ベルク/「ヴォツェック」(2009年11月21日 新国立劇場 オペラパレス)
アルバン・ベルク(Alban Berg)/ヴォツェック(Wozzeck)(全3幕)2009/2010シーズン
新制作
ドイツ語上演/字幕付
200911月21日(土) 14:00 新国立劇場 オペラパレス(4階3列40番)
ヴォツェック(Wozzeck):トーマス・ヨハネス・マイヤー(Thomas Johannes Mayer)
鼓手長(Tambourmajor):エンドリック・ヴォトリッヒ(Endrik Wottrich)
アンドレス(Andres):高野二郎(Takano Jiro)
大尉(Hauptmann):フォルカー・フォーゲル(Volker Vogel)
医者(Doktor):妻屋秀和(Tsumaya Hidekazu)
第一の徒弟職人(1. Handwerksbursch):大澤 建(Osawa Ken)
第二の徒弟職人(2. Handwerksbursch):星野 淳(Hoshino Jun)
白痴(Der Narr):松浦健(Matsuura Ken)
マリー(Marie):ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン(Ursula Hesse von den Steinen)
マルグレート(Margret):山下牧子(Yamashita Makiko)
マリーの子供(Mariens Knabe):中島健一郎(Nakajima Kenichiro)
兵士(Ein Soldat):二階谷洋介(Nikaitani Yosuke)
若者(Ein Bursche):小田修一(Koda Shuichi)
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:ハルトムート・ヘンヒェン(Hartmut Haenchen)
演出:アンドレアス・クリーゲンブルク(Andreas Kriegenburg)
美術:ハラルド・トアー
衣裳:アンドレア・シュラート
照明:シュテファン・ボリガー
振付:ツェンタ・ヘルテル
原作:ゲオルク・ビューヒナー(Georg Büchner)
台本・作曲:アルバン・ベルク(Alban Berg)
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いつも京王新線の初台駅で下車した時は東京オペラシティのコンサートホールが目当てだったのだが、遅ればせながら初めて新国立劇場でオペラを聴いてきた。
会場に入るとレッドカーペットが中まで続き、ちょっとしたリッチな雰囲気を味わわせてくれる。
今回の「ヴォツェック」(「ヴォッツェク」という日本語表記の方がいいような気もするが)、全3幕が休憩なしに演奏されたが、1時間半ほどで、中だるみすることのない適度な長さだった。
無調で作られた作品らしいが、小難しさをほとんど感じなかったのは歌とストーリーを反映していたからだろうか。
歌手は無調の歌唱とシュプレッヒシュティメ(リズムだけが決められていて歌うのではなく語る)を使い分ける。
内容は、貧しい兵卒のヴォツェックと、内縁関係のマリー、そしてその幼い子供を軸にして進む。
ヴォツェックは貧しさと祝福されない子供をもつ後ろめたさから心を病み妄想を見たりする。
その一方でマリーは鼓手長に魅了され関係をもってしまう。
そのことを知ったヴォツェックはマリーを問い詰め、最後には刺し殺してしまう。
ヴォツェック自身もマリーを刺したナイフを探して溺れ死に、最後に何も分からない子供だけが取り残されるという筋。
今回の舞台は、ヴォツェック、マリー、その子供の住む殺風景な部屋がまずある。
その部屋は移動式になっており、奥に移動すると、水を薄く張った舞台があらわれ、その上で登場人物たちが長靴を履いて様々な場面を演じていた。
水の上での演技はなかなか大変そうで、演出家(クリーゲンブルク)の意図(芸術と自然の音との対比、水は鏡のように自らを映し出す)を表現するには他の方法もあったのではという気もする。
ヴォツェック役のマイヤーは見事な声と表現力だったが、心を病んでいる役にしてはあまりにも立派すぎる感もあった。
もう少し弱さがあった方が良かったのでは。
マリー役のシュタイネンは声は美しくよく通り、演技も自然で良かったが、さらに妖艶さがあったら良かったかもしれない。
大尉役のフォーゲルはまるまるとした体躯で、そういう衣装なのか、それとももともとの体型なのか遠目でははっきりしなかったが、おそらく後者ではないか。
動きにくそうな分、歌唱で大尉の嫌味な性格をよく表現していたように感じた。
奇天烈な衣装に身を包んだ医者役の妻屋秀和も立派な声だったが、あの衣装の意味がよく分からなかった。
演者の中ではほぼ全編で出ずっぱりと言ってもいいぐらいの子供(中島健一郎)が、歌う箇所がないにもかかわらず一番印象に残った。
児童合唱団のメンバーなのかと思ったが、どうやら俳優のようだ(小学生ぐらいだろうか)。
物怖じしない堂々とした演技は大物感たっぷりである。
彼をほとんど常に舞台に残すことによって、親子の複雑な関係がうまく暗示されていたように思った。
それにしても天井桟敷のお客さんは反応が冷静というのか、カーテンコールの時も私の回りで拍手をする人はまばらだった。
通の人たちの席なのだろうか。
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コメント
フランツさん、今晩は。
愛好の歌曲やピアノのほかにも、時々、オペラもごらんになっているようですが、オペラパレスは初めてだったのですね。
私は26日に行くことになってますが、ベルクのオペラは初めてなので、楽しみにしています。
4階席は、通の人たちが多いのですか。
場所によって、観客の反応が違うというのも、興味深いですね。
4階席、演目によっては、なかなか手に入りにくかったりするのは、常連さんが多いのかも知れませんね。
投稿: Clara | 2009年11月22日 (日曜日) 23時24分
Claraさん、こんばんは。
Claraさんはこれから「ヴォツェック」を聴かれるのですね。
私ももう1度見てみたい気持ちですが、木曜日はマチネなのですね。
はじめて行った新国立劇場は新鮮でした!
私の周りのお客さんももしかしたら4階席なのでただ拍手をさぼっていただけなのかもしれませんが、本当に満足した出演者にしか拍手しないという人たちなのかなぁと思ったりもしました(違うかもしれませんが)。
これからもチケットがとれればいろいろと出かけてみようと思います(来年の「ジークフリート」はチケット入手できました)。
それでは木曜日、楽しんできてくださいね。
投稿: フランツ | 2009年11月23日 (月曜日) 00時09分