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ゲルネ&シュマルツ/ゲルネ・シューベルト・エディション第5巻「夜と夢」(harmonia mundi)

Nacht und Träume: MATTHIAS GOERNE SCHUBERT EDITION 5
(夜と夢:マティアス・ゲルネ・シューベルト・エディション第5巻)

Goerne_schmalcz_schubert

harmonia mundi: HMC 902063
録音:2008年9月, Teldex Studio Berlin

Matthias Goerne(マティアス・ゲルネ)(baritone)
Alexander Schmalcz(アレクサンダー・シュマルツ)(piano)

1. Nacht und Träume(夜と夢), D827 (Matthäus von Collin) [4:08]

2. Der blinde Knabe(盲目の少年), Op. 101, No. 2, D833 (Jakob Nikolaus Craigher de Jachelutta (nach "Colley Cibber")) [3:19]

3. Hoffnung(希望), Op. 82, No. 2, D637 (Johann Christoph Friedrich von Schiller) [3:37]

4. Totengräber-Weise(墓掘人の歌), D869 (Franz Xaver Freiherr von Schlechta) [4:24]

5. Tiefes Leid(深い苦悩), D876 (Ernst Konrad Friedrich Schulze) [3:22]

6. Greisengesang(老人の歌), Op. 60, No. 1, D778b (Friedrich Rückert) [6:11]

7. Totengräbers Heimweh(墓掘人の郷愁), D842 (Jakob Nikolaus Craigher de Jachelutta) [7:00]

8. An den Mond "Geuss, lieber Mond"(月に寄せて), D193 (Ludwig Christoph Heinrich Hölty) [3:29]

9. Die Mainacht(五月の夜), D194 (Ludwig Christoph Heinrich Hölty) [1:53]

10. An Sylvia(シルヴィアに), Op. 106, No. 4, D891 (William Shakespeare (aus "Two Gentlemen of Verona"); Deutsche Übersetzung: Eduard von Bauernfeld) [3:03]

11. Ständchen "Horch, horch! die Lerch"(セレナード“聞け、聞け!ひばりを”), D889 (Strophe 1 von William Shakespeare (aus "Cymbeline"); Deutsche Übersetzung: August Wilhelm Schlegel. Strophen 2 und 3 von Friedrich Reil) [4:47]

12. Der Schäfer und der Reiter(羊飼いと馬に乗った男), Op. 13, No. 1 D517 (Friedrich Heinrich Karl, Freiherr de la Motte-Fouqué) [3:26]

13. Die Sommernacht(夏の夜), D289 (Friedrich Gottlieb Klopstock) [3:17]

14. Erntelied(収穫の歌), D434 (Ludwig Christoph Heinrich Hölty) [1:57]

15. Herbstlied(秋の歌), D502 (Johann Gaudenz Freiherr von Salis-Seewis) [1:27]

16. Der liebliche Stern(愛らしい星), D861 (Ernst Konrad Friedrich Schulze) [3:01]

17. An die Geliebte(恋人に寄せて), D303 (Josef Ludwig Stoll) [2:10]

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ドイツのバリトン、マティアス・ゲルネによるharmonia mundiレーベルへのシューベルト歌曲シリーズも第5巻を迎えた。
今回は「夜と夢」というタイトルのもとに17曲が歌われている。
毎回変わるピアニスト、今回は頻繁に来日もしているドイツのアレクサンダー・シュマルツである。

