ヴェルディ/「オテロ」(2010年2月20日 東京文化会館 大ホール)
東京二期会オペラ劇場
ヴェルディ(Verdi)/オペラ「オテロ(Otello)」(全4幕)
字幕付原語(イタリア語)上演
2010年2月20日(土)14:00 東京文化会館 大ホール (5階L1列11番)
オテロ(OTELLO)(ムーア人でヴェネツィアの将軍):福井 敬(FUKUI, Kei)
デズデモナ(DESDEMONA)(オテロの妻):大山亜紀子(ÔYAMA, Akiko)
イアーゴ(JAGO)(オテロの部下で旗手):大島幾雄(ÔSHIMA, Ikuo)
エミーリア(EMILIA)(イアーゴの妻):金子美香(KANEKO, Mika)
カッシオ(CASSIO)(副官):小原啓楼(OHARA, Keirô)
ロデリーゴ(RODERIGO)(ヴェネツィアの貴族):松村英行(MATSUMURA, Hideyuki)
ロドヴィーコ(LODOVICO)(ヴェネツィア共和国の大使):小鉄和広(KOTETSU, Kazuhiro)
モンターノ(MONTANO)(オテロの前任者で先のキプロス島総督):村林徹也(MURABAYASHI, Tetsuya)
伝令(UN ARALDO):須山智文(SUYAMA, Satofumi)
合唱:二期会合唱団(Nikikai Chorus Group)
合唱指揮:佐藤 宏(SATÔ, Hiroshi)
管弦楽:東京都交響楽団(Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra)
指揮:ロベルト・リッツィ=ブリニョーリ(Roberto Rizzi Brignoli)
演出:白井 晃(SHIRAI, Akira)
装置:松井るみ(MATSUI, Rumi)
衣裳:前田文子(MAEDA, Ayako)
照明:齋藤茂男(SAITÔ, Shigeo)
舞台監督:八木清市(YAGI, Seiichi)
公演監督:近藤政伸(KONDÔ, Masanobu)
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二期会による「オテッロ」を上野で見てきた。
シェイクスピアの「オセロー」を原作に、ボーイトが書いた台本に、晩年のヴェルディ(1813-1901)が作曲したオペラである。
第1・2幕が75分、第3・4幕も75分で、その間に25分の休憩が入った。
このオペラのテーマ、一言で言えば「嫉妬」だろうか。
オテッロの部下イヤーゴは徹底的に悪役に徹していて、自分の不満(ムーア人の手下であること、自分ではなくカッシオが副官に任命されたこと等)の腹いせの為に、周りが誤解するようなことを各人に吹き込み、破滅に追い込む。
この立ち回りのうまさは見ていて眉をひそめたくなるほど徹底しているが、こういう人って悲しいかな、自分の職場にもいるよなと見ながら思ったりもする。
オテッロはイヤーゴの嘘を信じきって、妻デズデモナとカッシオの関係を確信している。
こういう時男は間抜けだなぁなどと思うのは第三者として冷静に見ているからだろう。
嫉妬が真実を隠してしまうのは納得できるが、事情を知っているデズデモナの侍女でイヤーゴの妻のエミーリアがなぜ事が起こる前に真実を打ち明けなかったのか疑問に感じたが、このへんは原作やオペラ台本をあらためて読むことで見えてくるのかもしれない。
舞台左側の天井桟敷席はオーケストラの音が大音量で聞こえるので驚いた。
特にパーカッションの迫力は凄まじく、音が距離を感じずに直接届いてくる感じだ。
その一方で歌声はオケが薄い時にはよく聴こえるのだが、オケが盛り上がるとかき消されてしまうのは致し方ないのだろう。
演出の白井晃は俳優としての印象が強い。
とはいえ、私は演劇には全く疎いのだが、以前三谷幸喜の脚本による30分のコメディ番組をテレビで見た時に、その個性的な存在感を印象付けられていた。
今回のオペラ演出、確かに一人一人の表情が型にはまっていなくて、真実味があったように感じられた。
舞台は基本的に傾斜のある台の上で展開する。
最近オペラを見始めた私にははっきりしたことは言えないのだが、最近、傾かせた舞台の上で歌う演出が多いのだろうか。
先日の「ジークフリート」の最後の愛の場面も傾いていたような気が・・・。
歌手は歌いにくくないのだろうか。
今回の舞台、派手な装置や衣裳はほとんど無く、モノトーンを基調としており、照明効果で影を動かしたりといったこともしていた。
歌手ではオテッロを演じた福井敬へのブラヴォーが群を抜いていたように聞こえた。
確かに福井の緊迫感のある乗り移ったかのような迫真の演技はとても素晴らしかった。
歌唱も表情をはっきりと表出しようとしているのがしっかりと感じられたが、時に勢い余って歌が荒削りになる箇所もないではなかった。
だが、これだけ歌い演じられれば、文句を言うのが無粋なのだろう。
私は個人的にはデズデモナを歌った大山亜紀子に最も感銘を受けた。
どこまでも練られた声でけなげな妻を歌、演技ともに非常に見事に表現していた。
悪役イヤーゴを演じた大島幾雄は、その歌声も立ち居振る舞いも悪役そのもので、見ていて嫌悪感を催すほど役になりきっていたが、こういう態度をとるにいたった屈折した部分がさらに描かれると良かったように感じた。
ロベルト・リッツィ=ブリニョーリ指揮の東京都交響楽団は大熱演で、ドラマティックな迫力に満ちていた。
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