映画「カティンの森」を見る(2010年1月9日 岩波ホール)
映画「カティンの森」(KATYN)
2010年1月9日(土)14:30 岩波ホール
監督:アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)
原作:アンジェイ・ムラルチク 長編小説『死後(ポストモルデム)』
脚本:アンジェイ・ワイダ
ヴワディスワフ・パシコフスキ
プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
●キャスト
アンナ:マヤ・オスタシェフスカ
アンジェイ:アルトゥル・ジミイェフスキ
ヴェロニカ:ヴィクトリャ・ゴンシェフスカ
アンジェイの母:マヤ・コモロフスカ
ヤン(アンジェイの父):ヴワディスワフ・コヴァルスキ
イェジ:アンジェイ・ヒラ
ルジャ(大将夫人):ダヌタ・ステンカ
大将:ヤン・エングレルト
イレナ:アグニェシュカ・グリンツカ
アグネシュカ:マグダレナ・チェレツカ
ピョトル・バシュコフスキ:パヴェウ・マワシンスキ
エヴァ:アグニェシュカ・カヴェルスカ
タデウシュ[トゥル] :アントニ・パヴリツキ
エルジビェタ:アンナ・ラドヴァン
グレタ:クリスティナ・ザフファトヴィッチ
2007年/ポーランド映画/2時間2分/R-15/ドルビーSRD
カラー/シネマスコープ/ポーランド語、ドイツ語、ロシア語
字幕翻訳:久山宏一
後援:ポーランド共和国大使館 「日本・ポーランド国交樹立90周年」認定事業
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
--------------------
土曜日にお茶の水から神保町界隈を散策していた。
この辺りは私のお気に入りの場所で、disk unionで中古CD・LPを物色したり、古賀書店などのある古書街をぶらついたり、三省堂で新刊本のチェックをして、「エチオピア」でカレーを食べて帰るというのがお決まりのコースである。
この他にも3月に閉館してしまうカザルスホールもあるので、このところ訪れる頻度が増えている。
学生時代から何かと縁があり、この町とは随分長いつきあいになる。
さて、特に目的もないまま土曜日にやってきて、中古店のササキレコードにでも行こうとして歩いていた時に岩波ホールの映画の看板が目にとまった。
これまで一度も利用したことのない映画館だが、珍しいポーランド映画、しかも開演時間が近いとあって、なんの予備知識もないまま1階でチケットを買って映画館に入っていった。
こじんまりとした映画館はほぼ満席で、前から3列目の端にかろうじて空いていた席に座って開演を待った。
歴史に疎い私は全く知らなかったのだが、戦時中、ドイツと旧ソ連の侵略を受けたポーランドの将校たちが突如行方不明となり、後にドイツ軍によって「カティンの森」近郊に1万人以上のポーランド人の遺体が発見されたという。
それは旧ソ連軍による捕虜となったポーランド将校たちの銃殺事件だったのだが、ドイツ軍による仕業とされて、長いことポーランド人に沈黙を強いてきた。
今回、この映画を監督したアンジェイ・ワイダの父親もカティン事件の犠牲者とのことで、長い構想期間を経て作られたそうだ。
2時間もの間、様々な人間が登場して、それぞれのケースが丁寧かつ簡潔に描かれる。
顔を覚えるのが苦手な私は途中、「この人は誰だっけ」と分からなくなったりもしながら最後まで集中力がとぎれることはなかった。
ラストの数分は、この映画がR-15指定となっていることを思い出させるほど正視するのがつらい場面が続き、そのままエンドロールとなる。
無音でエンドロールが流れている間、こんなに重々しい空気が劇場を満たしていたことは私の経験した中ではほとんど無かった。
2月19日(金)まで岩波ホールで上映されるそうである。
救いのない場面の続く辛い映画だが、史実として知っておくべきことだと思った。
ご都合があえば、上映時間(1日3回)を確認してぜひご覧になってみてください(席がすぐに埋まってしまうようなので、早めに館内に入った方がいいと思います)。
