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グルック/オペラ・コミック「思いがけないめぐり会い、またはメッカの巡礼」(2009年11月15日 北とぴあ さくらホール)

北とぴあ国際音楽祭2009
Gluck_20091115_pamphletグルック(Gluck)/オペラ・コミック「思いがけないめぐり会い、またはメッカの巡礼(La rencontre imprévue, ou Les pèlerins de la Mecque)」(全3幕)(日本初演)

2009年11月15日(日) 15:00 北とぴあ さくらホール(2階J列8番)

作曲:クリストフ・ヴィリバルト・グルック
台本:ダンクール(原作:ルサージュ/ドルヌヴァル)
初演:1764年1月7日、ブルク劇場(ヴィーン)

レジア:森 麻季(Maki Mori)(ソプラノ)
バルキス:野々下 由香里(Yukari Nonoshita)(ソプラノ)
ダルダネ:柴山 晴美(Harumi Shibayama)(ソプラノ)
アミーヌ:山村 奈緒子(Naoco Yamamura)(ソプラノ)
アリ:鈴木 准(Jun Suzuki)(テノール)
オスミン:羽山 晃生(Kosei Hayama)(テノール)
托鉢僧:フルヴィオ・ベッティーニ(Fulvio Bettini)(バリトン)
ヴェルティゴ:大山 大輔(Daisuke Oyama)(バリトン)
スルタン:根岸 一郎(Ichiro Negishi)(テノール)
隊長:谷口 洋介(Yosuke Taniguchi)(テノール)

ダンサー :三井聡、井上圭、関根実里、水那れお、今村たまえ、黒瀬麻美

管弦楽:レ・ボレアード(Les Boréades)(オリジナル楽器使用)
指揮:寺神戸 亮(Ryo Terakado)

演出:飯塚 励生(Leo Iizuka)

台詞:日本語
歌詞:原語(フランス語)
日本語字幕付

第1幕:35分
第2幕:40分
第3幕:40分

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昨年の北とぴあ国際音楽祭でハイドンの「騎士オルランド」を見て、とても楽しめたので、今回のグルックのオペラも出かけてきた。
このオペラ全曲ははじめて聴くのだが、この中のアリア「Einem Bach der fließt」はシュヴァルツコプフなど女声歌手の歌曲リサイタルのレパートリーとしてしばしば歌われるので、それがオペラのどのような場面で歌われるのか興味があった。
また、今年アンティ・シーララのピアノリサイタルで聴いたモーツァルトの変奏曲K. 455も、このオペラの中の「われら愚かな民の思うは(Unser dummer Pobel meint)」をテーマに用いていた。

聴き終わっての感想は今回も「楽しかった」という言葉に尽きる。
各幕が40分ほどでその間に休憩が入ったので、オペラ初心者の私には集中力が途切れないちょうど良い長さだったのが良かった。
内容的にもコミカルな歌と演技が多く、アリア以外はレチタティーヴォではない無い純粋な日本語のセリフ(イタリア人のベッティーニだけは仏語のセリフ)で進められるので、物語の展開がもたつかず、飽きることなく聴けた。

オペラのあらすじは以下のとおり。
バルソラの王子アリは、ペルシアの王女レジアと恋仲で、駆け落ちの最中に海賊に襲われ、二人は離れ離れになる。
従者オスミンとともにアリはレジアを探す旅の途中、エジプトのカイロにたどり着く。
そこへ三人の美女(バルキス、ダルダネ、アミーヌ)が次々にあらわれ、アリを誘惑しようとするが、実はこの三人はレジアの侍女で、アリがカイロに来たことを知ったレジアが、自分への恋心を試すために侍女たちを使って誘惑させていたのだった。
誘惑に落ちることのなかったアリはとうとうレジアとの再会を果たし愛を確認しあうが、狩りに出かけたはずのスルタンが怒って戻ってきたということを聞き、托鉢層に頼んでメッカの巡礼にまぎれて逃げようとする。
しかし、この托鉢層が裏切り、彼らはスルタンに捕まってしまう。
そこで従者や侍女たちが、レジアとアリの深い愛を訴え、それを聞いて心動かされたスルタンは結局二人を許す。

歌手は昨年にも増して水準が高いと感じた。
はじめて聴いた森麻季は、その名声に違わぬ実力をまざまざと実感させられた。
レジア役はこのオペラの中で最も高い技術が求められているように感じたが、彼女はどんな高音も、コロラトゥーラの箇所も、さらに内面的な表情が求められる箇所も、ものの見事に決めてしまう。
声は後ろから3列目の私の席まで、ほかのどの歌手にも増してよく通り、どの音域でもよく練られた美声は、彼女の現在の人気を裏付けるには充分であった。
そして、もちろん視覚も重要なオペラでは、彼女の恵まれた容姿もおおいにプラスに働いていた。
レジアの恋人アリを演じた鈴木准は、誠実な役どころをものの見事に表現し尽し、全く危なげのない美声で、森と堂々と渡り合っていた。
アリがタミーノだとしたら、その従者オスミンはパパゲーノのような性格と例えられるだろう。
そのオスミンを演じた羽山晃生は今日のキャスト一のコメディアンぶりを発揮していた。
コミカルな演技を全く不自然さを感じさせずに最後まで見せたのは、努力と同時にその適性もあったのであろう。
このようなキャラクターで今後活躍していく予感大である。
托鉢僧を演じたフルヴィオ・ベッティーニは以前にも北とぴあ音楽祭に出演したことがあるそうで、今回再登場となったようだ。
確かにわざわざ来日してもらうだけの声の表現力の豊かさと、巧まずしてコミカルな味を出す芸達者ぶり(時々日本語を織り交ぜるのが面白い)が素晴らしかった。
奇人画家ヴェルティゴは、オペラの本筋とは関係のない唯一の役どころながら、その役に付けられた音楽の充実ぶりは、作曲者グルックの思い入れの強さを感じさせる。
実はシュヴァルツコプフらが単独でしばしば歌った「流れる小川に(Einem Bach der fließt)」は、このヴェルティゴが最終幕で歌う"Un ruisselet, bien clair"というアリアらしいことが後で分かったのだが、このオペラを聴いている時には結局どこで歌われたのか気付かなかった。
ヴェルティゴ役の大山大輔は奇人ぶりをおおいに楽しんで演じていたように感じた。
レジアの3人の侍女たちもそれぞれ健闘していたが、古楽でよく知られている野々下由香里はカーテンコールでも拍手が大きかったように感じた。
スルタンとキャラバン隊長は最終幕しか出番がないものの、特に前者は重要な役どころと言えるだろう。
そして、男性2人+女性4人のダンサーたちは、切れのいいダンスだけでなく、ステージ上での登場人物としての演技も抜かりなく、そのプロ意識に感銘を受けた。

寺神戸亮率いる古楽集団レ・ボレアードの響きはやはり心地よい。
古楽器特有の響きに癒された気分である。

異国情緒たっぷりの舞台美術と衣装が素晴らしかったことも特筆すべきだろう(特に第1幕と第3幕)。
奇をてらわない正攻法の演出も好感をもてた。

そして、モーツァルトが変奏曲でそのテーマを使った「われら愚かな民の思うは」(第1幕の托鉢僧のアリア)は各幕がはじまる直前に開幕の合図のように鍵盤楽器で演奏されたのも洒落た演出だった(録音かもしれない。私の席からはオーケストラピットが殆ど見えないので)。

来年は生誕300年にあたるペルゴレージが特集されるとのこと。
レ・ボレアードの再登場を期待したい。

Gluck_20091115_chirashi

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