アルミンク&新日本フィル/第464回定期演奏会(2010年7月24日 サントリーホール)
新日本フィルハーモニー交響楽団
第464回定期演奏会
2010年7月24日(土)14:00 サントリーホール(2階RD5列9番)
イルディコ・ライモンディ(Ildiko Raimondi)(ソプラノ)
小山由美(Yumi Koyama)(アルト)
ベルンハルト・ベルヒトルト(Bernhard Berchtold)(テノール)
初鹿野 剛(Takeshi Hatsukano)(バス)
栗友会合唱団(Ritsuyukai Choir)
栗山文昭(Fumiaki Kuriyama)(合唱指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団(New Japan Philharmonic)
クリスティアン・アルミンク(Christian Arming)(指揮)
ブラームス(Brahms)/悲歌(Nänie) op.82
R.シュトラウス(R.Strauss)/4つの最後の歌(Vier letzte Lieder)
春
九月
眠りにつこうとして
夕映えの中で
~休憩~
ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲(Variationen über ein Thema von Joseph Haydn) op.56a
ブルックナー(Bruckner)/テ・デウム ハ長調(Te deum)
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猛暑の中、サントリーホールでアルミング指揮新日本フィルの定期演奏会を聴いてきた。
声楽曲が大半を占め、オケ曲も2台ピアノ版で馴染み深いブラームスの「ハイドン変奏曲」だったので、プログラムに惹かれてチケットをあらかじめ買っていた。
ソリストは当初予定されていたソプラノのインガー・ダム=イェンセンが来日できず、イルディコ・ライモンディが代役をつとめた(素晴らしい歌唱だった!)。
最初のブラームス「悲歌」では合唱団も喪服のような黒い衣装で舞台後方に並んだ。
サントリーホールはやはり響きがよいのだろう、2階の最後列で聴いていても、ドイツ語特有の摩擦音がはっきりと聞こえてくる。
シラーの詩は"Auch das Schöne muss sterben!(美しきものも滅びねばならぬ!)"ではじまるが、この"Schöne"や"sterben"の「シュ」という音がはっきりと全面に出て聴こえてきたのは、ライヴならではと感じた。
ブラームス親友の画家の死を悼んで書かれた作品とのことだが、暗さよりも、むしろ安らかな眠りを祈るような曲調であり、演奏も美しかった。
その後にソプラノのライモンディが登場してR.シュトラウスの「4つの最後の歌」が歌われたが、私は年を重ねるにつれてますますこの歌曲集が大好きになってきた。
普段はシュトラウスの音楽と相性が悪い私なのだが、この歌曲集と「ティル・オイレンシュピーゲル」だけは本当に素晴らしいと感じるのだ。
ライモンディは細くて美しい声をもち、非常に細やかな表現を聞かせ、まさにリート向きの歌を聴かせる。
時にその声がオケに埋もれてしまうことはあっても、音楽の流れは決して途切れず、非常に胸を打つ歌唱だった。
より著名な歌手でもこれほど感銘を受けることはそうないかもしれない。
アルミングは最初の「春」で楽天的なあっけらかんとした響きを出していたので、ちょっと曲のイメージと違うなと思っていたら、後の曲ではテキストに合わせた深みを込めていて、良くなってきた。
「眠りにつこうとして」でのヴァイオリンソロ、「夕映えの中で」でのフルートによるヒバリの鳴き声なども素晴らしかった。
後半のブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」は、ハイドンのディヴェルティメント第6番からその主題がとられたが、これはハイドンのオリジナルではなく、賛美歌なのだそうだ。
主題と9つの変奏がブラームスらしい重厚な書法で多彩に展開していく。
各変奏をアルミングはちょっとした合間をあけて続けていくが、新しい変奏のスタートで必ずアルミングの鼻息が聞こえるのは、これも指揮のテクニックの一つなのだろうか。
最後のブルックナー「テ・デウム」はさきほどのライモンディ、栗友会合唱団のほかに、アルトの小山由美、テノールのベルヒトルト、バスの初鹿野剛が加わり、コンパクトながら印象的な音楽が紡がれていく。
合唱は前半の「悲歌」とは対照的に力強さを全面に押し出したもので素晴らしかった。
独唱陣もそれぞれ見事な歌いぶりを示した。
ライモンディは声も温まってきたのだろう、シュトラウスの時よりもより声が通るようになっていたし、ベルヒトルトはちょっとくすんだ声ながらテノールパートを美しく表現していた。
アルトの小山は縁の下の力持ちとして美しく支えていたし、バスの初鹿野は特にアンサンブルにおいて重厚感のある恵まれた低音で魅了した。
様々な名曲をまとめて聴くことが出来て充実したコンサートだった。
アルミングの選曲の妙にも拍手を贈りたい。
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