シーララ/ピアノ・リサイタル(2010年9月29日 浜離宮朝日ホール)
アンティ・シーララ ピアノ・リサイタル
2010年9月29日(水)19:00 浜離宮朝日ホール(1階3列7番)
アンティ・シーララ(Antti Siirala)(ピアノ)
ブラームス/6つの小品 op.118
Brahms / 6 Stücke op.118
間奏曲 イ短調
間奏曲 イ長調
バラード ト短調
間奏曲 ヘ短調
ロマンス ヘ長調
間奏曲 変ホ短調
シェーンベルク/3つのピアノ曲 op.11
Schönberg / 3 Klavierstücke op.11
Mässige
Mässige
Bewegte
~休憩~
シェーンベルク/6つの小さなピアノ曲 op.19
Schönberg / 6 kleine Klavierstücke op.19
Leicht, zart
Langsam
Sehr langsam
Rasch, aber leicht
Etwas rasch
Sehr langsam
ブラームス/ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 op.5
Brahms / Sonate für Klavier Nr.3 f moll op.5
Allegro maestoso
Andante espressivo
Scherzo. Allegro energico
Intermezzo (Rückblick). Andante molto
Finale. Allegro moderato ma rubato
~アンコール~
ショパン/バラード第3番
Chopin / Ballade No.3
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昨年聴いてすっかりファンになったフィンランドのピアニスト、アンティ・シーララのリサイタルを聴いてきた。
今回はブラームスとシェーンベルクの組み合わせ。
ブラームス晩年の「6つの小品 op.118」は、作品の性格からして、いかにも諦観の境地で深々と弾くものがこれまで多かったように感じるし、それが曲に合っていると思っていた。
この日のシーララの演奏はいい意味でそのような先入観を完全に裏切ってくれた。
晩年の孤高の境地などではなく、若者の喜怒哀楽そのものといった演奏。
こういう演奏も許容する作品なのかと目からうろこが落ちた。
もちろんシーララのことだから、ことさらに奇抜な解釈を聞かせるわけではない。
しかし、以前に増してダイナミクスが強調されたような印象を受けた。
繊細なだけではなく、骨太な面もあるのだと言わんばかりに・・・。
シェーンベルクは「3つのピアノ曲 op.11」が前半のとりに、そして「6つの小さなピアノ曲 op.19」は後半の冒頭に演奏された。
シェーンベルクのピアノ曲を全く知らなかった私は多少予習してコンサートに臨んだのだが、最初はなんだかちんぷんかんぷんに聴こえたシェーンベルクが何度も聴くうちにその響きにも慣れてきて、だんだん作品としての面白さを感じかけてきた。
耳に馴染みやすい曲ではない分、こちらから働きかけるごとに近寄っていけるタイプの作品なのだろう。
シーララは楽譜を開いて演奏していたが、もちろんほとんど暗譜に近かったように感じた。
テクニックの冴えがより前面に出て、シーララの現代曲との相性の良さを感じさせた。
特に「6つの小さなピアノ曲 op.19」は6曲合わせても5分前後という短い曲の集まりなのだが、凝縮された最低限の音の連なりは、空間、余白を重んじる日本人には案外合うのかもしれないと思ったりもした。
最後のブラームス「ピアノ・ソナタ第3番」はシーララの現在の充実を最も良くあらわしていたと思う。
とにかく力の入れ方が格別で、従来のイメージ以上に骨太で立体的な力強い演奏で、ソナタの様々な側面をくまなく浮き上がらせていた名演だった。
録音もしているだけあって弾きこんでいるという強みもあるのだろう。
この夜の演奏でケタ違いの素晴らしさだった。
豪快で力強い側面が見えた両端楽章、それに感性の細やかさが素晴らしかった緩徐楽章ともにシーララの様々な良さが聴かれた演奏だった。
今回驚いたのが、聴衆の少なさ。
前方の左右ブロックはがらがらだった。
ほかのスターピアニストと日にちが重なっているわけでもないのに、この空席の多さは寂しい。
国内CDが出ていないのが影響しているのか。
最近のコンサートはあっという間に完売してしまうコンサートと空席の多いコンサートの二極化が激しくなっているように感じる。
シーララへのインタビュー記事がネットにあったので参考までに。
こちら
なお、このコンサートの同じ時間帯には白井光子&ヘルのシューベルトリサイタルがHakuju Hallで催されていたはず(完売とのことで相変わらずの人気である)。
そちらがどうだったのかも気になるところだ。
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