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オピッツ/ピアノ・リサイタル(2009年11月22日 川口リリア 音楽ホール)

ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタル
Oppitz_200911ベートーヴェン4大ソナタを弾く!!

2009年11月22日(日) 15:00 川口リリア 音楽ホール(C列13番)

ゲルハルト・オピッツ(Gerhard Oppitz)(P)

[Bプログラム]

ベートーヴェン(Beethoven)作曲

ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」作品13
 第1楽章:Grave - Allegro di molto e con brio
 第2楽章:Adagio cantabile
 第3楽章:Rondo: Allegro

ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調「月光」作品27-2
 第1楽章:Adagio sostenuto
 第2楽章:Allegretto
 第3楽章:Presto agitato

~休憩~

ピアノ・ソナタ第17番ニ短調「テンペスト」作品31-2
 第1楽章:Largo - Allegro
 第2楽章:Adagio
 第3楽章:Allegretto

ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調「熱情」作品57
 第1楽章:Allegro assai
 第2楽章:Andante con moto
 第3楽章:Allegro ma non troppo - Presto

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昨年に引き続き、オピッツのリサイタルを聴いてきた。
今回はベートーヴェンの有名なソナタ4曲。
人気の高い曲ばかりでプログラムを組めるのは、オピッツの自信のあらわれだろう。

それにしても今回は前半を聴いただけで圧倒されてしまった。
「悲愴」の両端楽章では決して音を汚すことなく、絶妙なコントロールでドラマを築き上げていたし、第2楽章でのオピッツは楽器を使って、見事なまでに“歌って”いた。
そして「月光」では第1楽章の3連符が決して単調にならず、たゆたう水面のように静かに奏され、その上の高音のメロディーが美しく歌われる。
続く第2楽章ではごつごつしたドイツ風ダンスのように演奏され、最終楽章ではテクニックはあくまで手段に過ぎず、劇的な“音楽”によって圧倒してくれた。

後半ではライヴならではの熱気にようなものがさらに加わり、「熱情」の最後では自らを煽って、限界に挑戦するかのようにスピードアップしてクライマックスを築いた。
「テンペスト」の第1楽章でのレチタティーヴォ風の箇所では、あえて濁りを気にせずにペダルを踏みっぱなしにして効果的に響かせていた。

外国の人としては決して大きくはない中肉中背のオピッツだが、その演奏は潤いに満ちた音と安定したテクニック、それに自然な流れを維持するテンポ感によって、ドイツ音楽の伝統とはこういうものなのだろうと実感させてくれた。
彼の演奏はたとえてみれば、土の匂いのするごつごつした雰囲気。
しかし、それが高度なテクニックと、歌に溢れたタッチに支えられて何とも言えない温かい趣を醸し出す。
同じドイツ人のペーター・レーゼルの演奏が洗練されたスマートなものだとすれば、オピッツの演奏は実直なまでに無骨に伝統を守ろうとするものと言えるかもしれない。

聴衆の熱烈な拍手に何度も呼び出されながら昨年同様アンコールは無かった。
本プログラムだけで全力を尽くしたのだろうから、これ以上望むのも酷だろう。

来年の12月には東京オペラシティでシューベルトのシリーズがスタートするようで今から楽しみである。

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コメント

名古屋公演とは曲目が違ったのですね。できれば両方のプログラムを聴きたかったのですが・・・。そういえば、名古屋でもアンコールはありませんでした。

21日に内田光子の「来日」公演を聴いてきたのですが、オピッツとはまた異なる感銘を受けました。日本人女性ピアニストというと、ショパンばかり弾く人が多い中で(偏見?)、ほとんどドイツ音楽だけを弾いて名声を得ている彼女は稀有の存在だと思います。

投稿: anator | 2009年11月23日 (月曜日) 03時31分

anatorさん、おはようございます。
名古屋公演は随分渋い選曲だったようですが、埼玉公演は人気曲を集めたものでした。

内田光子を聴かれたとはいいですね。彼女はいつもチケットがすぐに売り切れてしまうので、私はまだ生で聴いたことはありません。
彼女のレパートリーは広範にわたっていますね。以前ラジオのインタビューを聞いた時にものすごい早口でしゃべっていたのが印象に残っています。

投稿: フランツ | 2009年11月23日 (月曜日) 09時40分

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