横を向いたゲルネが影になって写っているジャケット写真が暗示しているように、今回は「夜」「死」といった重めのテーマを中心にした選曲がなされている。
例えば「夜と夢」「墓掘人の歌」「墓掘人の郷愁」といった死、眠りを暗示させるようなモノトーンな響きは、シューベルト歌曲の中でも重要な意味を占めているであろう。
それに対応するのが“希望”を歌った「希望」「深い苦悩」といった作品で、前者ではシラーらしい理想主義的発想で“内なる声が語るものを希望の心が裏切ることはない”と歌う一方、シュルツェの詩による後者では“いつわりの希望は決して退こうとはしない”と希望が恐怖や苦労を追い払ってはくれないことを悲観的に語る。
しかし、その一方で「五月の夜」「夏の夜」「秋の歌」のような季節感を盛り込んだり、「シルヴィアに」「セレナード(聞け、聞け!ひばりを)」のようなシューベルトの快活な側面を代表する曲を加えたりもしており、ただ沈潜した雰囲気だけで統一しようとはしていないようだ。
だからこそ、重みをもった作品の存在感が際立ってくるともいえるだろうが。

ゲルネのベルベットのようなまろやかな響きはますます磨きがかかり、「夜と夢」などどこまでも心地よく響くレガートのなんと素晴らしいことか。
彼にしかなしえないであろう「夜と夢」の新しい名演の誕生である!
「盲目の少年」では慰撫するような穏やかな響きで、盲目の少年のけなげなたくましさを表現する。
ゲルネの歌唱は情景をイメージさせる。
例えば彼の師匠であったF=ディースカウはその巧みな語り口によって、語り部のように情景を説明したものだが、ゲルネは声自体の中に情景や心理状況を織り込んで表現する。
決して饒舌な表現に向かうことはなく、あくまで歌声で勝負する彼の歌唱は、師の影響からの完全な決別を実感させられる。

シュマルツの演奏はゲルネの包み込むような声の特質に合った温かい音色を聴かせる。
「夏の夜」の前奏のニュアンスに富んだ演奏などは彼の良さが出ている。
「墓堀人の郷愁」の"Im Leben, da ist's ach! so schwül(人生は、ああ!なんと苦しいものなのか。)"という箇所では隣り合った低音をあえてペダルを踏みっぱなしにして濁らせるといった斬新な解釈もみせる。
また「羊飼いと馬に乗った男」の後半のようにいつになく雄弁な切れ味を聴かせる箇所もあり、彼の共演ピアニストとしての持ち味の広がりもこのディスクを聴く楽しみの一つといえるだろう。

この第5巻まででゲルネは114曲を歌ってきたことになる。
全部で10巻ほどを予定している筈だから、この倍の作品をゲルネの歌唱で楽しめることになる。
今後のリリースが今から待ち遠しい。

なお、これまでの作品リストは以下のとおり(Excel)
 こちら(Excelファイル)

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第16回ショパン国際ピアノ・コンクール2010 入賞者ガラ・コンサート(2011年1月22日 オーチャードホール)

第16回ショパン国際ピアノ・コンクール2010 入賞者ガラ・コンサート
2011年1月22日(土)14:00 オーチャードホール(1階3列24番)

Chopin_competition_201101

ユリアンナ・アヴデーエワ(Yulianna Avdeeva)(piano)(第1位・ソナタ賞 ロシア)
ルーカス・ゲニューシャス(Lukas Geniušas)(piano)(第2位・ポロネーズ賞 ロシア/リトアニア)
インゴルフ・ヴンダー(Ingolf Wunder)(piano)(第2位・幻想ポロネーズ賞、協奏曲賞 オーストリア)
ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov)(piano)(第3位・マズルカ賞 ロシア)
フランソワ・デュモン(François Dumont)(piano)(第5位 フランス)

ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団(The Warsaw National Philharmonic Orchestra)
アントニ・ヴィット(Antoni Wit)(conductor)

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ダニール・トリフォノフ(第3位)
 ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11<エディション・コンポーザー、サンクトペテルブルク>
 [アンコール]ダニール・トリフォノフ/「ラフマニアーナ」よりフィナーレ

~休憩~

フランソワ・デュモン(第5位)
 即興曲第1番 変イ長調 作品29
 スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39
 [アンコール]ショパン/12の練習曲作品10-5「黒鍵」

