アーメリングのシューマン・ディスコグラフィー
エリー・アーメリング(Elly Ameling: 1933-)は膨大なレパートリーを録音しているが、シューマンの歌曲も複数回録音している。
その録音歴を振り返ってみたい。
1)Robert Schumann / Die alten lieben Lieder: Lieder und Klavierstücke(シューマン/昔のいとしい歌:歌曲とピアノ曲)
harmonia mundi: HMS 30 853/4 (輸入盤LP)
録音:1967年, Cedernsaal des Fuggerschlosses, Kirchheim, Schwaben
Elly Ameling(S)
Jörg Demus(Hammerflügel)
※歌曲27曲とピアノ独奏曲23曲。[ ]で囲まれたタイトルはピアノ独奏曲。
1面: DIE JAHRESZAITEN(季節の歌)
[冬 1 Op. 68-38]
まつゆき草Op. 79-27
新緑Op. 35-4
[五月、いとしい五月Op. 68-13]
時は春Op. 79-24
[収穫人の歌Op. 68-18]
[楽しき農夫Op. 68-10]
羊飼いのおとめOp. 90-4
森へのあこがれOp. 35-5
[ぶどう狩りの時Op. 68-33]
最後の花も枯れてOp. 104-6
[別れOp. 82-9]
2面: VON LIEBE UND SEHNSUCHT(愛と憧れの歌)
きみにささぐ(献呈)Op. 25-1
[クラーラにOp. 99-1]
ズライカの歌Op. 25-9
[使いOp. 124-18]
ことづてOp. 77-5
[苦痛の予感Op. 124-2]
あこがれOp. 51-1
[終わりのない苦痛Op. 124-8]
問いOp. 35-9
[なぜ? Op. 12-3]
[夕べの歌Op. 85-12]
わたしの美しい星Op. 101-4
3面: VON BLUMEN UND BÄUMEN(花や木の歌)
はすの花Op. 25-7
忍従の花Op. 83-2
[孤独な花Op. 82-3]
ばらよ!Op. 89-6
私の庭Op. 77-2
私のばらOp. 90-2
[花の曲集(全5曲) Op. 19]
ジャスミンの木Op. 27-4
ちょうちょうOp. 71-2
くるみの木Op. 25-3
4面: VON MÄRCHEN, HEXEN UND WAHRSAGERINNEN(メルヒェン、魔女、占い師の歌)
[寓話Op. 12-6]
てんとう虫Op. 79-14
[妖精Op. 124-17]
小さいふくろうOp. 79-11
[予言の鳥Op. 82-7]
森の語らいOp. 39-3
ローレライOp. 53-2
海の妖精Op. 125-1
[幻影Op. 124-14]
眠りの精Op. 79-13
[夢のもつれOp. 12-7]
トランプ占いの女Op. 31-2
(上述の歌曲のうち21曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)
ちなみに上述のうち、歌曲のみ21曲抜粋されたLPは以下のとおり(CD化されている)。
テイチク:harmonia mundi: ULX-3035-H (国内盤LP)
BMGファンハウス : deutsche harmonia mundi : BVCD-38060/38061
1面
きみにささぐ(献呈)Op. 25-1
ことづてOp. 77-5
あこがれOp. 51-1
問いOp. 35-9
わたしの美しい星Op. 101-4
まつゆき草Op. 79-27
新緑Op. 35-4
時は春Op. 79-24
羊飼いのおとめOp. 90-4
森へのあこがれOp. 35-5
最後の花も枯れてOp. 104-6
2面
ジャスミンの木Op. 27-4
ちょうちょうOp. 71-2
くるみの木Op. 25-3
てんとう虫Op. 79-14
小さいふくろうOp. 79-11
森の語らいOp. 39-3
ローレライOp. 53-2
海の妖精Op. 125-1
眠りの精Op. 79-13
トランプ占いの女Op. 31-2
(上述の歌曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)
アーメリング最初のシューマン・アルバムはイェルク・デームスとの共演で、歌曲とピアノ曲を交互に織り交ぜたもの。
デームスの弾いている楽器は、1839年ヴィーン製のConrad Grafのハンマーフリューゲルである。
なお、オリジナルLPに付けられた"Die alten lieben Lieder(昔のいとしい歌)"というタイトルは、歌曲集「詩人の恋」Op. 48の最終曲"Die alten bösen Lieder(昔のいまわしい歌)"をもじったものと思われる。
34歳のアーメリングがみずみずしい美声を伸びやかに聴かせる。
デームスの揺れる表情との相性もいい。
また、アーメリングが歌ったものの中から21曲を抜粋したLPも発売された。
以前harmonia mundi時代のアーメリングの録音をまとめた4枚組のCDボックスに歌曲全27曲が収められていたが、デームスの独奏曲はカットされていた。
国内盤でも歌曲の抜粋(21曲)がCD化されているが、曲順は入れ替わっている。
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2)シューマン歌曲集(全20曲)
(SCHUMANN: LIEDER RECITAL)
EMI Angel: EAC-70224 (国内盤LP)
録音:不明(1970年前後頃?)
