第16回ショパン国際ピアノ・コンクール2010 入賞者ガラ・コンサート(2011年1月22日 オーチャードホール)
第16回ショパン国際ピアノ・コンクール2010 入賞者ガラ・コンサート
2011年1月22日(土)14:00 オーチャードホール(1階3列24番)
ユリアンナ・アヴデーエワ(Yulianna Avdeeva)(piano)(第1位・ソナタ賞 ロシア)
ルーカス・ゲニューシャス(Lukas Geniušas)(piano)(第2位・ポロネーズ賞 ロシア/リトアニア)
インゴルフ・ヴンダー(Ingolf Wunder)(piano)(第2位・幻想ポロネーズ賞、協奏曲賞 オーストリア)
ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov)(piano)(第3位・マズルカ賞 ロシア)
フランソワ・デュモン(François Dumont)(piano)(第5位 フランス)
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団(The Warsaw National Philharmonic Orchestra)
アントニ・ヴィット(Antoni Wit)(conductor)
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ダニール・トリフォノフ(第3位)
ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11<エディション・コンポーザー、サンクトペテルブルク>
[アンコール]ダニール・トリフォノフ/「ラフマニアーナ」よりフィナーレ
~休憩~
フランソワ・デュモン(第5位)
即興曲第1番 変イ長調 作品29
スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39
[アンコール]ショパン/12の練習曲作品10-5「黒鍵」
インゴルフ・ヴンダー(第2位)
ポロネーズ 第7番「幻想」 変イ長調 作品61
[アンコール]モーツァルト(ヴォロドス編曲)/トルコ行進曲
ルーカス・ゲニューシャス(第2位)
ポロネーズ第5番 嬰へ短調 作品44
12の練習曲 作品10 第2番 イ短調
12の練習曲 作品25 第4番 イ短調、第11番 「木枯」イ短調
[アンコール]ショパン/ワルツ第4番ヘ長調作品34-3
~休憩~
ユリアンナ・アヴデーエワ(第1位)
ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11<ナショナル・エディション>
[アンコール]ショパン/ワルツ第5番変イ長調作品42
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実に楽しく充実したコンサートを聴いてきた。
昨年秋に開催された5年に一度のショパンコンクールの上位入賞者たちが1月に入り日本ツアーを行っている。
その東京公演の1日目である。
コンクール第3位のトリフォノフと、第1位のアヴデーエワが協奏曲第1番を第1部と第3部に演奏し、第2部にデュモン(5位)、ヴンダー(2位)、ゲニューシャス(2位)がショパンのソロ作品を演奏するという3部構成だった。
予定されたプログラムの他に各人が1曲ずつアンコールを演奏してくれたのも楽しかった。
2時に始まったコンサートが終了したのは5時過ぎというたっぷりとしたボリュームだった。
ちなみに第2部のピアノソロの時もステージにオーケストラ団員の席は残したままだったが、第3部で再び登場するので片付ける手間と時間を省いたのだろう。
それぞれの演奏を聴いた感想を以下に簡単に記しておく。
ダニール・トリフォノフ
FAZIOLIのピアノをただ一人弾いた(他の4人はSteinway)。
このピアノははじめて聴くが、パリパリと派手な響きがした。
トリフォノフはまだ二十歳前の若さでステージマナーもういういしい。
演奏は特に静かに歌わせるところでの繊細な美しさにうっとりとさせられた。
さらに成長の余地は残されているようにも感じたが、有望な才能を感じた。
アンコールでは自ら作曲した華やかな作品を演奏して作曲の才能も披露した。
フランソワ・デュモン
あたかも経験を積んだベテランのような味のある演奏をする人だった。
技術は安定しているが、それが前面に出ずに、音楽そのものに語らせるタイプと感じた。
このようなタイプの演奏はコンクールでは必ずしもアピールしにくいのではと思うが、高評価されたということはショパンコンクールの審査ポイントがテクニックだけではないことの証であろう。
インゴルフ・ヴンダー
非の打ちどころのない完成された音楽を一貫して聴かせてくれた。
テクニックも音楽性も申し分なく、自信に満ちた演奏ぶり。
将来大物の予感大である。
ルーカス・ゲニューシャス
ヴンダー同様、彼もまた高度な技術と細やかな表情のある演奏を聴かせた。
ロシア人のイメージ通り、彼も打鍵が強めで鋭利な印象。
拍手にこたえる時には他の出演者とは違ってポーカーフェースだったが、緊張していたのかもしれない。
ユリアンナ・アヴデーエワ
コンクール一位に納得の素晴らしさ。
男性陣が時にタッチが強すぎることがあるのに対して、彼女はフォルテでも充分響かせながら決してうるさくならない。
コントロールの非凡さを感じた。
その音色の美しさと表情の細やかさ、そして弛緩しないテンポの良さで、私個人の印象では一番好みのタイプの演奏だった。
コンチェルトのオケのみの箇所では、常にオケに耳を傾け、時にその演奏に体を揺らして浸りこむ。
管楽器とピアノがデュエットのように重なる箇所では、相手の楽器の音をよく聞きながら演奏しているのが伝わってきて、素晴らしかった。
また、コンクールでも共演したというアントニ・ヴィット指揮ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団のデリカシーに富んだ演奏も非常に素晴らしく、心から拍手を贈りたい。
この日の演奏会、NHKのカメラが入っていて、いずれハイビジョンで放送されるそうだ。
なお、コンクールで第4位だったエフゲニ・ボジャノフ(ブルガリア出身)は不参加だったが、同時期に来日して兵庫近郊でベートーヴェンのコンチェルト第3番を弾いていたようだ。
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