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ハイドン/さすらい人

The Wanderer, Hob. XXVIa no. 32
 さすらい人

To wander alone when the moon, faintly beaming
With glimmering lustre, darts thro' the dark shade,
Where owls seek for covert, and nightbirds complaining
Add sound to the horror that darkens the glade.
 ひとりきりでさすらう、月がほのかに光を放ちながら
 かすかな光沢を伴って、暗い影の中を差し込むとき、
 そこではふくろうが隠れ家を探し、訴えて鳴く夜の鳥が
 森の空き地を暗くする恐怖に音を加えている。

'Tis not for the happy; come, daughter of sorrow,
'Tis here thy sad thoughts are embalm'd in thy tears,
Where, lost in the past, disregarding tomorrow,
There's nothing for hopes and nothing for fears.
 さすらうのは幸せのためではない、おいで、悲しみの娘よ、
 あなたの悲しい思いを涙の中にとどめてきたのはこの場所なのだ。
 そこは、過去には無く、明日には顧みられることもないのだが、
 希望をもてる何ものもなく、また恐れるべき何ものもない。

詩:Anne Hunter (née Home: 1742-1821)
曲:Franz Joseph Haydn (1732-1809)

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「6つのオリジナル・カンツォネッタ 第2集」の第2曲目。
第2集の6曲中、唯一のアン・ハンターの詩による作品である。
ハイドンの歌曲中、屈指の名作ではないだろうか。

アン・ハンターのこの詩は私にはかなり難しく感じられ、表面をなぞったような訳になってしまった。
月夜に恋人との悲しい思い出が残る地を歩くという内容だろうか。

陰鬱な表情を暗示するポリフォニックなピアノ前奏は8小節からなり、右手は歌声部の冒頭箇所を先取りして演奏される。
ピアノパートの右手はさまよう主人公の歩みを模しているかのようだ。

曲の構成は2節の有節形式だが、各節の同じ場所でも言葉に応じて音価(長さ)を変える気配りは忘れていない。
興味深いのは前奏と同じ内容の間奏だが、間奏の方が和音が厚くなり、単なる繰り返しにとどめていない。
楽譜を見ないと気づかないほどささいなことだが、こういうところに職人ハイドンのこだわりを感じる。

また、各節歌声部の最後に何度かあらわれる下降する半音階進行も、詩の陰鬱な雰囲気を効果的に表現していると思う。

4分の3拍子、Poco Adagio、ト短調
歌声部の最高音2点変ホ音、最低音1点ニ音で1オクターブ強の音域に収まってしまう。
全66小節。

オージェー(S)オルベルツ(P):オージェーはゆっくりめのテンポで透明な美声をじっくり聴かせる。オルベルツも相変わらず端正で美しいタッチ。

アーメリング(S)デームス(P):PHILIPS:1980年録音:アーメリングは纏わりつくようなレガートで情感を見事に浮かび上がらせる。デームスのピアノもアーメリングと歩調を合わせた演奏。

エインスリー(T)ヴィニョールズ(P):Hyperion:2001年録音:歌、ピアノともに丁寧で几帳面な演奏。

F=ディースカウ(BR)ムーア(P):EMI(ODEON):1959年録音:巧みな歌手の語りと雄弁なピアノが表情豊かに詩の内容を伝える。

Andreas Scholl(countertenor) & Markus Märkl(P)による映像が以下のサイトにアップされています。
http://www.youtube.com/watch?v=KvTXJSTo9ik

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