Elly Ameling(S)
Jörg Demus(P)
第1面
献呈 作品25の1
くるみの木 作品25の3
はすの花 作品25の7
ジャスミンのしげみ 作品27の4
ことづて 作品77の5
魂を身近に 作品77の3
あきらめ 作品83の1
憂鬱 作品74の6
愛の歌 作品51の5
夕べの歌 作品107の6
第2面
ミニョン:語れとはいわないで 作品98aの5
フィリーネ:悲しげに歌わずに 作品98aの7
ズライカの歌 作品25の9
胸のいたみ 作品107の1
ローレライ 作品53の2
ちいさな民謡 作品51の2
無言の非難 作品77の4
天が一滴の涙を流した 作品37の1
兵士の花嫁 作品64の1
トランプを占う女 作品31の2
(上述の歌曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)
2回目の録音はEMI Angelレーベルで制作され、前回と同じデームスとの共演だが、今回はモダンピアノによる演奏である。
前回の録音と共通する曲目も多いが、ミニョンの歌や「天は一滴の涙を流した」など、アーメリングの新境地を思わせる選曲もある。
未だ一度もCD化されておらず、復活が待たれる。
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3)シューマン/歌曲集「女の愛と生涯」Op. 42(+シューベルト歌曲集)(Schumann / Frauenliebe und Leben)
PHILIPS: X-7552 (国内盤LP); PHCP-24091 (国内盤CD)
録音:1973年8月15-19日, Concertgebouw, Amsterdam
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)
歌曲集「女の愛と生涯」作品42(あの方にお会いして以来;あの方はすべての男性の中で一番すばらしい方;分らないわ、信じられないわ;私の指に光る指環よ;手伝って頂戴、妹たち;やさしい友よ、あなたは不思議そうに;私の心に、私の胸に抱かれた;いまあなたは私にはじめて苦しみをお与えになりました)
(上述の歌曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)
アーメリングはリサイタルでは歌曲集「女の愛と生涯」全8曲を繰り返しとり上げていたようだが、スタジオ録音はこの1度きりである。
40歳になるのを待って、満を持して録音したのかもしれない。
声はふくよかさを増し、内的な充実が感じられる。
共演者にボールドウィンを迎え、隙のない緊密なアンサンブルを聴かせている。
なお、このLPは同時に録音されたシューベルト10曲(緑の中での歌;蝶、など)との組み合わせで発売された。
国内ではこのシューベルトとの組み合わせによるオリジナルの形でCD化されたが、海外ではSACDのハイブリッド盤でも復活している。
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4)くるみの木~アーメリング/ドイツ・ロマン派歌曲集(German Romantic Songs)
PHILIPS: X-7806 (国内盤LP)
録音:1976年9月10-14日, Kleine zaal, Concertgebouw, Amsterdam
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)
献呈Op. 25-1
くるみの木Op. 25-3
11人のロマン派の作曲家による計18曲のプログラム。
シューマンの歌曲は「献呈」と「くるみの木」の2曲が歌われ、LPのA面冒頭に置かれている。
ちなみにこの2曲とも、3度目の録音であり、アーメリングの十八番のレパートリーといえるだろう。
ボールドウィンがピアノを担当したことにより、癖のないすっきりした演奏となっている。
このLPも、シューベルトの2曲(夜咲きすみれ;あなたは憩い)がCD化されているのみであり、アルバム全体でのCD化が望まれる。
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5)シューマン/歌曲集「リーダークライス」「子供のためのリート・アルバム」
PHILIPS: 25PC-78/79 (国内盤LP)
録音:1979年4月15-21日, La Chaux-de-Fonds, Switzerland
Elly Ameling(S)
Jörg Demus(P)
歌曲集「リーダークライス」Op. 39(異郷にて;間奏曲;森の対話;静寂;月の夜;美しき異郷;古城にて;異郷にて;悲しみ;たそがれ;森の中で;春の夜)
