カウネ&ケーリング/シューマン歌曲集(Berlin Classics: 0115202BC)
Robert Schumann Lieder(ローベルト・シューマン歌曲集)
BERLIN Classics: 0115202BC
録音:2005年8月26-30日, Deutschlandfunk Sendesaal
Michaela Kaune(ミヒャエラ・カウネ)(S)
Burkhard Kehring(ブルクハルト・ケーリング)(P)
シューマン(Robert Schumann: 1810-1856)作曲
Frühlingslust, Op.125-5(春の楽しみ)
"Lieder der Mignon, Op.98a"(ミニョン歌曲群)
Kennst du das Land? Op.98a-1(あの国を御存知ですか)
Nur wer die Sehnsucht kennt, Op.98a-3(ただ憧れを知る人だけが)
Heiß mich nicht reden, Op.98a-5(語らなくてよいとおっしゃって下さい)
So laßt mich scheinen, Op.98a-9(このままの姿でいさせて下さい)
"Sieben Lieder von Elisabeth Kulmann, Op.104"(「エリーザベト・クールマンの詩による7つの歌」)
Mond, meiner Seele Liebling(月、わが魂のお気に入りよ)
Viel Glück zur Reise, Schwalben!(よい旅を、つばめたち!)
Du nennst mich armes Mädchen(私を貧しい娘だと言うのね)
Der Zeisig(まひわ)
Reich mir die Hand, O Wolke(私に手をのばして、おお雲よ)
Die letzten Blumen starben(最後の花々が枯れてしまった)
Gekämpft hat meine Barke(わが小舟は奮闘した)
"Gedichte von Der Königin Maria Stuart, Op.135"(「メアリー・ステュアート女王の詩」)
Abschied von Frankreich(フランスからの別れ)
Nach der Geburt ihres Sohnes(御子の生誕後)
An die Königin Elisabeth(エリザベス女王に)
Abschied von der Welt(この世からの別れ)
Gebet(祈り)
Blume der Ergebung, Op.83-2(忍従の花)
"Frauenliebe und -leben, Op.42"(「女の愛と生涯」)
Seit ich ihn gesehen(あなたとお会いしてからというもの)
Er, der Herrlichste von allen(彼は、あらゆる中で一番素敵な方)
Ich kann's nicht fassen, nicht glauben(私には分からない、信じられない)
Du Ring an meinem Finger(私の指にはめた指環よ)
Helft mir, ihr Schwestern(手伝って、姉妹たち)
Süßer Freund, du blickest(素敵な友よ、あなたはご覧になります)
An meinem Herzen, an meiner Brust(わが心に、わが胸に)
Nun hast du mir den ersten Schmerz getan(今あなたは私にはじめて苦痛をお与えになりました)
Schneeglöckchen, Op.79-26(ゆきのはな)
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馴染みの薄い若い歌手の新譜CDが出た時、余程ほかに惹き付けられる要素(例えば選曲やピアニスト)がない限りなかなか手が出なくなってしまった。
そんなわけで最近の歌手にはすっかり疎くなってしまったが、たまたま中古屋を物色していて安価で売られていると、そういう類にも手が伸びる。
そのようにして手にしたこのCDは私にとって「大当たり」であった。
ハンブルク出身のソプラノ、ミヒャエラ・カウネという歌手がピアニストのブルクハルト・ケーリングと組んで録音したシューマン歌曲集。
女声にふさわしい選曲というだけにとどまらず、珍しい作品(冒頭の「春の楽しみ」や、夭折した女性クールマンの詩による7曲)も織り交ぜた意欲的な内容になっている。
カウネの声はリートを歌うのにふさわしい語り口の細やかさと色合いの豊かさが感じられる。
それがシューマンの内面性を理想的に描き出すことに成功しているように思った。
そしてリリカルな声は繊細で美しい。
ミニョン歌曲群やメアリー・ステュアート歌曲集での悲痛な感情表現、エリーザベト・クールマン歌曲集でのバラエティに富んだ曲調へのぴったり寄り添った対応力、そして「女の愛と生涯」での噛んでふくめるような語り口の見事さなど、カウネのリート歌手としての適性が充分に感じられる録音となっていた。
なお、彼女は今年新国立劇場の「アラベッラ」でタイトルロールを歌うようだ。
実はチケットを買ったのだが、先に買っておいたほかの公演とダブルブッキングしてしまったので残念だがあきらめることにした。
ブルクハルト・ケーリングはおそらくまだ中堅の入り口に立ったところといったピアニスト。
ラルフ・ゴトーニ、ゲアノート・カール、ハルトムート・ヘル、マーティン・カッツといった錚々たる歌曲ピアニストたちのもとで学んでいる。
F=ディースカウがDGに録音した朗読とピアノのためのメロドラマ集(シューマンやリスト、R.シュトラウス「イノック・アーデン」など)で共演していたのが印象に残っている。
この録音でも安定したテクニックと快適なテンポ感でカウネとの緊密なアンサンブルを築いていた。
特にある声部を浮き立たせて面白い効果をあげている箇所もあり印象的だった。
シューマンイヤーにじっくり聴くのにふさわしい素敵なCDだった。
なお、私が入手したCDは実は再発されたもののようで、オリジナルではローベルトとクラーラ夫妻の手紙のやりとりも朗読されているようだ。
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コメント
こんばんは。素敵なCDのご紹介ありがとうございます。「忍従の花」を挟んでの歌曲集、ミニヨンの歌、それに女の愛と生涯の素敵な後奏のあとに「ゆきの花」でアルバムを締めくくるとは本当に素晴らしい選曲です。私もすぐ注文して聴いてみます。
投稿: kumagusu2005 | 2010年7月13日 (火曜日) 21時42分
kumagusu2005さん、こんばんは。
喜んでいただけてうれしいです。
シューマンの歌曲集は意外と選曲が似た感じになりやすいのですが、このカウネ&ケーリングの歌曲集ではまとまった歌曲集の前後に一息つけるような愛らしい小品をはさみこみ、全体で一つのコンサートを聴いているような流れになっているのが素晴らしいと思います。
演奏もとても素晴らしかったので、ぜひ楽しんでください。
投稿: フランツ | 2010年7月13日 (火曜日) 22時22分