--------------
(2010年4月18日追記)
2010年4月10日に墜落した政府専用機にポーランドのカチンスキ大統領夫妻と搭乗していて亡くなられたカティンの森事件の遺族の方々に心よりお悔やみ申し上げます。
| 固定リンク | 0
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- F=ディースカウの1987年来日公演(NHK Eテレ 2012年6月30日)(2012.06.29)
- 映画「クレアモントホテル」(2010年12月25日 岩波ホール)(2010.12.29)
- 映画「抵抗 死刑囚の手記より」を見る(2010年4月7日 岩波ホール)(2010.04.18)
- 映画「海の沈黙」を見る(2010年2月27日 岩波ホール)(2010.03.02)
- 映画「カティンの森」を見る(2010年1月9日 岩波ホール)(2010.01.10)
コメント
この映画とアンジェイ・ワイダ監督のことは、昨年、テレビでも取り上げていましたが、長いこと、封印されてきた歴史的事実でしたね。
10年前か、20年前か、定かではないのですが、新聞に報じられて、初めて知ったことでした。
アンジェイ・ワイダの父親が、カチンの森の犠牲者だったことは、テレビで見て知りましたが、映画化は、監督にとってのレクイエムだったのでしょう。
岩波ホール、しばらく行ってませんが、この映画、私も是非見たいと思っています。
投稿: Clara | 2010年1月11日 (月曜日) 00時05分
Claraさん、こんばんは。
Claraさんはすでにこの事件と監督についてご存知だったのですね。事件が明らかにされたのがこの十数年ほどだったとは驚きです。
私は「たまには映画でも見るか」という軽い気持ちで映画館に入ったのですが、見終わって出る時にはどんよりとした重い気分になっていました。
父親が犠牲になった事件に目を背けずに作品に仕上げるワイダ監督の思いが、この映画に込められているのでしょう。比較的淡々としたタッチで描かれていたのが、かえって事件の恐ろしさを強調していたように感じました。
ぜひご都合のつく時にご覧になってください。
投稿: フランツ | 2010年1月11日 (月曜日) 00時28分
少し前の記事へのコメントです。
今日やっと「カティンの森」を見てきました。
明日で終わりなので、今日は何が何でも行くと決め、用足しを兼ねて出かけ、夜の部を見ることが出来ました。雪も止み、暖かくなったのは幸いでした。
客席は、充分余裕があって、良かったです。
予想はしてましたが、実話に基づく映画、しかも、アンジェイ・ワイダ監督の思い入れも充分感じられる、硬質で、迫力のある映画でした。
仰るように、淡々とエピソードを丁寧に描いていたのが良かったですね。
最後の場面は、見ているのがつらくなるようで、泣いている女性も居ました。
終わっていったん白い画面になり、無音になった後、流れる音楽(何かのミサ曲でしょうかークレジットタイトルを見ましたが拾えませんでした)が、よかったなと思います。
プログラム買わなかったので、フランツさんの記事を再読して、スタッフやキャスト名など、確認させていただきました。
投稿: Clara | 2010年2月19日 (金曜日) 00時03分
Claraさん、こんばんは。
映画、ご覧になったのですね。
雪もやんで良かったですね。
コメント、有難うございました。
泣いている女性がいたとのこと、その気持ちもよく分かるほど、今でもあのラストシーンを思い出すと辛くなります。
最後に流れるのはペンデレツキの「ポーランド・レクイエム」という曲だそうです。この映画の締めとしてこれ以上ふさわしい選曲はなかったと思います。
アンジェイ・ワイダ監督の他の作品もいつか見てみたいと思います。
岩波ホール、この映画の後も戦争にちなんだ映画が続くようなので、また近いうちに出かけるつもりです。
投稿: フランツ | 2010年2月19日 (金曜日) 00時28分