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レーピン&ゴラン/ヴァイオリン・リサイタル(2010年4月1日 サントリーホール)

ワディム・レーピン ヴァイオリン・リサイタル

Repin_golan_20100401

2010年4月1日 (木) 19:00 サントリーホール (2階LD5列12番)

ワディム・レーピン(Vadim Repin)(ヴァイオリン:1743年製グァルネリ・デル・ジェス「ボンジュール」)
イタマール・ゴラン(Itamar Golan)(ピアノ)

ヤナーチェク(Janáček: 1854-1928)/ヴァイオリン・ソナタ
 I. Con moto
 II. Balada: Con moto
 III. Allegretto
 IV. Adagio

ブラームス(Brahms: 1833-1897)/ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108
 I. Allegro
 II. Adagio
 III. Un poco presto e con sentimento
 IV. Presto agitato

~休憩~

R.シュトラウス(Strauss: 1864-1949)/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
 I. Allegro ma non troppo
 II. Improvisation: Andante cantabile
 III. Finale: Andante - Allegro

~アンコール~

ショスタコーヴィチ/24の前奏曲Op.34-17
バルトーク/ルーマニア民族舞曲
チャイコフスキー/感傷的なワルツ

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1971年シベリア生まれのヴァイオリニスト、レーピンと、リトアニア生まれのイスラエル人ピアニスト、ゴランによるヴァイオリンとピアノのためのソナタ3曲を聴いた。

レーピンといえば、ブーニンやキーシンと並んでロシアの若き期待の星だった頃の印象が私にはどうしても強いのだが、そんな彼も来年には40歳を迎えるという。
髪には白いものがかなり目立ち、ぽっちゃりしていた子供の頃が嘘のように長身でスマートになっていた。

サントリーホールの2階後方から座席を見渡すと、1階席はほぼ埋まっている印象。
根強い人気を実感した。

レーピンの演奏は知性的とでも言おうか、感情の赴くままに羽目をはずすというところがなく、常にコントロールが行き届いている。
従って、どの演奏も作品の構造がくっきりと浮かび上がってくる。
しかし、盛り上がるところでは、巧みなテクニックを駆使して、しっかりと決めてくれる。
冷静でありながら、熱さの感じられる演奏だった。

ヤナーチェクのソナタは、フレーズにしろリズムにしろ民族的な要素が大きいのだろう、あたかも異空間に連れて行かれた気分だ。
その内容はとても濃密で、新鮮で、魅力的。
大いに満足した。

続いてブラームスのソナタ第3番。
これは本来大ホールで聴くよりも小規模なサロンで聴く方がふさわしいのだろう。
だが、大ホールのほとんど最後列に座って聴いていても、さすがブラームス、作品の魅力があせることはなかった。
これはやはり名作である。

後半のR.シュトラウスのソナタははじめて聴くが、初期の作品とのこと。
作曲者の個性がまだそれほど発揮されているわけではないこのソナタを聴き進めるうちに、レーピンが何故トリにこの曲を選んだかが分かったような気がした。
第1、2楽章はとりとめのない印象を拭えなかったのだが、第3楽章はとにかく派手で華やかなのだ。
ピアノパートは常に分散和音を轟かせ、ヴァイオリンもそれに負けじと盛り上げる。
プログラムの締めにこの第3楽章はもってこいというわけなのだろう。

アンコールは3曲。
1曲目のショスタコーヴィチは、一見シンプルだが近代曲的な音の選択が印象的。
2曲目のバルトークは長めでかなり技巧的。歌、ピアノとも華やかで聴衆も盛り上がった。
最後のチャイコフスキーは短いがとても美しく、いかにもメロディーメーカーのチャイコフスキーらしい作品。

ピアニストのイタマール・ゴランは室内楽奏者としてその名前を見ることが多いが、実際に演奏を聴いたのは今回がはじめて。
これだけ多くのアーティストたちから共演を望まれるのも納得できる素晴らしいピアニストだ。
ぴったりした衣裳で足を閉じずにお辞儀する姿は若干伊達男の雰囲気。
しかし、その演奏は積極性と繊細さが同居した、吟味された音を聞かせてくれた。
冷静なレーピンに対して、ゴランがあおる場面もあったように感じた。

いいアンサンブルを聴けて満足のコンサートだった。
アークヒルズ横を通った時に見た桜並木はライトアップされてとても美しかった。

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コメント

リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは大好きな作品で、チョン・キョンファとツィメルマンという意外にして珍しいデュオによる録音をよく聴いています。

昔は珍曲扱いでしたが、近年は名だたるヴァイオリニストが盛んに録音、演奏しているので、シュトラウスの室内楽分野の代表作として、また後期ロマン派のヴァイオリン・ソナタの代表作として知られるようになりました。

レーピンといえば、ラフマニノフの友人であったメトネルのヴァイオリン・ソナタ第3番の録音が素晴らしいのでお薦めいたします。

投稿: anator | 2010年4月 5日 (月曜日) 00時20分

anatorさん、こんばんは。
anatorさんはシュトラウスのソナタ、お好きなのですね。
私はどうもシュトラウスとはあまり肌が合わないところがありまして、オケの曲もオペラもまだその良さが充分に感じられない状態です(ただし「ティル・オイレンシュピーゲル」だけは好きなのですが)。彼の歌曲も最近は随分好きな作品が増えてきましたが、以前はあまり好んでいませんでした。このヴァイオリン・ソナタはシュトラウスらしさが開花する以前の作品のように思うので、むしろもう少し聞き込めば良さが感じられるかもしれません。
お好きなanatorさんにこんなコメントで申し訳ありません。
メトネルのおすすめ、機会があればぜひ聴いてみたいと思います。

投稿: フランツ | 2010年4月 5日 (月曜日) 01時03分

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