長島剛子&梅本実&國土潤一/生誕200年のシューマン(2010年7月16日 川口リリア 催し広場)
リリア歌の花束 第1夜 生誕200年のシューマン
2010年7月16日(金)19:00 川口リリア 催し広場(自由席)
國土潤一(お話)
長島剛子(S)
梅本実(P)
シューマン作曲
ミルテの花 作品25より(Aus "Myrten")
1.献呈
3.くるみの木
4.ある人
7.はすの花
9.ズライカの歌
11.花嫁の歌(1)
12.花嫁の歌(2)
21.孤独な涙
23.西の方に
24.きみは花さながらに
26.エピローグ
~休憩~
女の愛と生涯 作品42(Frauenliebe und Leben)
あの方にお会いしてから
だれよりもすてきなあの方
わたしにはわからない、信じられない
わたしの指にはまった指輪よ
妹たちよ、手伝ってね
あなた、ごらんになって
わたしの胸に抱かれている
今初めての苦痛をお与えになって
~アンコール~
シューマン/春だ(Er ist's)
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「リリア歌の花束」というシリーズはこの数年毎年リリアで企画されているそうだが、私は今回はじめて聴いた。
川口リリアは普段は音楽ホールやメインホールのコンサートを聴いてきたが、「催し広場」ははじめて。
段差のつけられた小さな空間で、ステージは最前列以外は客席から見下ろす形となる。
音響は必ずしも良いとは言えず、本当にイベントのための小空間といった感じである。
しかし、歌曲のコンサートにおいて、このこじんまりとしたスペースはある意味理想的と言えるだろう。
シューマンの歌曲などはもともとサロンなどで歌われていた作品なので、本来に近い形で聴けたということになるのだろう。
さて、この催しは音楽評論でよく名前を見かけ、声楽家でもある國土潤一氏によるレクチャーコンサートの形をとっていた。
最初に國土氏が登場して、今年の「リリア歌の花束」の全3回のシリーズのテーマを記念年の作曲家の作品でまとめたという話にはじまり、ローベルトとクラーラのシューマン夫妻の結婚前後の恋文をいくつか朗読しながら、分かりやすくかみくだいてシューマン歌曲について解説していた。
その話術は巧みで場慣れしているように感じられた。
ユーモアをまじえながらリラックスした雰囲気で語られる話の内容は充実していながら初心者にも配慮したものだった。
欲を言えば若干早口になる傾向があったので、固有名詞などはもっとゆっくり話した方があまり馴染みのない人にも親切だったかもしれない。
話の後に演奏を担当したのはソプラノの長島剛子とピアニストの梅本実で、ご夫婦だそうである。
「リートデュオ」という看板で数多くのコンサートを行ってきたそうで、19世紀後半から20世紀の作品を得意にされているようなので、シューマンの歌曲は彼らにとってむしろレアなレパートリーということになるのかもしれない。
ソプラノの長島さんはリリカルな清澄さをもっていながら深みも兼ね備えた奥行きのある歌唱をしていた。
この日は体調があまり良くなかったそうで、確かに弱声では不安定さが感じられたが、強く響かせると魅力的な歌声が会場を満たした。
また、ピアノの梅本さんが細やかな表情をもってテンポ感もよく、実に素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
「ミルテの花」にしても「女の愛と生涯」にしても、クラーラの父親と裁判沙汰になりながらもようやく結婚を勝ち取った1840年、いわゆる「歌の年」に作られただけに、シューマン自身のプライベートな心情が反映されていると見て間違いないだろう。
クラーラへの熱烈な愛がローベルトの歌曲創作の原動力になって、これらの愛の歌の数々が生み出された。
幸せな将来への期待感と、立ちはだかる障害に対する不安感がないまぜになって、これらの歌曲に独特の奥行きを与えたのだろう。
シューマネスクなピアノパートも含めて、シューマン歌曲の美しいメロディーの絡み合いを満喫できた一夜となった。
このシリーズの第2回はヴォルフとマーラーが予定されている。
こちらも都合がつけば出かけたいと思う。
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