インゴルフ・ヴンダー(第2位)
 ポロネーズ 第7番「幻想」 変イ長調 作品61
 [アンコール]モーツァルト(ヴォロドス編曲)/トルコ行進曲

ルーカス・ゲニューシャス(第2位)
 ポロネーズ第5番 嬰へ短調 作品44
 12の練習曲 作品10 第2番 イ短調
 12の練習曲 作品25 第4番 イ短調、第11番 「木枯」イ短調
 [アンコール]ショパン/ワルツ第4番ヘ長調作品34-3

~休憩~

ユリアンナ・アヴデーエワ(第1位)
 ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11<ナショナル・エディション>
 [アンコール]ショパン/ワルツ第5番変イ長調作品42

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実に楽しく充実したコンサートを聴いてきた。
昨年秋に開催された5年に一度のショパンコンクールの上位入賞者たちが1月に入り日本ツアーを行っている。
その東京公演の1日目である。

コンクール第3位のトリフォノフと、第1位のアヴデーエワが協奏曲第1番を第1部と第3部に演奏し、第2部にデュモン(5位)、ヴンダー(2位)、ゲニューシャス(2位)がショパンのソロ作品を演奏するという3部構成だった。
予定されたプログラムの他に各人が1曲ずつアンコールを演奏してくれたのも楽しかった。
2時に始まったコンサートが終了したのは5時過ぎというたっぷりとしたボリュームだった。

ちなみに第2部のピアノソロの時もステージにオーケストラ団員の席は残したままだったが、第3部で再び登場するので片付ける手間と時間を省いたのだろう。

それぞれの演奏を聴いた感想を以下に簡単に記しておく。

ダニール・トリフォノフ
FAZIOLIのピアノをただ一人弾いた(他の4人はSteinway)。
このピアノははじめて聴くが、パリパリと派手な響きがした。
トリフォノフはまだ二十歳前の若さでステージマナーもういういしい。
演奏は特に静かに歌わせるところでの繊細な美しさにうっとりとさせられた。
さらに成長の余地は残されているようにも感じたが、有望な才能を感じた。
アンコールでは自ら作曲した華やかな作品を演奏して作曲の才能も披露した。

フランソワ・デュモン
あたかも経験を積んだベテランのような味のある演奏をする人だった。
技術は安定しているが、それが前面に出ずに、音楽そのものに語らせるタイプと感じた。
このようなタイプの演奏はコンクールでは必ずしもアピールしにくいのではと思うが、高評価されたということはショパンコンクールの審査ポイントがテクニックだけではないことの証であろう。

インゴルフ・ヴンダー
非の打ちどころのない完成された音楽を一貫して聴かせてくれた。
テクニックも音楽性も申し分なく、自信に満ちた演奏ぶり。
将来大物の予感大である。

ルーカス・ゲニューシャス
ヴンダー同様、彼もまた高度な技術と細やかな表情のある演奏を聴かせた。
ロシア人のイメージ通り、彼も打鍵が強めで鋭利な印象。
拍手にこたえる時には他の出演者とは違ってポーカーフェースだったが、緊張していたのかもしれない。

ユリアンナ・アヴデーエワ
コンクール一位に納得の素晴らしさ。
男性陣が時にタッチが強すぎることがあるのに対して、彼女はフォルテでも充分響かせながら決してうるさくならない。
コントロールの非凡さを感じた。
その音色の美しさと表情の細やかさ、そして弛緩しないテンポの良さで、私個人の印象では一番好みのタイプの演奏だった。
コンチェルトのオケのみの箇所では、常にオケに耳を傾け、時にその演奏に体を揺らして浸りこむ。
管楽器とピアノがデュエットのように重なる箇所では、相手の楽器の音をよく聞きながら演奏しているのが伝わってきて、素晴らしかった。

Chopin_competition_201101_chirashi

また、コンクールでも共演したというアントニ・ヴィット指揮ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団のデリカシーに富んだ演奏も非常に素晴らしく、心から拍手を贈りたい。

