ワーグナー/「トリスタンとイゾルデ」(2011年1月10日 新国立劇場 オペラパレス)
2010/2011シーズン
[New Production]
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)/トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)全3幕
【ドイツ語上演/字幕付】
2011年1月10日(月・祝)14:00 新国立劇場 オペラパレス(3階L10列1番)
1幕 85分 休憩 45分 2幕 85分 休憩 45分 3幕 85分
合計5時間45分
【トリスタン(Tristan)】ステファン・グールド(Stephen Gould)
【マルケ王(König Marke)】ギド・イェンティンス(Guido Jentjens)
【イゾルデ(Isolde)】イレーネ・テオリン(Iréne Theorin)
【クルヴェナール(Kurwenal)】ユッカ・ラジライネン(Jukka Rasilainen)
【メロート(Melot)】星野淳(Hoshino Jun)
【ブランゲーネ(Brangäne)】エレナ・ツィトコーワ(Elena Zhidkova)
【牧童(Ein Hirt)】望月哲也(Mochizuki Tetsuya)
【舵取り(Ein Steuermann)】成田博之(Narita Hiroyuki)
【若い船乗りの声(Stimme eines jungen Seemanns)】吉田浩之(Yoshida Hiroyuki)
【合唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)
【指揮】大野和士(Ono Kazushi)
【演出】デイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)
【美術・衣裳】ロバート・ジョーンズ(Robert Jones)
【照明】ポール・コンスタブル(Paule Constable)
【振付】アンドリュー・ジョージ(Andrew George)
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「トリスタンとイゾルデ」を生で聴いたのははじめて。
ヴァーグナーの他の作品同様、この曲もおそろしく長大であった。
「昼」は消えて「夜」の快楽よ来るのだというようなことを延々何十分も主役2人が歌い続けるのを聴くのは正直疲れたが、細かく音楽を聴いていけばきっとこれほど長大である必然性があるのだろう。
歌曲ファンの私としては「ヴェーゼンドンク歌曲集」の中の「夢」と「温室で」が第2幕と第3幕に取り入れられているのをとりわけ興味深く聴いた。
おそらく理屈ではなく、ストーリーを追うことよりも、ヴァーグナーの音楽の洪水にどっぷり浸ることに喜びを感じればいいのだろう。
まだまだそういう境地に達するには時間がかかりそうだが、とても貴重な体験をしたことは確かである。
歌手の中で私が最も気に入ったのはブランゲーネ役のエレナ・ツィトコーワ。
言葉が明瞭で歌声もオケに拮抗できるボリュームがありながらリリカルな要素すら感じさせるところが一般的なヴァーグナー歌手の対極にあるようで新鮮だった。
トリスタン役のステファン(アメリカ人なのでスティーヴンでは?)・グールドも一貫して見事に歌っていたと思ったし、マルケ王のギド・イェンティンスも重厚な響きが役柄に合っていたように感じた。
イゾルデ役のイレーネ・テオリンは以前ブリュンヒルデを歌った時に聴いて以来だが、典型的なヴァーグナー歌手といった感じで高音を大音量で響かせる迫力はさすがだと思った。
しかし、繊細に語る箇所ではもう少しヴィブラートを抑えて内面的に歌ってほしい気がした。
特に最終幕では勢いにまかせて歌っていたように感じられたが、これは声が疲労していた為かもしれない。
最後の有名な「イゾルデの愛の死」は知っている曲だけにこちらの期待も大きすぎたのだろう。
私の好みのタイプの歌い方ではないもののヴァーグナーのオペラではこれぐらいパワフルで持久力がないとつとまらないのであろう。
とにかく長丁場をこれだけの歌唱で聴ければ満足すべきなのかもしれない。
大野和士の指揮は初めて聴いたが、さすが海外で実績を積んでいるだけのことはある。
実に雄弁にテンポ感もよく、しかも官能的な響きも追求しながら、ヴァーグナーの音楽のうねりを魅力的に聴かせてくれたと思う。
東京フィルも大野の指揮によくついていったと思う。
ステージは水を張った舞台が用いられ、「ヴォツェック」の時を思い出した。
しかし今回はもともと海辺の設定なので、水を張る必然性は感じられた。
月が赤くなったり白くなったりというのは演出家なりの意図があるのだろうが、あまりそういうことを考える余裕はなかった。
最後にイゾルデが客席に背を向けて水の中へと進んでいき幕切れとなった。
なお、途中で携帯の着信音が鳴ったのは残念だった。
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コメント
フランツさん、こんにちは。
「トリスタン」ご覧になったのですね。
私は1月7日に行きましたが、とてもよかったです。
「リング」の時と同じく、長丁場で、時々夢うつつになったりしましたが、あの空間と時間に、ずっと身を浸していると言うことも、あまりないので、一種の快感でもありました。
私は、大雑把にしか見ていないので、フランツさんはさすが、よく見ていらっしゃるなあと感心しました。
ワグナー歌いと言われる歌手たちは、声量も体格も違いますね。
初めは、イタリアオペラと比べて、楽しみが少ないような気がしてましたが、最近、だんだんワグナーが好きになってきた私です。
また機会を見つけて観たいと思っています。
投稿: Clara | 2011年1月23日 (日曜日) 17時15分
Claraさん、こんばんは。
Claraさんは別の日にご覧になったのですね。
私は公演直前になってやはり見たくなり、チケットをなんとか入手することが出来ました。
Claraさんは私よりもオペラ鑑賞の経験が豊富でいらっしゃるので、きっとより楽しまれたのだと思います。私はまだオペラの長さを克服するのが結構大変で、集中力が途中で途切れてしまうことが多いです。
しかし、DVDやCDでは途中で中断してしまいがちなところ、実際に劇場に来てしまえば、否応なしに最後まで聴くことになるわけですから、こういう機会は大切だなぁと感じています。
私も先日ライブビューイングで「ラインの黄金」を見た時はヴァーグナーの迫力に魅了されたので、何度か聴くうちに好きになりそうな気もします。
また、機会があれば私もぜひ劇場で聴きたいと思います。
投稿: フランツ | 2011年1月23日 (日曜日) 18時48分