レーゼル/ピアノ・ソナタ全曲演奏会第4回(2009年10月8日 紀尾井ホール)
紀尾井の室内楽 vol.18
ペーター・レーゼル ベートーヴェンの真影
ピアノ・ソナタ全曲演奏会【第2期2009年/2公演】全4期
第4回
2009年10月8日(木)19時 紀尾井ホール(2階C2列4番)
ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(P)
ベートーヴェン(Beethoven)作曲
ピアノ・ソナタ 第19番 ト短調 Op.49-1
1. Andante(寂しげに歩くような響きではじまり、その後長調の穏やかさに移行する)
2. Rondo: Allegro(リズミカルで音が飛び跳ねているような軽快な楽章だが、ベートーヴェンらしいパッションも込められている)
ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 Op.7
1. Molto Allegro e con brio(同音連続の後、よどみのない流れとなり、一転してタランテラのようなリズムも加わり、時にユーモラスな味も加えながら様々な要素が次々にあらわれる)
2. Largo, con gran espressione(静かな緊張感を持続したままたっぷり歌う楽章)
3. Allegro(舞曲調の楽章)
4. Rondo: Poco Allegretto e grazioso(懐かしいような親しみやすい曲調が魅力的)
~休憩~
ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 Op.26 「葬送」
1. Andante con Variazioni (シューベルトの即興曲を予感させるような愛らしいテーマと、その変奏曲)
2. Scherzo: Allegro molto(細かい音の奔流のようなコンパクトなスケルツォ)
3. Marcia funebre (Maestoso)(付点のリズムが続く荘厳な葬送行進曲)
4. Allegro(せわしなく進む短い楽章。「しょっしょっしょうじょうじ」のようなパッセージあり)
ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
1. Adagio sostenuto(きわめて美しい幻想的な楽章)
2. Allegretto(愛らしい3部形式)
3. Presto agitato(激流のようなドラマティックな楽章)
~アンコール~
ベートーヴェン/バガテル Op.126-6
(上記の各楽章後のコメントは私の覚書で、プログラムに記載されていたものではありません)
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午前中まで台風に荒れた8日の夜、前回のペーター・レーゼル(1945年Dresden生まれ)によるベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会の第3回に続いて、第4回も聴いてきた。
この日も前回と同じ2階席で鑑賞したが、上から1階席を見るとほぼ席が埋まっており、徐々にこのシリーズが浸透してきたことをうかがわせる。
それにしても、「月光」終楽章の完璧なまでの熱演がしばらく頭から離れなかった。
あの難曲をこれほどの見事さで演奏するというのはほとんど奇跡的ではないか。
私自身若干冷静さを失ってしまったほど、この演奏を聴けて本当に良かった。
テクニックと音楽性、まさに今が最盛期といってもいいのかもしれない。
最高級のベートーヴェンの演奏を堪能できた。
それにしても、「葬送」というニックネームのついたソナタ第12番、第3楽章の「葬送行進曲」以外は明るく元気で、ニックネームから受ける陰鬱な印象と随分ずれがあるように感じた。
作品を有名にするという長所もあるニックネームだが、聴き手に先入観を植え付けてしまいかねないという側面もあるようだ。
レーゼルは全体を通じて今回も脂ののりきった絶好調の演奏。
これだけの異なる個性の楽章を1つずつ丹念に描き分けながら、どのようなタイプの曲にも対応してしまう万能なタイプのピアニストと感じた。
これみよがしなところが一切ないのもいつもどおり。
その真摯な姿勢に心打たれる。
アンコールは毎回異なるバガテルを1曲だけ演奏してくれるのも楽しみ。
今回はショパンの舟歌のようなロマンティックな曲だった。
今回の演奏会も録音されており、キングレコードから12月に発売予定とのこと。
楽しみに待ちたい。
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