ヴォルフ/私はしばしば思い返す(Wohl denk ich oft)
Wohl denk ich oft
私はしばしば思い返す
Wohl denk ich oft an mein vergangnes Leben,
Wie es vor meiner Liebe für dich war;
Kein Mensch hat damals Acht auf mich gegeben,
Ein jeder Tag verloren für mich war.
私はしばしばこれまでの人生を思い返す、
あなたを愛する以前はどうだったのかと。
当時は誰も私を気にとめず、
毎日が私にとって絶望的だった。
Ich dachte wohl, ganz dem Gesang zu leben,
Auch mich zu flüchten aus der Menschen Schar.
Genannt in Lob und Tadel bin ich heute,
Und, daß ich da bin, wissen alle Leute!
よく歌に生きようかと考えたり、
人々の群れから逃げ出そうかとさえ思ったものだった。
今では私は賞賛されたり非難される中に名を挙げられているが、
つまり、私がいることをあらゆる人々が知っているのだ!
原詩:Michelangelo Buonarroti (1475-1564)
訳詩:Walter Heinrich Robert-Tornow (1852-1895)
曲:Hugo Wolf (1860-1903)
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ヴォルフが最後に書いた歌曲が、イタリアの大彫刻家ミケランジェロの詩による3曲の歌曲集。
その第1曲「私はしばしば思い返す」は、過去の無名だった頃の辛さを回想した後、今は毀誉褒貶にさらされつつも誰もに知られる存在になったことは確かだと歌う。
まさにミケランジェロが自分のことを歌った詩なのだろう。
1897年3月18日作曲。
この曲の前奏が、ムソルクスキーの歌曲集「死の歌と踊り」の「子守歌」の前奏と瓜二つなのは偶然だろうか。
ヴォルフお得意の半音階進行によるピアノ、歌による不安定な音楽で始まるが、最後には壮大なクライマックスを築き、ピアノのトレモロが華やかに締めくくる。
この曲の演奏ではハンス・ホッターの心に響く歌唱が忘れられない。
Dietrich Fischer-Dieskau(Baritone) Daniel Barenboim(piano)
ディースカウの堂々たる歌とバレンボイムのどっしりとしたピアノ。なかなか良い。
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