沼尻竜典&東京フィル/リリア第九演奏会(2009年12月20日 川口リリア・メインホール)
リリア第九演奏会~川口第九を歌う会創立20周年記念~2009年12月20日(日) 15:00 川口リリア・メインホール(1階12列6番)
中嶋彰子(S)
小林久美子(MS)
吉田浩之(T)
甲斐栄次郎(BR)
川口第九を歌う会(合唱)
東京フィルハーモニー交響楽団
沼尻竜典(指揮)
モーツァルト/交響曲第32番ト長調 K318
~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調「合唱付」Op.125
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師走に第九を聴くという習慣が少なくとも私の中ではこれまでなかったのだが、家からそう遠くないホールで、第一線で活躍中の独唱者たちと指揮者、オケによる第九が手頃な料金で聴けるとあって、この間の日曜日、当日券を求めて聴いてきた。
私の席は12列6番だったが、前の10列分の席はとっぱらわれ、ステージになっていたので、実際には前から2列目となり、演奏者を間近に見ることが出来た。
左から2番目という端の席だが、ヴァイオリン群の最後尾やパーカッション、トロンボーン奏者を近くで見ることが出来、特に第九の最終楽章でシンバルが裏打ちから表打ちに移る様子や、トライアングルのリズムまではっきり聴くことが出来たのは貴重な体験だった。
指揮の沼尻さんは「カプリッチョ」で聴いたばかりで、今年2回目。
思ったよりも小柄だが、ステージの出入りは颯爽としていて、指揮姿もエネルギッシュでよく動く。
しかし、動きながらもオケをしっかり統率して決してばらけることがないのが素晴らしかった。
独唱者たちは第九の第4楽章が始まっても登場しないので、いつ出てくるのだろうと思ったら、バリトン独唱の直前に弦が有名なメロディを弾くあたりで4人そろって登場し、合唱団の前方に立った。
私の席からだと残念ながらソプラノの中嶋さんの歌っている姿は見えなかったのだが、ほかの3人の独唱者は落ち着いた堂々とした歌いぶりを見ることが出来た。
特に現在ヴィーンの歌劇場に在籍している甲斐さんの生歌を始めて聴けるのが楽しみだったのだが、さすがによく通る美しい低音が素晴らしかった。
テノールの吉田さんは安心して聴けるし、メッゾの小林さんも若干控えめに聞こえたが(席の関係か?)、しっかりと支えていたと思う。
現代曲などもこなすソプラノの中嶋彰子さんを聴くのも初めてだったが、声量の豊かさと声の張り、つやはさすがだった。
合唱団は女声が男声の倍ぐらいで、年配の方が多かったようだが、歌はとてもしっかりしていて、よく訓練されている印象を受けた。
第九の最後は指揮の沼尻さんが極端になり過ぎない自然さでうまくオケを煽り、スピードアップしたまま締めくくられた。
こうやってじっくり第九を聴いてみると、シラーの詩はやや難解な説教くささはあるものの、楽曲としては充分盛り上がり、演奏効果抜群で、1年の締めくくりにはいいのかもしれないと思った。
第九の前にはモーツァルトの交響曲第32番が演奏された。
この曲、全3楽章が完全に終止しないまま連続して演奏されるので、楽章というよりも3つの部分からなる単一楽章という印象を受ける。
全体でも10分ほどの短い作品だが、明朗で快活な雰囲気に満ち溢れ、この作曲当時にモーツァルトが不幸にみまわれていた(母親の死、恋人との別れ、就職活動のたびかさなる失敗)とはとても思えないほどであった。
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