ヴォルフ/戒めに(Zur Warnung)
Zur Warnung
戒めに
Einmal nach einer lustigen Nacht
War ich am Morgen seltsam aufgewacht:
Durst, Wasserscheu, ungleich Geblüt;
Dabei gerührt und weichlich im Gemüt,
Beinah poetisch, ja, ich bat die Muse um ein Lied.
Sie, mit verstelltem Pathos, spottet mein,
Gab mir den schnöden Bafel ein:
»Es schlagt eine Nachtigall
Am Wasserfall;
Und ein Vogel ebenfalls,
Der schreibt sich Wendehals,
Johann Jakob Wendehals;
Der tut tanzen
Bei den Pflanzen
Obbemeld'ten Wasserfalls -«
So ging es fort; mir wurde immer bänger.
Jetzt sprang ich auf: zum Wein! Der war denn auch mein Retter.
- Merkt's euch, ihr tränenreichen Sänger,
Im Katzenjammer ruft man keine Götter!
かつて、ある愉快な夜の後、
翌朝になり妙な気分で目が覚めた。
のどはカラカラ、だが水は受け付けず、血のめぐりは悪い。
その時、気分は感じやすく、弱々しくなって、
ほとんど詩的といえるほどだった、そう、僕はムーサ神に一遍の歌をねだった。
ムーサは、偽りの情念で、僕をからかい、
つまらぬへぼ詩を僕に吹き込んだ。
「一羽のナイチンゲールが
滝で鳴いている。
そして同じくほかの鳥も、
そいつはアリスイと綴る、
ヨーハン・ヤーコプ・アリスイだ。
そいつは踊る、
先に述べた滝にある
草木のあたりで。」
こんな感じでさらに続いていったが、僕はますます不安になってきた。
その時ぼくは跳び上がった、ワインだ!ワインこそが僕の救世主だったのだ。
覚えておきたまえ、涙もろい歌びとたちよ、
二日酔いの時に神様など呼ぶもんじゃないよ!
詩:Eduard Mörike (1804-1875)
曲:Hugo Wolf (1860-1903)
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ヴォルフ作曲の歌曲集「メーリケの詩」の第49曲。
1888年2月25日, Petersdorf作曲。
メーリケの詩は二日酔いで目覚めた朝の様子をコミカルに歌う。
酒が抜けない時は、結局迎え酒に限るといった内容。
酔っ払って作った堂々巡りの詩も一応脚韻が踏まれているのが面白い。
ヴォルフの諧謔的な才能が存分に発揮された作品。
歌の音域は1オクターブ半ほどで、朗誦のように進行する。
歌の冒頭には"mit hohler, heiserer Stimme(うつろな、嗄れた声で)"という指示がある。
5行目の"Lied(歌)"という言葉に対して、ヴォルフは"zitternd(震えて)"と指示して皮肉っているのが印象的。
ユニゾンの前奏ではじまるピアノパートは、酔っ払って覚束ない様を徹底して描写する。
かつてF=ディースカウとヘルが日本公演でこの曲を演奏したことがあったが、ディースカウがヴォルフの指示通りしゃがれ声で歌いはじめると、私の近くのお客さん同士が何事かと顔を見合わせていたのが忘れられない。
Sehr langsam (schleichend und trübe)(非常にゆっくりと(引きずって、気分が沈んで))
C(4分の4拍子) - 4分の2拍子
イ短調
全59小節
歌声部の最高音:2点ホ音
歌声部の最低音:ロ音
Dietrich Fischer-Dieskau (baritone) & Hartmut Höll (piano)
2曲目が「戒めに」(2分47秒~)
F=ディースカウはこの手の曲においても最高の役者である。
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