この日の演奏会、NHKのカメラが入っていて、いずれハイビジョンで放送されるそうだ。

なお、コンクールで第4位だったエフゲニ・ボジャノフ(ブルガリア出身)は不参加だったが、同時期に来日して兵庫近郊でベートーヴェンのコンチェルト第3番を弾いていたようだ。

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ワーグナー/「トリスタンとイゾルデ」(2011年1月10日 新国立劇場 オペラパレス)

2010/2011シーズン
[New Production]
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)/トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)全3幕
【ドイツ語上演/字幕付】

2011年1月10日(月・祝)14:00 新国立劇場 オペラパレス(3階L10列1番)

1幕 85分 休憩 45分 2幕 85分 休憩 45分 3幕 85分
合計5時間45分

【トリスタン(Tristan)】ステファン・グールド(Stephen Gould)
【マルケ王(König Marke)】ギド・イェンティンス(Guido Jentjens)
【イゾルデ(Isolde)】イレーネ・テオリン(Iréne Theorin)
【クルヴェナール(Kurwenal)】ユッカ・ラジライネン(Jukka Rasilainen)
【メロート(Melot)】星野淳(Hoshino Jun)
【ブランゲーネ(Brangäne)】エレナ・ツィトコーワ(Elena Zhidkova)
【牧童(Ein Hirt)】望月哲也(Mochizuki Tetsuya)
【舵取り(Ein Steuermann)】成田博之(Narita Hiroyuki)
【若い船乗りの声(Stimme eines jungen Seemanns)】吉田浩之(Yoshida Hiroyuki)

【合唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)
【指揮】大野和士(Ono Kazushi)

【演出】デイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)
【美術・衣裳】ロバート・ジョーンズ(Robert Jones)
【照明】ポール・コンスタブル(Paule Constable)
【振付】アンドリュー・ジョージ(Andrew George)

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「トリスタンとイゾルデ」を生で聴いたのははじめて。
ヴァーグナーの他の作品同様、この曲もおそろしく長大であった。
「昼」は消えて「夜」の快楽よ来るのだというようなことを延々何十分も主役2人が歌い続けるのを聴くのは正直疲れたが、細かく音楽を聴いていけばきっとこれほど長大である必然性があるのだろう。
歌曲ファンの私としては「ヴェーゼンドンク歌曲集」の中の「夢」と「温室で」が第2幕と第3幕に取り入れられているのをとりわけ興味深く聴いた。
おそらく理屈ではなく、ストーリーを追うことよりも、ヴァーグナーの音楽の洪水にどっぷり浸ることに喜びを感じればいいのだろう。
まだまだそういう境地に達するには時間がかかりそうだが、とても貴重な体験をしたことは確かである。

歌手の中で私が最も気に入ったのはブランゲーネ役のエレナ・ツィトコーワ。
言葉が明瞭で歌声もオケに拮抗できるボリュームがありながらリリカルな要素すら感じさせるところが一般的なヴァーグナー歌手の対極にあるようで新鮮だった。
トリスタン役のステファン(アメリカ人なのでスティーヴンでは?)・グールドも一貫して見事に歌っていたと思ったし、マルケ王のギド・イェンティンスも重厚な響きが役柄に合っていたように感じた。
イゾルデ役のイレーネ・テオリンは以前ブリュンヒルデを歌った時に聴いて以来だが、典型的なヴァーグナー歌手といった感じで高音を大音量で響かせる迫力はさすがだと思った。
しかし、繊細に語る箇所ではもう少しヴィブラートを抑えて内面的に歌ってほしい気がした。
特に最終幕では勢いにまかせて歌っていたように感じられたが、これは声が疲労していた為かもしれない。
最後の有名な「イゾルデの愛の死」は知っている曲だけにこちらの期待も大きすぎたのだろう。
私の好みのタイプの歌い方ではないもののヴァーグナーのオペラではこれぐらいパワフルで持久力がないとつとまらないのであろう。
とにかく長丁場をこれだけの歌唱で聴ければ満足すべきなのかもしれない。

