ベロフ/ピアノ・リサイタル(2010年10月12日 紀尾井ホール)
ミシェル・ベロフ ピアノ・リサイタル
2010年10月12日(火)19:00 紀尾井ホール(1階5列4番)
ミシェル・ベロフ(Michel Béroff)(ピアノ)
シューベルト/ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調
Schubert / Piano Sonata in B-flat Major, D960
Molto moderato
Andante sostenuto
Scherzo: Allegro vivace con delicatezza - Trio
Allegro ma non troppo - Presto
~休憩~
ヤナーチェク/ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日、街頭にて」
Janáček / Piano Sonata 1. Ⅹ. 1905 "From the Street"
予感(Con moto)
死(Adagio)
ドビュッシー/ベルガマスク組曲
Debussy / Suite bergamasque
プレリュード
メヌエット
月の光
パスピエ
バルトーク/ハンガリー農民の歌による即興曲
Bartók / Improvisations on Hungarian Peasant Songs, op.20
Molto moderato
Molto capriccioso
Lento, rubato
Allegretto scherzando
Allegro molto
Allegro moderato, molto capriccioso
Sostenuto, rubato
Allegro
~アンコール~
シューベルト/ハンガリーのメロディ
ドビュッシー/アラベスク第1番
ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
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この日は仕事が早めに片付き、紀尾井ホールに間に合いそうだったので、当日券でフランスのベテランピアニスト、ミッシェル・ベロフのリサイタルを聴いてきた。
ベロフを生で聴くのは私にとってはじめて。
客席はそこそこ入っていたが、前方も結構空席があり、ベロフほどの人でもと驚いた。
実際のベロフは思っていたよりも小柄で、下を見てとぼとぼと出入りする姿はどことなく怒られてしょんぼりした子供のよう。
ベロフの音は軽めでさらりと演奏する。
ドイツ系のピアニストに慣れている耳には、随分軽やかに思えるが、弱々しく繊細というわけでもなく、芯のある音である。
いわゆるヴィルトゥオーゾではないようだが、もちろん技巧に不足しているわけではない。
ただ、この日は風邪をひいていたのか、演奏しながら咳をする場面もあり、必ずしも万全の体調というわけではなさそうに見受けられた。
シューベルトでは中心のメロディーを浮かび上がらせたりはあまりせず、さらっと流していく。
しかし、薄味ということではなく、年輪からくるものなのか特有の味わいがあり、聴いていて心地よいシューベルトだった(このソナタからしばしば感じられる死の予感はベロフの演奏ではあまり強調されていなかった)。
第1楽章のリピートも省かずに演奏していた。
ヤナーチェクでは彼にしてはかなり激しい感情表現を聴かせ、バルトークでは民族色豊かな音を過不足なく響かせた。
だが、ネイティヴであるという強みは別としてもやはりドビュッシーで聞かせた柔らかい音色の美しさが印象に残る。
フランス人ピアニストからイメージされる色彩感豊かというのともちょっと違うタイプだが、堅実、かつ軽やかという感じだろうか。
アンコールの「ハンガリーのメロディ」はバルトークの出身地のハンガリーの旋律を基にシューベルトが作曲した作品で、正規プログラムとの関連が感じられる粋な選曲だった。
アンコールのドビュッシーの有名な2曲は彼の十八番なのだろう。
美しいミニアチュールの世界だった。
以前NHKでフランスのピアノ曲の講座シリーズを放送していたベロフだが、一見ベロフとは結びつかないようなシューベルトなどもレパートリーに含んでおり、フランス人だからフランス音楽という先入観を聴き手も取り払わなければならないということを感じたコンサートだった。
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