演奏された。
「禁じられた遊び」も「アルハンブラの想い出」も大萩は適度にテンポを揺らして実に豊かな表情をもって演奏する。
行き過ぎない加減のよい思いいれが聴き手の心と共振する。
とても魅力的な演奏だった。

その後、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」のアリアが演奏されるのだが、ここで後半の語りを担当する若手俳優の浦井健治が登場し、日本語訳でなんと歌を披露した。
ミュージカルの経験も豊富らしく、その歌声はクラシックの発声とは異なるが、全く見事な歌唱で、ジャンルの垣根を簡単に飛び越えていた。
長身のこの俳優、私はこれまで存じ上げなかったのだが、絵に描いたようなイケメンで、「イケメンって本当に世の中に実在したんだ」という印象。

その後、スペイン文化研究家で、我々愛好家には音楽雑誌での文章で馴染みの深い濱田滋郎氏が客席から登場して、ノーベル賞作家ヒメネスと、作曲家カステルヌオーヴォ=テデスコによる『プラテーロとわたし』の解説が10分ほど続いた。

そして後半はいよいよメインプロの『プラテーロとわたし』。
ギター伴奏の語りというと、ドイツ歌曲の分野でも朗読とピアノによるメロドラマという形式があるが、そのギター版という感じだろうか。
ピアノよりも一層インティメートな温かみをたたえたギターの響きにのって、ロバのプラテーロに語りかける「わたし」の独白(語りかけているのだから会話だろうか)が朗読される。
浦井健治は若手なのに朗読もとても上手い。
聞きやすいだけでなく、起伏にとんでいて、しっかりと聴衆に語り聞かせていた。
この作品、本来は4巻からなっていて、各巻の最後にプラテーロの死を扱った詩が置かれているそうで、全曲演奏すると、プラテーロは4回死ぬことになるそう(実際は1回の死についての複数の詩を4巻に分けて配置したということらしいが)。
今回は抜粋なので、プラテーロは1回だけ死ぬ設定だ。
大萩のギターも相変わらず詩情にあふれていた。

岩波文庫で原作が出ていたらしいが、某ネット販売サイトでは中古で値段がつりあがっていた。
街中の古本屋でせっせと探した方が良さそうだ。

なかなか聴けない珍しい作品をとりあげてくれた出演者たちに感謝!

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コメント

初めまして。私は、浦井さんの朗読を目当てに足を運んだ者です。
花が散り、鳥が歌い、いとおしいプラテーロが浦井さんの肩越しに見えたような気がして、ステキな演目だったと思います。浦井さんのカンツォネッタ、ファンも初体験でビックリでした。

大萩さんとの息もぴったりな良い組み合わせなので、また「プラテーロ」を聞ける日が来ることを楽しみにしています。

投稿: grapefruits | 2011年5月 9日 (月曜日) 01時17分

grapefruitsさん、はじめまして。
浦井さんのファンの方ですね。
歌はファンの方にとってもはじめてだったのですね。それはうれしいプレゼントでしたね。
私は失礼ながら今回はじめて浦井さんを知ったのですが、歌わせればオペラ歌手顔負けの歌を聞かせ、語らせれば情景が浮かんでくるような生き生きとした朗読を聞かせ、そのうえ容姿端麗となれば、神様は一体いくつの才能を授けたのかという印象を受けました。
C.テデスコ作曲の「プラテーロ」は全部で4巻からなるそうなので、今後も彼らには2巻、3巻と順に続けてほしいものですね。

投稿: フランツ | 2011年5月 9日 (月曜日) 21時33分

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