大野和士の指揮は初めて聴いたが、さすが海外で実績を積んでいるだけのことはある。
実に雄弁にテンポ感もよく、しかも官能的な響きも追求しながら、ヴァーグナーの音楽のうねりを魅力的に聴かせてくれたと思う。
東京フィルも大野の指揮によくついていったと思う。

Tristan_und_isolde_201101_chirashi

ステージは水を張った舞台が用いられ、「ヴォツェック」の時を思い出した。
しかし今回はもともと海辺の設定なので、水を張る必然性は感じられた。
月が赤くなったり白くなったりというのは演出家なりの意図があるのだろうが、あまりそういうことを考える余裕はなかった。
最後にイゾルデが客席に背を向けて水の中へと進んでいき幕切れとなった。

なお、途中で携帯の着信音が鳴ったのは残念だった。

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METライブビューイング《ドン・カルロ》(2011年1月9日 新宿ピカデリー)

METライブビューイング2010-2011
ヴェルディ(Verdi)/《ドン・カルロ(Don Carlo)》
伊語5幕版、新演出
上演日:2010年12月11日
上映時間:4時間19分

2011年1月9日(日)10:00-14:25頃(休憩2回、15分&9分含む) 新宿ピカデリー スクリーン6(A列18番)

指揮(Conductor):ヤニック・ネゼ=セガン(Yannick Nézet-Séguin)
演出(Production):ニコラス・ハイトナー(Nicholas Hytner)
美術・衣裳デザイン(Set and Costume Designer):ボブ・クロウリー(Bob Crowley)
照明(Lighting Designer):マーク・ヘンダーソン(Mark Henderson)
振付:スカーレット・マックミン

ドン・カルロ(Don Carlo):ロベルト・アラーニャ(Roberto Alagna)
王妃エリザベッタ(Elisabeth de Valois):マリーナ・ポプラフスカヤ(Marina Poplavskaya)
ポーザ侯爵ロドリーゴ(Rodrigo, Marquis of Posa):サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)
国王フィリッポ2世(King Philip II):フェルッチオ・フルラネット(Ferruccio Furlanetto)
エボリ公女(Princess Eboli):アンナ・スミルノヴァ(Anna Smirnova)
The Grand Inquisitor:Eric Halfvarson
Tebaldo:Layla Claire
Celestial Voice:Jennifer Check

The Metropolitan Opera

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METライブビューイングの今期4作目を見た。
当日売り場でチケットを購入しようとしたら最前列にわずかに空席があるのみだった。
次回からは事前にチケットを予約しておく方がよさそうだ。
そんなわけで今日の鑑賞は首をずっと上に上げて見ることとなった。
やはり最前列は疲れる。

王子ドン・カルロはエリザベッタと愛し合っていたが、急遽、彼の父親のフィリッポ2世が彼女を后に迎えることとなり、三者の関係が不穏なものとなる。
さらにドン・カルロの友人ロドリーゴや、カルロに思いを寄せるエボリ公女が加わり、複雑な人間関係が交錯する。
2人の父子との間に立ち思い悩むエリザベッタ、そして恋する人を父親に奪われたドン・カルロの苦悩も見所だろうが、やはり最も注目すべきなのは、息子からも目のかたきにされ、后となった妻からは愛情を得られないフィリッポ2世の孤独感ではないだろうか。
ヴェルディの音楽はいつもながらドラマティックな箇所も繊細な箇所も実に効果的に響き、初めて聴く者をもぐっとつかむものを持っているように感じた。

フィリッポ2世役のフルラネットは、王の内面の苦悩を重厚に表現していて素晴らしかった。
エリザベッタ役のポプラフスカヤも心の揺れ動きを非常に細やかに表現し尽くしていた。
ドン・カルロ役のアラーニャはその伸びやかな美声を存分に生かした歌唱、そして堂々たる演技、ともに魅力的だった。
ロドリーゴ役のキーンリーサイドは安定した歌唱と見栄えのする容姿に恵まれていたが、演技は私の印象では若干固さが感じられた。
ヤニック・ネゼ=セガン指揮のオケもドラマティックな響きを聴かせてくれて、引き込まれるステージだった。

