アーメリングのメンデルスゾーン・ディスコグラフィー
ソプラノのエリー・アーメリング(Elly Ameling: 1933-)は、今年生誕200年を迎えたメンデルスゾーンの歌曲も当然ながらレパートリーに加えているが、録音されたものはそれほど多くはなく、以下のとおりである。
1)アメリンク~歌の翼に
東芝EMI: SERAPHIM: TOCE-8956 (CD)
録音:1972年9月6-11日, Gemeindehaus Studio, Zehlendorf, Berlin
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)
歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2
ボールドウィンと共演した全18曲からなるEMIへの初オムニバス盤の7曲目に「歌の翼に」が収録されている(当時39歳)。
英独仏伊の各言語を駆使した彼女らしい名録音で、「歌の翼に」も伸びやかに歌われている。
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2)くるみの木~アーメリング/ドイツ・ロマン派歌曲集(German Romantic Songs)
日本フォノグラム: PHILIPS: X-7806 (LP)
録音:1976年9月10-14日, Kleine zaal, Concertgebouw, Amsterdam
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)
恋する女の手紙(Die Liebende schreibt) Op. 86-3
ボールドウィンと共演した11人のロマン派の作曲家による計18曲のプログラム(当時43歳)。
メンデルスゾーンの歌曲からは「恋する女の手紙」が歌われ、7曲目に置かれている。
彼女の多くの未CD化の録音の中でもとりわけCD化が待ち望まれる名盤の1つである。
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3)“歌の翼に”~アメリング・メンデルスゾーン歌曲集(全17曲)(Mendelssohn: Lieder)
CBS: 28AC1407 (国内盤LP)
録音:1979年12月4日, 30th Street Studio, New York
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
第1面
歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2 (')
挨拶(Gruss) Op. 19-5
新しい愛(Neue Liebe) Op. 19-4
ロマンス(Romanze) Op. 8-10
ゆりかごのそばで(Bei der Wiege) Op. 47-6
慰さめ(Tröstung) Op. 71-1
秋に(Im Herbst) Op. 9-5
春の歌(Frühlingslied) Op. 47-3
月(Der Mond) Op. 86-5
第2面
恋する女の手紙(Der Liebende schreibt) Op. 86-3
ズライカ(Suleika) Op. 34-4 (「ああ、湿り気をおびてそよいでくるおまえ」"Ach, um deine feuchten Schwingen")
ズライカ(Suleika) Op. 57-3 (「心をかきたてるこのそよぎは何なのでしょう」"Was bedeutet die Bewegung?")
お気に入りの場所(Lieblingsplätzchen) Op. 99-3
最初のすみれ(Das erste Veilchen) Op. 19-2
乙女のなげき(Des Mädchens Klage)
夜の歌(Nachtlied) Op. 71-6
魔女の歌(Hexenlied) Op. 8-8
(上述の歌曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)
アーメリング唯一のメンデルスゾーンのみによる歌曲集であり、同じオランダ出身のルドルフ・ヤンセンとの初共演録音でもあった(当時46歳)。
「歌の翼に」「恋する女の手紙」以外は当然ながら彼女にとって初録音であり、メンデルスゾーンの著名な歌曲と無名な歌曲がバランス良く選曲されている。
アーメリングの円熟に向かいつつある声はまだまだ充分にチャーミングで、語り口の巧みさはますます磨きがかかっている。
このLPレコードも未だCD化されていないが、復活は望み薄だろうか。
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4)「歌の翼に」
日本フォノグラム: PHILIPS: 28CD-896 (422 333-2)
録音:1988年2月22~25日, La Chaux-de-Fonds, Switzerland
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2
アーメリングがPHILIPSレーベルに最後に録音したのは、「歌の翼に」と題された19曲からなるアンコール・ピース集だった(当時55歳)。
その冒頭に「歌の翼に」が置かれており、彼女にとって3回目にして最後の同曲の録音となった。
声は濃密さを増したが、弱声の魅力がさらに増していることに驚かされる。
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アーメリングの録音したメンデルスゾーン歌曲のレパートリーは結局17曲にとどまったが、ほぼ有名な作品は網羅しており、その点では満足できるだろう(出来れば「葦の歌」や「ヴェネツィアのゴンドラの歌」も彼女の歌で聴いてみたかったが)。
やはり「歌の翼に」を3度も録音しているのが目を引く。
それはレコード会社の意向もあったのだろうが、アーメリングの日本での引退コンサートのアンコールでもこの曲が歌われており、彼女が「歌の翼に」を好んで歌っていたということは間違いないだろう。
ちなみに歌曲ではないが、若かりし頃(1968年6月)にサヴァリシュ指揮、シュライアー、アーダムら共演でオラトリオ「エリア」Op. 70全曲録音(PHILIPS)に参加していることも忘れてはならないだろう。
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コメント
なんかアーメリンクのこういうレコードを聴いて、ずーっとぼーっとしていたときが長いです。ほんとに癒されますよね!!
投稿: Auty | 2009年7月27日 (月曜日) 15時36分
Autyさん、コメント有難うございます。
アーメリングの声はきっとアルファ波を引き出すのでしょうね。おっしゃるように聴いていると気持ちよくなります。
投稿: フランツ | 2009年7月28日 (火曜日) 00時04分