フォーレ全歌曲連続演奏会I(2009年7月8日 東京文化会館小ホール)
フォーレ全歌曲連続演奏会I-日本フォーレ協会第XX回演奏会-
2009年7月8日(水) 19:00 東京文化会館小ホール(自由席)
Op.1-1 蝶と花
Op.1-2 五月
Op.2-1 僧院の廃墟にて
Op.2-2 水夫たち
田中詩乃(S)中村玲子(P)
Op.3-1 ひとりきり
Op.3-2 トスカーナのセレナーデ
Op.4-1 漁夫の歌
Op.4-2 リディア
平林龍(BR)徳田敏子(P)
Op.5-1 秋の歌
Op.5-2 愛の夢
Op.5-3 いない人
中村まゆ美(MS)徳田敏子(P)
Op.6-1 朝の歌
Op.6-2 悲しみ
Op.6-3 シルヴィ
安陪恵美子(S)中村玲子(P)
Op.7-1 夢のあとに
Op.7-2 賛歌
Op.7-3 舟歌
秋山理恵(S)須江太郎(P)
~休憩~
Op.8-1 水のほとり
Op.8-2 身代金
Op.8-3 この世
岡田理恵子(S)徳田敏子(P)
Op.16 子守唄
Op.28 ロマンス
鈴木まどか(VLN)佐々木京子(P)
Op.61 「優しい歌」(全9曲)
武田正雄(T)須江太郎(P)
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水曜日に上野でフォーレ歌曲の全曲シリーズ1回目を聴いてきた。
フォーレの歌曲を作品番号ごとに異なる歌手が分担して(ピアニストはかけもちあり)、来年までの全4回で全曲演奏しようという壮大な企画である。
日本フォーレ協会の創立20周年を記念したシリーズとのことだが、フランス人によるフォーレ歌曲の歌唱を聴ける機会ですら極めて乏しい中で、日本人ばかりでこのような貴重な機会を得られたのは有難いことである。
EMIに録音されたフォーレ歌曲全集は、LP発売時は5枚組で、CD化にあたって4枚組になったが、私は1枚目の初期歌曲を聴く機会が圧倒的に多い。
「五月」「愛の夢」など珠玉のような歌曲(メロディというよりはロマンス)で大好きである。
フォーレ晩年の最低限の音を用いた朗誦に近づいた作品はフォーレの円熟を示していて素晴らしいのだが、やや晦渋な印象もあり、気楽に旋律美と和声の美しさを味わうには、初期の歌曲が一番である。
そんなわけで、今回の初期歌曲中心の選曲は私にとって次々に披露される宝物のような時間だった。
7人の歌手たちは世代も声域も異なる人たちで、それぞれ個性も異なり、バラエティに富んだ響きを味わうにはもってこいだった。
女声はメゾの中村まゆ美(味わいがあった)以外はすべてソプラノだったが、同じソプラノでも個性がみな異なり、堅実な田中、明朗な安陪、安定感のある秋山、しっとりとした岡田といった具合におのおのの良さを生かしていた。
まだ若そうなバリトンの平林龍はベルナックのような声に恵まれ、フランス歌曲との相性のよさを感じた。
そしてフォーレ中期の傑作「優しい歌」全曲を歌ったテノールの武田正雄はベテランの貫禄を感じさせ、生気みなぎる歌いぶりで感銘を受けた。
3人のピアニストもみな粒が揃った名手たちだったが、「優しい歌」などを弾いた須江太郎は音のパレットの豊かさと美しい響きでとりわけ素晴らしかった。
また、徳田敏子は堅実で丁寧な演奏ぶりが理想的な歌曲演奏を実現していたと感じた。
なお、後半でヴァイオリンとピアノのための小品2曲が演奏され、心地よい気分転換になった。
フォーレを演奏する人材がこんなにも豊富であることに感謝すると共に、彼らが今後もフォーレを歌う機会を多くもってほしいと願わずにはいられない。
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