歌曲集「子供のためのリート・アルバム」Op. 79(宵の明星;蝶;春の便り;春の挨拶;なまけ者の天国;日曜日;ジプシーの歌その一&その二;少年の山の歌;五月の歌;みみずく;野外へ出よう!;眠りの精;てんとうむし;みなし子;幸福;クリスマスの歌;歩きまわる鐘;春の歌;春の到来;燕たち;子供たちの見張り;羊飼いの別れ;春だ;紡ぎ歌;少年狩人の歌;待雪草;塔守リュンコイスの歌;ミニョン)
再びデームスと組んで、アーメリングにとって全曲としては初録音となるシューマンの歌曲集を2つ録音した(抜粋の形ではすでに録音していた曲もある)。
アイヒェンドルフの詩による「リーダークライス」(全12曲)は女声で歌われることも多く、アーメリングも来日公演で披露している。
彼女はこの録音でいつも以上にしっとりと抑制した表現を試みているのだが、声の調子は必ずしも万全ではなかったように感じられる。
一方の「子供のためのリート・アルバム」(全29曲)は、重唱曲もすべてアーメリングの多重録音によってこなしている為、おそらく一人の歌唱としては初の全曲盤だったのではないか。
「リーダークライス」は外国で全曲CD化されているが、「子供のためのリート・アルバム」は抜粋の形でCD化されているに過ぎない。
来年のシューマン・イヤーあたりで全曲復活となれば有難いのだが。
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6)「セレナータ」
PHILIPS: 35CD179 (412 216-2)
録音:1983年10月31日~11月4日, Haarlem, Holland
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
君は花のようOp. 25-24
アーメリングが世界中の歌曲を17曲集めて歌った「セレナータ」と題するCDにシューマンの「君は花のよう」が含まれている(当時50歳)。
かなり有名な作品にもかかわらず、アーメリングにとって初めての録音である。
しっとりとした味わいの感じられる歌いぶりである。
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6)「歌の翼に」
PHILIPS: 28CD-896 (422 333-2)
録音:1988年2月22~25日, La Chaux-de-Fonds, Switzerland
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
ことずてOp. 77-5
アーメリングがPHILIPSレーベルに最後に録音したのは、「歌の翼に」と題された19曲からなるアンコール・ピース集だった(当時55歳)。
その中にシューマンの「ことずて」が収録されており(第6トラック)、これが彼女が録音した最後のシューマン作品となった。
なお、この曲は1967年(harmonia mundi)、1970年頃(EMI Angel)に続き、3度目の録音であり、初期の頃との聴き比べも興味深いだろう。
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上述のように折にふれてシューマンの歌曲を録音してきたアーメリングだが、重複を除くと83曲を録音してきたことになる。
重複して録音された曲は以下の通り。
●3回録音
「ミルテ」~献呈Op. 25-1
「ミルテ」~くるみの木Op. 25-3
ことづてOp. 77-5
●2回録音
「ミルテ」~はすの花Op. 25-7
「ミルテ」~ズライカの歌Op. 25-9
ジャスミンの茂みOp. 27-4
トランプ占いの女Op. 31-2
「リーダークライス」~森の対話Op. 39-3
ローレライOp, 77-5
「子供のためのリート・アルバム」~みみずくOp. 79-10
「子供のためのリート・アルバム」~眠りの精Op. 79-12
「子供のためのリート・アルバム」~てんとうむしOp. 79-13
「子供のためのリート・アルバム」~春だOp. 79-23
「子供のためのリート・アルバム」~待雪草Op. 79-26
これほど多くのシューマンの録音を残した彼女だが、スタジオ録音は残さなかったもののステージでのみ歌ったレパートリーがあったのではないだろうか。
そういう音源が、いつの日かひょっこり発掘されたりしたら最高なのだが。
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コメント
アーメリンク大好き! 小川のせせらぎみたいな声ですよね。
投稿: Auty | 2009年7月20日 (月曜日) 18時01分
Autyさん、こんばんは。
私もアーメリング、大好き!です。
「小川のせせらぎ」とはいい表現ですね。
「はーるのおがわはさらさらゆくよ」という唱歌を思い出しました。
投稿: フランツ | 2009年7月20日 (月曜日) 20時56分