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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」2010 ショパンの宇宙(3日目)(2010年5月4日 東京国際フォーラム)

最終日に聴いたのは以下の3公演。

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2010年5月4日(火・祝)

公演番号:313
14:15~15:00
ホールA(フォンタナ)(2階25列73番)

小山実稚恵(ピアノ)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ヤツェク・カスプシク(指揮)

ショパン/ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11

~アンコール~
ショパン/ワルツ第7番嬰ハ短調op.64-2

5000人を収容する(そしてほぼ満席だった)会場でも、小山実稚恵の奏でる音のなんと美しかったことか。
いつも通り飾らず、どこまでも作品優位の演奏ぶりだが、ショパンの感情の綾がきめこまやかに表現されていく。
シンフォニア・ヴァルソヴィアの精妙な伴奏とともに至福の時間だった。
もはや言葉で形容するのももったいないほどのピュアな響きに酔いしれた。

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2010年5月4日(火・祝)

公演番号:376
17:15~18:00
ホールG409(グジマワ)(3列6番)

広瀬悦子(ピアノ)

フィールド/ノクターン 第14番 ハ長調
フィールド/ノクターン 第15番 ハ長調

アルカン/練習曲 ニ短調op.27「鉄道」

ショパン/ノクターン 嬰ヘ長調 op.15-2

アルカン/風(「悲愴趣味の3つの小品」 op. 15より 第2番)
アルカン/イソップの饗宴(「すべての短調による12の練習曲」 op.39より 第12番)

ショパン/ノクターン 変ホ長調 op.9-2
ショパン/バラード第1番 ト短調 op.23

~アンコール~
リスト/ラ・カンパネッラ

広瀬悦子に関して全く予備知識なしに聴いたのだが、驚異的なヴィルトゥオーゾ・ピアニストだった。
小柄な身体からは信じられないほどのスタミナで難曲ばかりを楽々こなし、そのいずれもが完璧な出来栄えだった。
アルカンという作曲家、何となく20世紀の人かなと思っていたのだが、実際にはショパンと同時代の人。
しかし、リストとは違った意味でもの凄い超絶技巧をピアニストに要求する。
「鉄道」は超高速で鉄道を走る列車を模しているかのよう。
平然と前進していく彼女の演奏は、新しいタイプのピアニストの誕生を見るようだった。
「ノクターン」の創始者として名高いフィールドの作品が聴けたのも確かに貴重だったし、ショパンのノクターンは2曲ともよく知られた作品で美しく歌って素晴らしかった。
だが、アルカンでのテクニックの印象があまりにも強く、ショパンのノクターンが場違いにすら感じられたのは私だけだろうか。
またアンコールで弾かれた「ラ・カンパネッラ」も非の打ちどころのない完璧さ。
ヴィルトゥオーゾピアニストとして選ばれた才能をもった逸材なのだろう。
ただただ、そのすさまじいテクニックと、豊かな歌心で、魔術師のように彼女の魔力にとらえられたままコンサートが終わった。
今後の活躍が楽しみである。

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2010年5月4日(火・祝)

公演番号:377
18:45~19:30
ホールG409(グジマワ)(1列8番)

江口玲(ピアノ)

ショパン/ポロネーズ ニ短調 op.71-1

ショパン/3つのエコセーズ op.72-3

ショパン/ノクターン ホ短調 op.72-1
ショパン/葬送行進曲 ハ短調 op.72-2

フランツ・クサヴァー・モーツァルト/ポロネーズop.17-1
ミハウ・オギンスキー(モシュコフスキー編)/ポロネーズ「祖国への別れ」

ショパン/ポロネーズ 変ロ長調 op.71-2
ショパン/ポロネーズ ヘ短調 op.71-3

~アンコール~

ローズマリー・ブラウン(ショパンが死後に彼女を媒介にして作曲)/バラード

ローズマリー・ブラウン(ショパンが死後に彼女を媒介にして作曲)/即興曲

今回はショパンが生前に出版しなかった初期の作品にスポットをあてて、江口自身が解説しながら演奏するという、あたかもレクチャーコンサートの趣。
大変勉強になった。

江口氏は肉付きのいい豊かな音を奏でる。
その強めの音は一見ショパンのイメージとは異なるように思えたが、巧みにコントロールされたタッチで、「3つのエコセーズ op.72-3」などは軽妙に演奏してみせた。

op.72の「ノクターン」と「葬送行進曲」は、江口氏によれば、なぜショパンが出版しなかったのか不思議なぐらい優れた作品とのこと。
先日ケフェレックの演奏でも聴いたばかりだが、あらためて10代の青年の作曲とは思えない深みのある美しさを感じた。
作曲当時妹を亡くしたショパンの悲しみがこめられているのかもしれないとのこと。
そういう作曲家をとりまく環境も影響する可能性は大きいだろう。

予定されていた「ロンド ハ長調 op.73」が省かれ、代わりに別の作曲家の作品2曲が追加された。

追加されたのは、モーツァルトの末っ子フランツ・クサヴァーによるポロネーズと、モシュコフスキー編曲のオギンスキー作曲「祖国への別れ」というポロネーズ。
「祖国への別れ」は、センチメンタルなメロディーがきわめて印象的。
ポロネーズといってイメージされる特有のリズムはポロネーズの特徴の1つに過ぎないとは江口氏の弁。
なるほどポロネーズにもいろんなタイプの曲があるものである。

かつて、音楽の素養のほとんどない女性の体を借りて多くの亡くなった作曲家たちが新しい曲をつくったという。
その女性ローズマリー・ブラウンを介して作曲された故ショパンによる2曲の短い作品がアンコールで演奏された。
そんな紛い物と否定することは簡単だが、学者たちの鑑定によると、完全にインチキとはねつけることは出来ないそうだ。
まぁ、こういう不思議なことも解明しないまま残しておくのも楽しいと思うのだが・・・。
江口氏は最初、正規のプログラムにこれらの曲を組み込もうとしたらしいのだが、LFJディレクターのR.M.氏の許可が下りなかったと言って会場を湧かせる。
そんななごやかな雰囲気のトーク付きコンサートをおおいに楽しんで、今年のLFJを終えた。

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ちなみにアルカンの「鉄道」をおそらくアマチュアの方が演奏した動画をリンクしておく。
アマチュアでこれだけ弾けたらどれほど楽しいことだろう。
 アルカン作曲「鉄道」

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