リリア音楽ホール・ガラ第1回《ピアニストの饗宴》(2010年9月25日 川口リリア 音楽ホール)
リリア開館20周年記念
リリア音楽ホール・ガラ
第1回《ピアニストの饗宴》
2010年9月25日(土)15:00 川口リリア 音楽ホール(F列4番)
田部京子(Kyoko TABE)(ピアノ)
小川典子(Noriko OGAWA)(ピアノ)
横山幸雄(Yukio YOKOYAMA)(ピアノ)
仲道郁代(Ikuyo NAKAMICHI)(ピアノ)
ラフマニノフ/6つの小品Op.11より(連弾:Ⅰ-横山・Ⅱ-仲道)
1.バルカロール
2.スケルツォ
4.ワルツ
6.スラヴァ!
シューベルト/幻想曲ヘ短調D940(連弾:Ⅰ-田部・Ⅱ-小川)
~休憩~
サン=サーンス/組曲<動物の謝肉祭>より(2台4手:Ⅰ-田部・Ⅱ-小川)
1.序奏とライオンの行進
7.水族館
10.鳥かご
11.ピアニスト
12.化石
13.白鳥
14.終曲
ラヴェル/ラ・ヴァルス(2台4手:Ⅰ-仲道・Ⅱ-横山)
スメタナ/モルダウ(交響詩<わが祖国>より)(2台8手:第1ピアノⅠ-横山・Ⅱ-仲道 第2ピアノⅠ-田部・Ⅱ-小川)
ビゼー/カルメンの主題による幻想曲(2台8手:第1ピアノⅠ-小川・Ⅱ-田部 第2ピアノⅠ-仲道・Ⅱ-横山)
~アンコール~
ギロック/シャンパン・トッカータ(2台8手:第1ピアノⅠ-田部・Ⅱ-小川 第2ピアノⅠ-横山・Ⅱ-仲道)
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これはもう本当に心からくつろいで楽しめる時間だった。
川口リリア開館20周年を記念した3回シリーズの第1回である。
今回は第一線で活躍しているピアニスト4人の共演ということで、なかなかない貴重な機会である。
私は実演では横山幸雄しか聴いたことがなく、ほかの3人をはじめて聴けるのも楽しみだった。
前半はラフマニノフの4曲を横山・仲道の連弾、そしてシューベルトの憂いをおびた美しい幻想曲を田部・小川の連弾で演奏した。
ラフマニノフでは特有の民族色豊かなメロディーが素朴に盛り上がるのを楽しみ、シューベルトでは2人のピアニストがまさに一心同体となって儚げな美しいモノローグを紡ぐのに身を任せていた。
ラフマニノフの第2曲「スケルツォ」では、音楽の進行が突然セコンド奏者の単音で遮られ、あたかもシューベルトの変ロ長調ソナタの最終楽章のようだった(ダルベルトはかつてそれを前進しようとして立ちはだかる壁のようだと言っていた)。
そして休憩後は2台ピアノの4手でスタートした。
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」からの抜粋では誰の編曲によるのかプログラムに明記されていないが、ピアノ2台だけでこれほど楽しめるとは編曲者の功績も大きいのではないか。
田部、小川両人とも全く安定していて、楽しみながら演奏していたのが伝わってきた。
続くラヴェルの「ラ・ヴァルス」はオーケストラで頻繁に演奏される有名曲で、おどろおどろしいワルツである。
プリモを仲道が担当していたが、見たところセコンドの方が技巧的なような印象を受けた(実際は違うのかもしれないが)。
横山のドラマティックな響きは素晴らしかったが、小柄な仲道も負けじと奮闘していたのが良かった。
この後2台のピアノを4人で(つまり8手で)演奏することになるのだが、その前にピアニスト4人がマイクをもってステージに登場し、それぞれリリアでの演奏の思い出などを語っていた。
演奏家の生の声はなかなか聞けないので興味深く聞いたが、4人ともリリアでの演奏経験は過去にあるようで、特に横山氏はデビューアルバムの録音の場所でもあったとのこと。
同業のピアニストがこうして同じ舞台に立つことはめったに無いというのが共通の意見だった。
横山氏以外の3人は8手での演奏経験は今回がはじめてとのこと。
最後に仲道氏が8手で弾くことに掛けて「丁々8手!」などと可愛らしい顔してオヤジギャグを放ったのが面白かった。
話しぶりもおとなしそうな外見とは裏腹に結構お茶目な方だ。
その後、スメタナの「モルダウ」の8手演奏がスタートしたが、大音響を特徴とする曲ではない為、有名な美しいモルダウの調べを4人がぴったり息を合わせて弾く素晴らしさを味わった。
そして最後の「ビゼーのカルメンの主題による幻想曲」では、お馴染みのアリアの数々が次々に登場して大変盛り上がった。
ここでは8手ならではの豊かな響きをたっぷり味わうことが出来た。
気品に満ちた田部、堂々たる響きの小川、巧者横山、軽快な仲道と、それぞれの個性がうまく化学反応を起こしていたように感じた。
4人とも仲が良さそうで楽しそうにくつろいで演奏しているのが一貫して伝わってきて、もっと聞いていたいと思わせられた素敵なコンサートであった。
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