アーメリングの1982年シューベルト歌曲ライヴ録音(ボールドウィンのピアノ)
某サイトにアーメリングの珍しいライヴ録音がアップされていた。
1982年1月10日、オランダ、ユトレフト(Utrecht)での録音でシューベルトの歌曲4曲である。
エリー・アーメリング(Elly Ameling)(soprano)
ドルトン・ボールドウィン(Dalton Baldwin)(piano)
シューベルト(Schubert)作曲
1.秘めた愛(Heimliches Lieben)D922(クレンケ詩)
2.はなだいこん(Nachtviolen)D752(マイアホーファー詩) [4分48秒から]
3.月に寄せて(An den Mond)D259(全4節の有節歌曲の第1,2,4節が歌われている)(ゲーテ詩) [8分12秒から]
4.笑ったり泣いたり(Lachen und Weinen)D777(リュッケルト詩) [11分17秒から]
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「はなだいこん」ではアーメリングが歌の入るタイミングを間違える箇所があり、それをボールドウィンがうまくつないでいるのも、ライヴ録音ならではの楽しみである。
「秘めた愛」も「笑ったり泣いたり」もスタジオ録音はあるものの、その時のピアニストはどちらもデームスだったので、ボールドウィンとのコンビによる貴重な音源といえるだろう。
しかし、今回最も興味深いのが、ゲーテの詩による「月に寄せて」である。
実は彼女は1982年に「月に寄せて」の同じテキストによる第2作(D296)をボールドウィンとスタジオ録音しているが、この第1作(D259)は私の知る限りスタジオ録音していないので、今回のライヴ音源を知るまでは彼女のレパートリーに含まれていると思っていなかった。
第1作は原詩の2節分を歌詞の1節にまとめた4節の有節形式で作曲されており(原詩の第5節は省略されている)、ヘルマン・プライのとろけるような甘美な歌が印象的だったが、まさかアーメリングも歌っていたとは・・・。
まぁ最も多く歌ったのがシューベルトだと述懐している彼女のことだから、この曲を歌っていても不思議はないのだが・・・。
今回の4曲、いずれもアーメリングの温かい歌が堪能できるライヴ録音である。
「月に寄せて」より
Füllest wieder Busch und Tal
Still mit Nebelglanz,
Lösest endlich auch einmal
Meine Seele ganz.
再びおまえが茂みと谷を
静かに霧のきらめきで満たすとき、
ようやくおまえは
私の魂も完全に解き放ってくれる。
Breitest über mein Gefild
Lindernd deinen Blick,
Wie des Freundes Auge mild
Über mein Geschick.
わが広野の上へ
心を和らげてくれながらおまえは眼差しを広げていく、
友の目のように穏やかに、
わが運命の上へと。
・・・・・・・・・
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コメント
なるほど、『はなだいこん』で、微妙な箇所がありますね。でも言われなければ、私などわかりませんでした。それより、教えていただきたいのですが、その『はなだいこん』で、聴き慣れている旋律と異なっている箇所がふたつほどありましゅでしょ?あれは、何か別の版があるのでしょうか、どうなのでしょう。
いずれにせよ、ア―メリングの味わいある歌唱を聴かせていただいくサイト紹介に、とても感謝します。
ちょうど、「はなだいこん」について考えていたところだったので、さらに喜んでいる次第です。
投稿: Zu-Simolin | 2011年2月16日 (水曜日) 17時41分
Zu-Simolinさん、こんばんは。
コメントを有難うございます。
「はなだいこん」の普通と異なる箇所というのは"dunkle Augen"の"le"にあてられた音のことですね。こういう版があるのか今のところはっきり分かりませんが、ただ以前に誰かが同じように歌っているのを聴いたことがあるようなおぼろげな記憶があります。何か分かったらお知らせしますね。
Zu-Simolinさんのブログで「はなだいこん」について読ませていただくのを楽しみにしています!
投稿: フランツ | 2011年2月17日 (木曜日) 01時01分
ご無沙汰しております.
新しい情報ありがとうございます.
参考までに, ご存じかもしれませんが, 月に寄せてD.193は,ヤンセンとのライブ録音のCDに含まれています.
"Elly Ameling sings Schubert at Tanglewood"と言うタイトルで, レーベルはOMEGAで, CD番号はOCD1001です.
Amazon(日本, 米国)のサイトで Elly Ameling Tanglewoodで検索すると在庫があるようです.
なお, 私の知っている範囲では, このCDにしかない録音は, イフィゲナイア D.573があります.
投稿: Sandman | 2011年3月 3日 (木曜日) 23時21分
Sandmanさん、こんばんは。
コメントを有難うございます!
月に寄せてD.193はヘルティの詩による「月光」ソナタ風の曲ですね。
"Elly Ameling sings Schubert at Tanglewood"は発売された当初に狂喜して購入したのを最近のことのように覚えています。
彼女のリートのライヴ録音というのも珍しかったですし、おっしゃるように「イフィゲーニア」などはここでしか聴けませんからね。
ところで、このCDではゲーテの詩による「月に寄せて」をD259と表記していますが、実際には第2作のD296が歌われています。従って、D259はYouTubeの音源で初めて聴いたという次第です。
投稿: フランツ | 2011年3月 4日 (金曜日) 22時12分
フランツさん, さすがです.
了解しました. 私のディスコグラフィも修正しないといけないことが分かりました. また, 誤りがあればご指摘ください.
投稿: Sandman | 2011年3月 4日 (金曜日) 23時41分
いえいえ、少しでもお役に立てたのでしたら嬉しいです。
今後もディスコグラフィーの更新を楽しみにしております!
投稿: フランツ | 2011年3月 5日 (土曜日) 16時11分