シューマン/オペラ《ゲノフェーファ》(2011年2月5日 新国立劇場・中劇場)
東京室内歌劇場42期第129回定期公演
シューマン/オペラ《ゲノフェーファ》日本舞台初演
原語(ドイツ語)上演/字幕付/全4幕
2011年2月5日(土)14:00 新国立劇場・中劇場(1階16列65番)
ペーター・ゲスナー(演出)
前川朋子(ゲノフェーファ)
和田ひでき(ジークフリート)
内山信吾(ゴーロ)
紙谷弘子(マルガレータ)
大澤建(ドラーゴ)
小島聖史(ヒドゥルフス)
大澤恒夫(バルタザール)
岡元敦司(カスパール)
神谷真士(コンラート)
東京室内歌劇場合唱団
東京室内歌劇場管弦楽団
山下一史(指揮)
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珍しいシューマンのオペラ《ゲノフェーファ》を聴いてきた。
原作者としてヘッベルやティークといった名前が見られ、さらに台本もシューマンと共同でライニクが参加している。
なんだか歌曲で御馴染みの名前ばかりなので、いつもより親しみを感じる。
新国立劇場の中劇場ははじめて足を踏み入れたが、客先が放射状に舞台を囲む形をとり、前方のオーケストラピットもあまり深くなく、いつものオペラパレスに比べるとかなりはっきりと舞台が見えた。
16列目というからどれほど後ろかと思っていたら、前方の数列分はオーケストラピットが占めていた為、比較的前方の席だった。
全4幕からなり、2幕ずつをまとめて上演し、その間に1度だけ休憩をはさむ形をとっていた。
私は例によって第1幕の大部分と終幕の後半に睡魔に襲われ、特に終幕はかなり意識が飛んでしまった(最初のうち会場が暑く感じられた)。
せっかく珍しい作品を堪能できる機会だったのにもったいなかったが、半分起きていられただけでも私としては上々だろう(などと満足してしまってはいけないのだが)。
従って、ちゃんとした感想を書ける立場にはないので、起きていた時に聴いた分についてだけだが、シューマンが《ゲノフェーファ》に付けた音楽は私にはとても魅力的に感じた。
もともとシューマンに馴染んでいたということもあるのだろうが、初めて聴くオペラにもかかわらず親しみを感じながら聴いていた。
ロマン派のオペラ失敗者の烙印を押されがちなシューベルトやシューマンはよくドラマティックな展開に乏しいということが言われる。
おそらくその通りなのだろう。
しかし、私にはそれがそれほど欠点には感じられなかったのは、あまり様々なオペラを聴き込んでいない為かもしれない。
演出は合唱団の各人にも細かな演技を加え、そうした群衆が主役を引き立てることにもなったように感じた。
歌手の中ではゴーロ役の内山信吾が良かった。
山下一史指揮東京室内歌劇場管弦楽団も、必ずしも上手ではないらしいシューマンのオーケストラ手法をよく理解して魅力的に演奏していたと思う。
最初のうち不安定感もあったが、すぐに調子を取り戻したように感じた。
この馴染みの薄い作品にこれだけの情熱を注いだ関係各位の尽力には心から拍手を贈りたい。
なお、演奏終了後にロビーで演出のペーター・ゲスナー氏、指揮の山下一史氏、評論家の長木誠司氏がアフタートークを行った。
ゲスナー氏は日本に住んで長いらしく、すべて日本語で話していた。
以下のようなことが話された。
今回のオペラ、本来最後は大団円で終わることになっているのだが、そうしなかったという話。
現代はヒーローが出にくい時代なので、シューマン当時よりもさらに共感しやすい内容になっているという話。
シューマンはオケの手法をピアノの発想で作曲した為、思い描いていたイメージと実際に演奏した時の効果が必ずしも一致しないが、それを理解して演奏することが大事という話。
などであった。
ちなみにゲスナー氏は今回がオペラ初演出とのことで、今後もオペラ演出をやってみたいという意欲を述べておられた。
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