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ハイドン/彼女は決して恋心を語りませんでした

She never told her love, Hob. XXVIa no. 34
 彼女は決して恋心を語りませんでした

She never told her love,
But let concealment,like a worm in the bud,
Feed on her damask cheek...;
She sat,like Patience on a monument,
Smiling at grief.
 彼女は決して恋心を語りませんでした、
 しかし隠匿が、蕾に潜む虫のように、
 彼女の薄紅色の頬を蝕んでいくにまかせていたのです。
 彼女は座っていました、記念碑の忍耐像のように、
 悲しみに微笑みかけながら。

詩:William Shakespeare (1564-1616)
曲:Franz Joseph Haydn (1732-1809)

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「6つのオリジナル・カンツォネッタ 第2集」の第4曲目。
詩はシェイクスピアの戯曲「十二夜(Twelfth Night)」第2幕第4場の中で、道化フェステ(Feste)が「来たれ、死よ」を歌って退場した後のヴァイオラ(Viola)の台詞から採られている。

悠然たるテンポの長大なピアノ前奏で始まるが、ためらいがちに3つの和音の上行が繰り返され、主人公の恥じらいを表現しているかのようだ。
歌はかみしめるような口調で一語一語を重みをもって表現しているが、とりわけ最終行の「Smiling」は何度も繰り返され、主人公のけなげさが強調されている。
ピアノ後奏はシューベルトの「夜と夢」を思わせるゆったりとしたトレモロでしっとりと締めくくられる。

2分の2拍子(アッラ・ブレーヴェ記号)、Largo assai e con espressione、変イ長調
歌声部の最高音2点ヘ音、最低音1点ニ音でそれほど音域は広くない。
全39小節(うちピアノ前奏は14小節で3分の1を占める)。

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アーメリング(S)デームス(P):PHILIPS:1980年録音:アーメリング円熟期の歌唱だけに、せつない思いを込める声の表現に磨きがかかっている。最後の細やかな装飾は聞きもの。デームスもピアノでよく歌っている。
演奏はこちらで聴けます。

オージェー(S)ヴェルバ(Hammerklavier):ORFEO:1978年ライヴ録音:オージェーは透き通った美声が魅力的で最後の"grief"という語で一気に感情をぶつけているのが印象的。古楽器をヴェルバが弾いているのは珍しいが、テンポを揺らしながらも気持ちを込めた演奏だった(第1小節の主和音を省いて演奏していた)。

F=ディースカウ(BR)ムーア(P):EMI(ODEON):1959年録音:女声用の作品を歌うことを頑なに拒んだF=ディースカウがこの曲を歌っているのが面白い。戯曲の設定を無視して詩だけ見れば男声が歌っても問題ないと判断したのか、それとも戯曲の中でヴァイオラが男装している時の台詞だからだろうか。演奏自体はF=ディースカウもムーアも丁寧で魅力的(男声だからだろうか、第三者的な演奏)。

ホルツマイア(BR)クーパー(P):PHILIPS:1997年録音:たっぷりとしたテンポで歌うホルツマイアが最終行で聴かせる弱声は魅惑的だった。クーパーは自然なテンポ感と美しいタッチで聴き入ってしまう。

エインスリー(T)ヴィニョールズ(P):Hyperion:2001年録音:エインスリーはネイティヴならではの美しい発音で丁寧に歌っていた。ヴィニョールズはいつになく起伏の大きなドラマティックな表情で弾いていた。

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なお、歌曲投稿サイト「詩と音楽」に以前私が投稿したページをリンクしておきますので、興味のある方はご覧ください。
 こちら

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コメント

ホルツマイアーというと、あの素晴らしい美声を思い出すのですが、最近はあまりCDも出していないようですね。ちょっと気がかりです。

ところで、オピッツのリサイタルへ行ってきたのですが、ソナタ全集の録音を上回る名演で、非常に感激いたしました。会場もずいぶん盛り上がっていました。例によってブログに感想を書きましたので、ご覧下さい。

投稿: anator | 2009年11月15日 (日曜日) 22時18分

anatorさん、こんばんは。
ホルツマイアは昨年のラ・フォル・ジュルネに出演予定だったのですが、何故かキャンセルとなってしまいました。
私も随分昔に一度だけ生で聴いたのですが、そろそろまた聴いてみたいものです。

オピッツのリサイタルに行かれたそうですね。
ブログ、さきほど拝見しました。

投稿: フランツ | 2009年11月15日 (日曜日) 23時26分

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