デヴィッド・ビントレーの「カルミナ・ブラーナ」(2010年5月2&5日 新国立劇場 オペラパレス)
新国立劇場バレエ公演
デヴィッド・ビントレーのカルミナ・ブラーナ
同時上演ガラントゥリーズ
2009/2010シーズン
2009/2010 Season Ballet
David Bintley's Carmina Burana
Galanteries
2010年5月2日(日) 14:00 新国立劇場 オペラパレス(2階R1列11番)
「ガラントゥリーズ」(約30分)
*使用されている音楽は以下のとおり(すべてモーツァルト作曲)
1.ディヴェルティメント第7番ニ長調K205~ラルゴ-アレグロ ニ長調
2.ディヴェルティメント第7番ニ長調K205~メヌエットⅠ ニ長調
3.ディヴェルティメント第7番ニ長調K205~アダージオ イ長調
4.4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)K101~第2番:ト長調
5.4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)K101~第1番:ヘ長調
6.4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)K101~第3番:ニ長調
7.4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)K101~第4番:ヘ長調
8.ディヴェルティメント第7番ニ長調K205~フィナーレ ニ長調
~休憩~
「カルミナ・ブラーナ」(オルフ作曲)(約1時間)
運命、世界の王妃よ
1.おお、運命よ
2.運命は傷つける
第1部
春に
3.うつくしき春
4.太陽はすべてをいたわる
5.春の訪れ
草の上で
6.踊り
7.気高き森
8.店の人よ、私に紅を下さい
9.輪舞~輪になって踊る
10.世界が我が物となるとも
第2部
居酒屋にて
11.怒りに、心収まらず
12.焙られた白鳥の歌(かつては湖に住みしわれ)
13.予は大僧正様
14.われら、居酒屋にあっては
第3部
求愛
15.愛の神はいずこにも飛び来り
16.昼、夜そしてあらゆるものが
17.赤い胴着の乙女が立っていた
18.私の心はため息みつ
19.若者と乙女がいたら
20.おいで、おいで
21.ゆれ動く、わが心
22.楽しい季節
23.私のいとしい人
ブランチフロールとヘレナ
24.たたえよ、美しきものよ
運命、世界の王妃よ
25.おお、運命よ
--------------------
<カルミナ・ブラーナ>
【振付】デヴィッド・ビントレー(David Bintley)
【作曲】カール・オルフ
【指揮】ポール・マーフィー(Paul Murphy)
【舞台美術・衣裳】フィリップ・プロウズ
【照明】ピーター・マンフォード
【合唱】新国立劇場合唱団
<ガラントゥリーズ>
【振付】デヴィッド・ビントレー(David Bintley)
【音楽】W.A.モーツァルト
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【芸術監督】牧 阿佐美
【主催】新国立劇場
『カルミナ・ブラーナ』キャスト
【フォルトゥナ】湯川麻美子
【神学生1】吉本泰久
【神学生2】福田圭吾
【神学生3】芳賀 望
【恋する女】高橋有里
【ローストスワン】寺島まゆみ
新国立劇場バレエダンサー ほか
【歌手】
臼木あい(Usuki Ai)(ソプラノ)
五郎部俊朗(Gorobe Toshiro)(テノール)
牧野正人(Makino Masato)(バリトン)
--------------------
『ガラントゥリーズ』キャスト
川村真樹/遠藤睦子/小野絢子/長田佳世
山本隆之/八幡顕光/江本 拓/福岡雄大
大和雅美/寺田亜沙子/伊東真央/井倉真未
***************
2010年5月5日(水・祝) 14:00 新国立劇場 オペラパレス(1階2列36番)
「ガラントゥリーズ」
~休憩~
「カルミナ・ブラーナ」
--------------------
『カルミナ・ブラーナ』キャスト
【フォルトゥナ】小野絢子
【神学生1】福岡雄大
【神学生2】古川和則
【神学生3】山本隆之
【恋する女】伊東真央
【ローストスワン】川村真樹
新国立劇場バレエダンサー ほか
【歌手】
安井陽子(Yasui Yoko)(ソプラノ)
高橋 淳(Takahashi Jun)(テノール)
今尾 滋(Imao Shigeru)(バリトン)
--------------------
『ガラントゥリーズ』キャスト
湯川麻美子/さいとう美帆/西山裕子/本島美和
M.トレウバエフ/江本 拓/福岡雄大/福田圭吾
今村美由起/細田千晶/加藤朋子/柴田知世
--------------------------
演奏者をすべてオーケストラピットに入れて、ステージでバレエが演じられる形での「カルミナ・ブラーナ」を新国立劇場で鑑賞した。
作曲者のカール・オルフ自身、この作品はバレエ付きで上演されるものと考えていたようなので、音楽だけを聴くよりも作曲家の意図に近いのだろう。
最初にモーツァルトの音楽によるバレエ「ガラントゥリーズ」が上演されたが、以前にバレエといえば「白鳥の湖」しか見たことがない私には、どこがどうということは分からない。
ただ、いかにも私のような素人がイメージするバレエらしいバレエといった感じ。
踊りは数人での群舞あり、ペアやソロでのダンスありと、優美さと力強さの両面を感じさせる舞台だったと思った。
私の目的は「カルミナ・ブラーナ」だったが、この猥雑な作品が演奏だけでなく、バレエも加わることによって視覚的にもどんな表現がされるのか楽しみだった。
「カルミナ・ブラーナ」の第1曲はあまりにも有名だが、フォルトゥナ(=運命の女神)役の女性ダンサーが黒のミニスカートにハイヒールを履き、目隠しして切れのいいソロ・ダンスを踊るのは、いきなり格好いい!
