椎名雄一郎/J.S.バッハ オルガン全曲演奏会(2009年10月3日 日本大学カザルスホール)
椎名雄一郎 J.S.バッハ オルガン全曲演奏会第7回 名オルガニスト バッハ
2009年10月3日(土) 15:00 日本大学カザルスホール(1階H列1番)
椎名雄一郎(Yuichiro Shiina)(ORG)
J.S.バッハ作曲
前奏曲とフーガ ト長調 BWV541
天にまします我らの父よ BWV737
主なる神よ、我を憐れみたまえ BWV721
いまぞ喜べ、汝らキリスト教の徒よ BWV734
バビロンの流れのほとりに BWV653b
我らが神の堅き砦 BWV720
前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532
~休憩~
前奏曲とフーガ ハ長調 BWV531
小フーガ ト短調 BWV578
トリオ ハ短調 BWV585(Adagio / Allegro)
パルティータ<イエス・キリストよ、汝、真昼の光> BWV766
協奏曲 ニ短調 BWV596(原曲 ヴィヴァルディ《調和の霊感》作品3-11)([Allegro]-Grave / Fuga / Largo e spiccato / Allegro)
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椎名雄一郎のオルガンコンサートを御茶の水のカザルスホールで聴いてきた。
2005年3月から2014年までの全12回でバッハのオルガン曲全曲を演奏しようという壮大な企画の7回目で、私は今回はじめて彼の演奏を聴くことが出来た。
会場は満席で、この壮大な企画が多くの聴衆の支持を得ていることを実感させられた。
また、吉田恵さんのコンサートに続いて、再びカザルスホールのアーレント・オルガンに再会出来たのもうれしかった。
来年3月の使用中止の前に、都合のつく限り訪れて、記憶に残しておきたいと思っている。
椎名さんは毎回テーマを設けてプログラミングしているようで、今回はオルガニストとして高い技術をもっていたバッハに焦点をあてた回となった。
特に足鍵盤の技術は高く評価されていたとのこと。
オルガニストは両手を使うだけでなく、両足も使って足鍵盤を正確に踏まなければならない。
その足鍵盤の高度な技術を発揮できる作品(例えば「前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532」や「前奏曲とフーガ ハ長調 BWV531」)が選曲されていた。
前半、後半とも最初と最後に規模の大きな作品を置き、その中に小さな作品をはさみこむ構成をとる。
それによって、聴き手は変化に富んだバッハの多彩さを満喫することが出来た。
椎名さんは高度な技術を要求される作品でも、コラールによる穏やかな作品でも、しっかりとした安定感で、堂々たる音楽を奏でていたと思う。
カザルスホールのオルガンは足の部分が隠されていて聴衆には見えないのが残念だが、全く危なげのない演奏で、あたかも手で弾いているかのようだった。
一方、「天にまします我らの父よ BWV737」のような小品は、穏やかで敬虔な響きが聴く者を癒してくれた。
有名な「小フーガ ト短調 BWV578」が聴けたのは個人的にはうれしかったが、同じ曲でも人によって選択する音栓は様々なようで、椎名氏は随分可愛らしい音色を選択していた。
最後の「協奏曲 ニ短調 BWV596」はヴィヴァルディの「調和の霊感」のオルガン編曲作品だが、ヴィヴァルディの作品を編曲することによってその作風を研究するというバッハの意図を超えて、一つの作品として、あたかもオリジナルのような充実した音楽となっていたのはバッハの才能を示していると言えるのではないか。
吉田さんの時もそうだったが、椎名さんも拍手に応える際に、アーレントオルガンにも手をかざして、楽器とともに拍手を受けていたのが印象に残った。
アンコールは無かったが、充実した音楽をたっぷり満喫できたので充分満足して帰路につくことが出来た。
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