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ヴォルフ/お別れ(Abschied)

Abschied
 お別れ

Unangeklopft ein Herr tritt abends bei mir ein:
"Ich habe die Ehr, Ihr Rezensent zu sein!"
Sofort nimmt er das Licht in die Hand,
Besieht lang meinen Schatten an der Wand,
Rückt nah und fern: "Nun, lieber junger Mann,
Sehn Sie doch gefälligst 'mal Ihre Nas' so von der Seite an!   
Sie geben zu, daß das ein Auswuchs is."
- Das? Alle Wetter - gewiß!
Ei Hasen! Ich dachte nicht, all' mein Lebtage nicht,
Daß ich so eine Weltsnase führt' im Gesicht!
 ノックもせずに一人の男がある晩私の部屋に入ってきた。
 「わたくし、あなた様の批評家たる栄誉をになった者でございます。」
 すぐにそいつは手に明かりをとって
 長いこと壁に映った私の影を調べている。
 近寄っては離れたりしたすえに「さてと、お若い方、
 お願いでございますからあなた様のお鼻を横からじっくりご覧くださいませ!
 あなた様のお鼻がでっぱっていることをお認めになるでしょうから」。
 -なに?こりゃたまげた。本当だ!
 ああまいった!生まれてこのかた思ってもみなかったなぁ、
 おれが顔にこんな世界級のデカ鼻をぶらさげているなんて!

Der Mann sprach noch Verschied'nes hin und her,
Ich weiß, auf meine Ehre, nicht mehr;
Meinte vielleicht, ich sollt' ihm beichten.
Zuletzt stand er auf; ich tat ihm leuchten.
Wie wir nun an der Treppe sind,
Da geb' ich ihm, ganz froh gesinnt,
Einen kleinen Tritt,
Nur so von hinten aufs Gesäße, mit -
Alle Hagel! Ward das ein Gerumpel,
Ein Gepurzel, ein Gehumpel!
Dergleichen hab' ich nie gesehn,
All' mein Lebtage nicht gesehn
Einen Menschen so rasch die Trepp' hinabgehn!
 その男はさらにあれこれいろんなことをのたもうたが、
 わが名誉にかけて、もう覚えちゃいない。
 ひょっとすると、私がなにか打ち明けるとでも思ったのだろうが、
 とうとうやつが腰を上げたので、私は足元を照らしてやった。
 階段のところまでやってきたところで
 私はうきうきしながら
 軽い蹴りを
 後ろからやつのケツにお見舞いしてやったら-
 なんてこった!ガラガラ、
 バタバタ、ドッシーン!
 こんなの見たことがない、
 生まれてこのかた見たことないよ、
 こんな猛スピードで階段を下りて行く人間なんて!

詩:Eduard Mörike (1804-1875)
曲:Hugo Wolf (1860-1903)

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ヴォルフ作曲の歌曲集「エードゥアルト・メーリケの詩」の最終曲(第53曲)。
1888年3月8日作曲。

普段やられっぱなしの批評家に対して反撃に出たメーリケの詩に、ヴォルフは戯画的な音楽をつけた。
辛らつなヴィルフの面目躍如というところだろう。

ジグザグのユニゾンのピアノに乗ってはじまる歌声はほとんど語り調子で進行する。
ピアノは徹底して批評家を茶化すが、最後に批評家を階段から突き落とした後に喝采を叫ぶあたりから演奏されるウィンナー・ワルツは後奏でピークに達する。
このあたりでほくそえむヴォルフの顔が目に浮かぶようである。
また、階段を転げ落ちる時の描写も聴きどころである。
歌手とピアニストの共同作業がとりわけ生かされた作品と言えるだろう。

先日バリトンの川村英司のリサイタルでもこの曲を聴いたが、彼がかつてピアニストの故エリック・ヴェルバとリサイタルを開いた時には、プログラムの中、もしくはアンコールで必ずこの曲を演奏したそうだ。
その二人の演奏はCDで聴くことが出来るが、ヴィーンのピアニストであるヴェルバは、他のピアニストからはなかなか聴けないユニークな趣をもって演奏していた。
ヴェルバの生演奏を一度も聴けなかったのはかえすがえすも残念である。

Ziemlich lebhaft(かなり生き生きと)
4分の2拍子-8分の6拍子-8分の3拍子
ハ短調
全115小節
歌声部の最高音:2点変ロ音
歌声部の最低音:1点ニ音

Fischer-Dieskau(BR) & Moore(P)
1950年代の録音だが、この曲の最も魅力的な演奏の一つだろう。
F=ディースカウとムーアの品のいいおふざけぶりが最高だ!

Thomas Allen(baritone) & Malcolm Martineau(piano)
ライヴ録音のようで、トマス・アレンもマーティノーも乗りに乗って演奏している。
マーティノーの奏でるウィンナーワルツも絶品である。

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