R.シュトラウス/「カプリッチョ」(2009年11月23日 日生劇場)
東京二期会オペラ劇場R.シュトラウス/「カプリッチョ」
音楽のための会話劇
字幕付原語(ドイツ語)上演
台本:クレメンス・クラウス及びリヒャルト・シュトラウス
2009年11月23日(月・祝) 14:00 日生劇場(2階K列16番)
伯爵令嬢マドレーヌ:釜洞裕子
伯爵、マドレーヌの兄:成田博之
作曲家フラマン:児玉和弘
詩人オリヴィエ:友清崇
劇場支配人ラ・ロシュ:山下浩司
女優クレロン:谷口睦美
ムッシュ・トープ(プロンプター):森田有生
イタリア人ソプラノ歌手:高橋知子
イタリア人テノール歌手:村上公太
執事長:小田川哲也
8人の従僕たち:菅野敦、園山正孝、西岡慎介、宮本英一郎、井上雅人、倉本晋児、塩入功司、千葉裕一
エトワール:伊藤範子
男性ダンサー、兵士:原田秀彦
年老いた召使:久保たけし
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(Tokyo City Philharmonic Orchestra)
指揮:沼尻竜典(Numajiri, Ryusuke)
演出・装置:ジョエル・ローウェルス(Joël Lauwers)
照明:沢田祐二
衣裳:小栗菜代子
振付:伊藤範子
舞台監督:小栗哲家 、金坂淳台
公演監督:曽我榮子
制作:財団法人東京二期会
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日生劇場といえば、F=ディースカウらが参加したベルリン・ドイツ・オペラが1963年にこけら落とし公演をした劇場として名前は知っていた。
しかし、これまでオペラと縁の薄かった私はこの劇場に一度も行ったことはなく、今回「カプリッチョ」を鑑賞するためにはじめて出かけてきた。
ここのところ、オペラの面白さに少しずつ開眼してきた私は、経済的に許される範囲内でいろいろ聴いてみたい気持ちになっている。
先日フェリシティ・ロットがN響と共演して「カプリッチョ」からの一場面を非常に美しく歌ってくれたのを聴いて興味をもっていた折、このオペラ全曲が二期会によって上演されることを知り、チケットを購入することにした。
会場は日比谷駅からすぐのところにあり、交通の便はいい。
さすがに一昔前のつくりのような劇場だが、開館当時としてはきっと豪華な印象を与えたに違いない。
キャストは主要役についてはみなダブルキャストとなっていたが、私の聴いた23日に出演する歌手で以前に実演で聴いたことがあるのは釜洞さんだけだった。
初めての歌手を聴くのも期待にわくわくするものである。
「カプリッチョ」は1幕のオペラだが、全曲で2時間半を越す大作であり、今回は1時間ほどしたところで20分ほどの休憩が入った。
私の席は劇場最後列だったが、2階建てのつくりになっているせいか、新国立劇場に比べると随分ステージが近く感じられ、オーケストラピットや指揮者もはっきり見ることが出来た。
詩と音楽のどちらをとるかというテーマを、未亡人マドレーヌに思いを寄せる詩人オリヴィエと作曲家フラマンとの駆け引きに置き換えた内容である。
前半は、最初の20分ぐらいはなんとか字幕を追いながら舞台についていこうとしたのだが、連日のコンサート通い(たまたま連続してしまった)で疲れがたまっていたこともあったのか、気が付くと瞼がおりている状態で、筋の展開も分からなくなってしまい、そうこうするうちに休憩となってしまった。
休憩時間に体を動かして、後半はなんとか最後まで舞台を見ることが出来た。
正直なところ、事前に予習していなかった私にとってこのオペラは少々難しい印象を受けた。
インテリ層のらちのあかない議論を延々と聞かされているような気もしたが、途中のバレエの導入はよい気分転換になった。
沢山出てくる登場人物のそれぞれの立場をあらかじめ頭に入れておけば、結構楽しめるのかもしれない。
しかし、私のような初心者からすれば、このオペラは最後のマドレーヌのうっとりするようなモノローグを聴くためにあったようなものだった。
釜洞裕子演ずるマドレーヌを聴けたことが、今回一番の収穫だった。
彼女の声はボーイソプラノのような純粋さに、安定した技巧が加わったような印象を受けたが、伯爵令嬢の気品と落ち着きが感じられ、適役だったと思う。
歌手は総じてみなよく歌っていたように感じた(時折出てくる音楽なしのドイツ語の語りについてはいまひとつの感もあったが)。
女優クレロンの衣装は宝塚の男役のようで、演技も男役っぽく感じられたのは衣装に引きずられてそう感じただけだろうか(それとも意図的?)。
「月光の音楽」を、沼尻竜典指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は美しく演奏していた。
演出(ジョエル・ローウェルス)に関しては、ナチスの兵隊が冒頭にあらわれ、最後にはフラマン、オリヴィエを連行しようとしていたようだが、このオペラが作曲されたのが、ナチス政権の勢力が頂点にあった1942年とのことで、その政治状況を織り交ぜたということなのだろう。
最後の伯爵令嬢のモノローグでは、マドレーヌは白髪となっており、晩年の回想という設定に置き換えられているようだ。
その際に部屋のセットがゆっくりと後方に移動し、閉じられたのは、マドレーヌの現実を表現しようとしたのだろうか。
私にはその意図するところが難しく、よく分からなかった。
とはいえ、シャンデリアのある豪華な部屋のセットと、そこに多数あらわれる様々な人間模様は、視覚的には面白く、このオペラへの導入として、いい機会を与えてくれたと感じた。
今度は音楽面に集中してさまざまな音源を聴いてみたいと思った。
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