今回も幕間に登場したデボラ・ヴォイトのインタビュアーとしての進行ぶりもすっかり板について見事なもの。
次回の「西部の娘」でようやく彼女の歌唱に接することが出来るのは楽しみである。

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HMVルミネ池袋店からクラシックコーナー消える

今日(15日)、HMVルミネ池袋店のクラシック売り場に行ったところ、改装中とのこと。
新装開店するのかと思ったら店のお知らせの看板があり、クラシックコーナーは2011年1月10日で終了したと書かれているではないか。
渋谷店が消えて寂しくなったところに、今度は池袋店もクラシック撤退である。
最近はネット販売を利用することの方が多くなったとはいえ、現物を見て予想外の買い物をすることもあった池袋店には頑張ってほしかった。
あまりにも突然だったが、長い間わくわくさせてくれた空間に感謝!

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アーメリングの初出音源配信サイトを発見

最近アーメリングの過去の録音の復刻や発掘が少なく寂しく思っていたところ、Opera Clubというサイトで彼女の初出の録音をダウンロード販売していることを知った。
私はまだ購入していないが、購入予定の内容を簡単にご紹介したい。

1.モーツァルト/歌劇「イドメネオ」全曲
エリック・タッピー(イドメネオ)
ヴェルナー・クレン(イダマンテ)
エリー・アーメリング(イリア)
スラヴカ・タスコヴァ(エレットラ)
メイナルト・クラーク(アルバーチェ)ほか

オランダ歌劇場合唱団
オランダ放送室内管弦楽団
ミヒャエル・ギーレン(指揮)

Scheveningen, Circustheater
May 18, 1973

2.ブリテン/「春の交響曲」Op.44
(「戦争レクイエム」のカップリング)

エリー・アーメリング(S)
エリサベト・コーイマンス(A)
デイヴィッド・ジョンストン(T)
マックス・ファン・エフモント(BS)

フィリップス・フィルハーモニー合唱団
ステデルック・ヘルモンス合唱団
ブラバント管弦楽団
ヘイン・ヨルダンス(指揮)

Breda, Turfschip, November 21, 1971

3.ディーペンブロック/「テ・デウム」(1899)
(カップリングにディーペンブロックの管弦楽伴奏歌曲)

エリー・アーメリング(S)
エリサベト・コーイマンス(A)
デイヴィッド・ジョンストン(T)
マックス・ファン・エフモント(BS)

フィリップス・フィルハーモニー合唱団
ステデルック・ヘルモンス合唱団
ヘイン・ヨルダンス(指揮)

Breda, Turfschip, November 21, 1971

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1のモーツァルト「イドメネオ」はアーメリングが唯一ステージで歌ったオペラ全曲の演目である。
2と3は同じ日の録音であり、出演者も同じである。
ブリテンの「春の交響曲」は彼女のレパートリーに含まれていることは知っていたが、スタジオ録音を残していないので、こうしてライヴ録音が聴けるのは幸運である。

このサイト、貴重なライヴ音源を続々リリースしているようで、例えばジェラール・スゼーがカラヤン指揮で歌ったバッハのミサ曲のような珍しい録音もある。
お好きな作曲家や演奏者の名前を検索してみてはいかがだろうか。

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シュヴァルツコプフ&パーソンズ/1977年アムステルダム・フェアウェル・コンサートの映像

某動画サイトは最近投稿可能な時間が長くなったようだ。
1977年のシュヴァルツコプフのアムステルダムでのさよならコンサートの模様が10曲まるまるアップされていた(29分55秒)。

 こちら

これまで、テレビ放送用のリサイタル映像は何度か見ることが出来たが、このようにコンサート会場でのライヴを映像で見ることはほとんど無かったので、彼女の実演を一度も聴けなかった私にとっては非常に貴重な動画である。
鳴り止まない拍手を手でしずめてから歌い始める場面なども見ることが出来る。

