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ヴォルフ/朝露(Morgentau)

Morgentau
 朝露

Der Frühhauch hat gefächelt
Hinweg die schwüle Nacht,
Die Flur holdselig lächelt
In ihrer Lenzenspracht;
Mild singt vom dunkeln Baume
Ein Vöglein in der Früh,
Es singt noch halb im Traume
Gar süße Melodie.
 朝の息吹がそよぎ、
 うっとうしい夜を追い払った。
 野はかくも愛らしく微笑む、
 春の華やぎの中で。
 日陰の木からは穏やかに
 小鳥が朝まだき歌を響かせる。
 それはまだ半ば夢見心地に
 とろけるような甘美なメロディを歌う。

Die Rosenknospe hebet
Empor ihr Köpfchen bang,
Denn wundersam durchbebet
Hat sie der süße Sang;
Und mehr und mehr enthüllet
Sich ihrer Blätter Füll',
Und eine Träne quillet
Hervor so heimlich still.
 バラの蕾は
 オドオドと身を震わせながら頭をあげる。
 あの甘美な歌が
 奇妙にも震えをもたらしたから。
 そして、蕾を覆う葉が
 次々と広がり、ヴェールを脱ぎ捨てると、
 一粒の涙が
 ひそかにそっと浮き出るのだ。

詩:不明
曲:Hugo Wolf (1860-1903)

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「女声のための6つの歌(Sechs Lieder für eine Frauenstimme)」の第1曲。
この歌曲集はヴォルフにとってはじめて出版された記念すべき作品群である。
1877年6月6日~19日作曲。

詩の作者は不明だが、ヴォルフの父親が書き写した古い歌の本に掲載されていたようだ。
朝が訪れて、バラの花が咲くと、そこに露が浮き出ていると歌われる。
その露を“涙”と表現しているのがなんとも素敵である。

音楽は簡潔、素朴、平明で、過不足がなく、極めて美しい。
民謡調の印象的な歌声部と、繊細な音の選択はあるものの分散和音を貫くピアノパート。
非常に魅力的な作品だが、ヴォルフらしい点をこの作品から見出すのは困難だろう。

In sanfter Bewegung(穏やかな動きで)
4分の2拍子
ニ長調
全36小節
歌声部の最高音:2点ホ音
歌声部の最低音:1点ホ音

以前、投稿サイト「詩と音楽」に投稿した時の記事は以下のリンク先でご覧になれます。
 「詩と音楽」

Elisabeth Schwarzkopf(S)(静止画)
シュヴァルツコプフの歌は気品に満ちてただただ美しい。おそらくピアノはムーアと思われるが、こちらも温かく歌っている。

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