その後、第3曲の「うつくしき春」では、妊婦さん役2人と、前後に赤ちゃんを抱いた母親1人が登場して、命の始まりが表現されているようだった。
第5曲など、髪の毛を染めたカラフルな衣装を着た若者たちが人生を謳歌している様をダンスで表現する。
第6曲「踊り」では、沢山の男女が横一列の椅子に座りながら、音楽に合わせて手足を動かす。
「神学生1」役の若者が、聖なる世界から俗世間に飛び出して恋をして、破れるまでを第1部で巧みに表現していた。
第2部「居酒屋にて」では酒場で享楽に溺れる「神学生2」の激しい感情が表現される。
特に曲集中最も特異な作品の一つである第12曲「焙られた白鳥の歌」では、肥えた大食漢たちと「神学生2」が「ローストスワン」役の女性ダンサーを二重の意味で食す場面が描かれていて、印象に残る。
第3部「求愛」では舞台を売春宿に設定し、娼婦たちが官能的なポーズで挑発し、「神学生3」と男性ダンサーたちが欲望をあらわにする。
特に第18曲「私の心はため息みつ」では"mandaliet"というリフレインが印象的だが、娼婦たちと男たちのダンスの応酬がコミカルに描かれていた。
第23曲「たたえよ、美しきものよ」では男女とも全裸を表現したかのようなボディスーツに身をまとい、愛の賛歌となる。
しかし、第1曲が全く同じ形で回帰する最終曲「おお、運命よ」では、「神学生3」がフォルトゥナに足蹴にされて逃げ去った後に、このフォルトゥナと同じ冒頭の衣装(ハイヒールも)をまとった多数のダンサー(男性も!)がフォルトゥナと同じダンスを踊る。
「フォルトゥナのクローンたち」と書かれているので、様々な体験をしてきた若者たちが運命の女神の手中に落ちたことをあらわしているようだ。
最後を締めるには確かに壮観だが、ハイヒールを履いた男性のクローンたちには若干滑稽さも感じた。
バレエは一貫して格好よく、筋書きに沿って分かりやすく描かれていたので大満足だった。
舞台装置は簡素だが効果的だった(十字架や月が印象的)。
また、合唱団も含めてオーケストラピットに収められた演奏陣も素晴らしく、オルフの「カルミナ・ブラーナ」の迫力を見事に引き出していた。
オケの迫力、合唱の見事な表現力、それにソリストたちの存在感と、どれもが揃った素晴らしいカルミナの演奏だった。
歌手では臼木あいの声の艶が出色だった(安井陽子も安定したいい歌唱だった)。
最初は5月2日のマチネだけを鑑賞する予定だったのだが、右脇の席は舞台側の観客が前のめりになると、その人の背中越しに舞台を見ることになり、あまり楽しめなかったので、5日のチケットもとって、ようやく満喫することが出来た。
バレエ公演はオペラに比べて料金も安く、当日券も結構残っていたようなので、今後も何かめぼしいものがあったら出かけてみたいと思った。
なお、2日の公演の後に振付のデヴィッド・ビントレーのトーク・イベントがあるとのことだったが、ラ・フォル・ジュルネの予定もあったので、残念ながらそちらは参加しなかった。
| 固定リンク | 0
« ヴォルフ/炭焼き女が酔っ払って(Das Köhlerweib ist trunken) | トップページ | カークビー&ロンドン・バロック/シェイクスピア・イン・ラヴ(2010年5月12日 津田ホール) »
コメント