曲目は以下のとおり。

1.ヴォルフ/「メーリケの詩」より「眠りに寄せて」
2.ヴォルフ/「メーリケの詩」より「思いみよ、おお魂よ」
3.ヴォルフ/「イタリアの歌の本」より「どんなに長いこと待ち焦がれたことでしょう」
4.ヴォルフ/「メーリケの詩」より「捨てられた娘」
5.シューベルト/糸を紡ぐグレートヒェン
6.ヴォルフ/「イタリアの歌の本」より「おお、あなたのお家が透けていたらいいのに」
7.ヴォルフ/「スペインの歌の本」より「愛なんか信じちゃだめ」
8.ヴォルフ/「イタリアの歌の本」より「ペンナに住んでいる恋人がいるの」
~アンコール~
9.グリーグ/睡蓮に寄せて(独語訳による)
10.シューベルト/至福

いかにもシュヴァルツコプフらしいヴォルフ中心の選曲である。
彼女のリサイタル歌手としての円熟の境地をたっぷり楽しめる。
それにしてもピアノのパーソンズの上手いこと!
彼のピアノはテクニックと音楽性のどちらも非常に優れていた。
第3曲の後奏では下手なヴァイオリニストの迷演奏まで見事に演じてみせる。
しかし、当時の聴衆は非常に熱狂的で、ピアノの音が消えないうちから拍手を始める。
「ペンナに・・・」の後奏ではパーソンズが実に見事な名人芸を聴かせるのだが、ほとんどが拍手にかき消されてしまう。
気の毒だが、こういう時代もあったということである。

ヴォルフの歌曲に人一倍精力を注いだシュヴァルツコプフの演奏の集大成を見せてもらった気分である。
長いので、お時間のある時にぜひご覧ください。

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明けましておめでとうございます

皆様、遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

ところで、数日前、なにげなくテレビ番組表を見ていたら驚いた。
なんと今週の金曜日からバーバラ・ボニーがNHK教育テレビに登場するそうだ。

スーパーオペラレッスン <新> バーバラ・ボニーに学ぶ歌の心
教育テレビ 金曜日 午後10時25分~10時50分

プッチーニのオペラ「ボエーム」を何人かの若い歌手たちが分担して歌い、それにボニーがレッスンをつけるようだ(ピアノ伴奏による)。
ボニーは一度も「ボエーム」を舞台で歌ったことはないそうだが、そういうことはレッスンをするうえでは関係ないとのこと。
終わりの方では、シューマンの「リーダークライス」Op.39から「静けさ」、ブラームスの「死、それは冷たい夜」もレッスン曲に入っているようなので、リート好きにも興味深い内容となることだろう。

年頭から金曜日の楽しみが出来た。

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(2011年1月8日(土)追記)

昨日(2011年1月7日)、バーバラ・ボニーのレッスン第一回が放送された。
ボニーは指導者としてもチャーミングだった。
ボニーの教え方は、内容的なことよりも歌唱全般にかかわることが中心だった。
「身振りよりも目の力で」「顔は上にあげて」というような感じ。
他の大歌手の真似ではなく、自分の歌を見つけて伝えることが大事とも。
「ボエーム」を歌わない人にも有益な内容だったのではないか。

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(2011年1月16日(日)追記)

ボニーのレッスン第2回(2011年1月14日)放送は女声歌手による「私の名はミミ」などのレッスンだった。彼女のレッスンを見ていて気付いたのだが、ボニー自身は現役歌手であるにもかかわらず、一切お手本を歌わないのである。これは生徒一人一人に合った歌唱を見つける為に、ボニーの歌で先入観を与えないためではないだろうか。今回はかなり専門的な話があり、歌唱を学んでいない素人には若干難しかったが、「声を後ろに響かせて最終的に前で覆いかぶせる」ようにとか、「頭骸を広げるように」とか、「声に息を混ぜて」とか、イメージすることによって声の色合いを変えていくのはなかなか興味深かった。

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