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アルミンク指揮新日本フィル/シュミット「七つの封印を有する書」(2009年7月10日 すみだトリフォニーホール)

新日本フィルハーモニー交響楽団第448回定期演奏会
2009年7月10日(金) 19:15 すみだトリフォニーホール(1階3列3番)

フランツ・シュミット(Franz Schmidt: 1874-1939)/オラトリオ「七つの封印を有する書」(Das Buch mit sieben Siegeln)(日本語字幕付)

ヘルベルト・リッペルト(Herbert Lippert)(ヨハネ: T)
増田のり子(Noriko Masuda)(S)
加納悦子(Etsuko Kanoh)(A)
吉田浩之(Hiroyuki Yoshida)(T)
クルト・リドル(Kurt Rydl)(BS)
室住素子(Motoko Murozumi)(ORG)
栗友会合唱団(Ritsuyukai Choir)
栗山文昭(Fumiaki Kuriyama)(合唱指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団(New Japan Philharmonic)
クリスティアン・アルミンク(Christian Arming)(C)

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金曜日に新日本フィルの定期演奏会を聴いてきた。
曲目はフランツ・シュミットの大作オラトリオ「七つの封印を有する書」。
この曲、これまでに全く聴いたことがなかったのだが、豪華なソリスト陣の名前に惹かれたこともあって、錦糸町に出かけてきた。
聖書の黙示録をテキストにもつこの作品、プロローグと第1部が70分、休憩をはさんで第2部が50分と、かなり長大であった。

会場に入ると、アルミンクによるプレ・トークが始まるというアナウンスがあり、舞台中央に立ったアルミンクと通訳が曲の解説を始めた。
時々録音も交えて丁寧にゆっくりと語るアルミンクの解説は15分ぐらいだっただろうか。
トーク終了後、ほどなくして演奏者が舞台でそれぞれ音を鳴らしたりして短く準備した後、あっという間に本番となった。

今回は独唱者5人、オルガニスト、混声合唱団、それにオーケストラとかなりの大編成である。
シュミットのこのオラトリオはドラマティックだった。
ステージ右側に流れた字幕を追いながら音楽を聴いてみると、確かにテキストに応じた多彩な音楽が展開している。
ただ、この曲を楽しむには、テキストをよく読みながらさらに何度も聴きこむことが必要だとも感じた。
例えばドラマティックに盛り上がるところでは何度も同じような楽想がしつこいほど繰り返される。
もっと変化があった方がより聴き手を圧倒する音楽になるのではと感じたのは聴き馴染んでいないからかもしれない。

ソリストはみな熱演で満足だったが、とりわけアルトの加納悦子の深々とした声と表現力は圧巻だった。
以前ヴォルフ歌曲のコンサートで聴いて以来だったが、彼女には今後もリートをどんどん歌ってほしい。
ヨハネ役としてドラマの進行を伝える語り部のようなテノールのヘルベルト・リッペルトは、時に不安定になることはあっても全力で歌いきり、最後まで立派に務めをまっとうしたことに拍手を贈りたい。
ソプラノの増田のり子も艶々した声の響きが魅力的だったし、テノールの吉田浩之はオペラティックな表現を聴かせた。
バスのクルト・リドルは抜群の声の豊麗さとどっしりした安定感で強い存在感を放ち素晴らしかったのだが、ほかの独唱者とのアンサンブルになるとやや異質に響いた。
トリフォニーホールのオルガンは2階に設置されており、オルガニストの室住素子はストップ操作の助手とともに2階に座り、演奏していたが、オラトリオの縁の下の力持ち的な役割だけでなく、途中におかれた数曲の独奏曲が魅力的だった。
期せずしてオーケストラとオルガン・ソロの両方を楽しめたのは幸運だった。
混声合唱団も長丁場にもかかわらずよく歌っていたし、新日本フィルもアルミンクの軽快な指揮でめりはりのきいた演奏を聴かせていたと思う。

Das_buch_mit_sieben_siegeln_2009071次に実演を聴く機会があったならば、聖書の知識が乏しいので、事前に予習して臨みたいと感じた。

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コメント

フランツさん、昨日すみだトリフォニーにいらしてたんですか。
私も聴きました。
長丁場で、演奏者も大変だったでしょうが、聴く方も、黙示録ですから、字幕から目が離せず、どーんと重いものがありました。
私は1階かなり後ろだったのですが、それでも、熱気のような物は伝わりました。フランツさんがいらっしゃると知っていたら、休憩時間にでも、お話ししたかったですね。
ヨハネ役、やや声の上擦るところもありましたが、素晴らしかったと思います。合唱も、2月の「天地創造」と同じ合唱団でしたが、今回の方が、良かったと思いました。
まだ、ブログ記事、下書きのままですが、その内アップします。

投稿: Clara | 2009年7月11日 (土曜日) 23時29分

Claraさん、こんばんは。
Claraさんもいらしていたのですね。お会いできず残念でした。
私は最初は土曜日の方に行くつもりだったのですが、ここ数週間、毎週土曜日にコンサートに出かけていて少しゆっくりしたいと思ったので、金曜日の会社帰りに当日券を買って聴くことにしました。
私は前の方の左端の席だったので、第1ヴァイオリンの後ろの席が真正面で、独唱者たちはずっと右側でしたので、響きの面では理想的ではなかったかもしれませんが、パーカッションの響きなど、迫力満点でした。
Claraさんのおっしゃるとおり、黙示録の壮絶な描写は重い印象を受けますね。
私は字幕を追うのが精一杯だったので、あらかじめ黙示録を読んでいけばよかったと思いました。
Claraさんのご感想も楽しみにしております。

投稿: フランツ | 2009年7月12日 (日曜日) 00時13分

この曲はヴェルザー=メストの録音で聴いています。フランツ・シュミットでは、交響曲第4番が傑作だと思います。ぜひ、聴いてみてください。第1~3番は平凡なのに、第4番で急に才能が開花したような感じがします。その他、「軽騎兵の歌による変奏曲」も名曲だと思います。

投稿: anator | 2009年7月12日 (日曜日) 22時55分

anatorさん、こんばんは。
さすがanatorさん、フランツ・シュミットも深く聴いておられるのですね。
歌詞対訳が欲しいのですが、国内現役盤は少ししかないようで、ミトロプーロス盤でも購入しようかと思っているところです。
私は今回はじめてこの作曲家の作品に接して、もう少し聴きこんでみないと早急な結論は出せないように感じました。
私はあまり交響曲は得意ではないのですが、anatorさんのお勧めに従って第4番も聴いてみることにします。
ご紹介、有難うございました。

投稿: フランツ | 2009年7月12日 (日曜日) 23時06分

フランツ・シュミットの交響曲第4番には、マーラーの交響曲第10番のような不安、虚無、諦念、そしてブラームスの交響曲第4番を思わせるロマンティックでありながら古典的様式を守った節度があります。

フランツ・シュミットは決して一級の作品ばかりを書いたわけではありませんが、記念碑的な作品をいくつか書いたことは確かだと思います。そして、彼の名前は、その数少ない名作だけでも、後世に伝えられていくでしょう。

投稿: anator | 2009年7月14日 (火曜日) 00時24分

anatorさん、こんばんは。
フランツ・シュミットに関して、さらなる解説を有難うございました。
ブラームス、マーラーの要素を内包したシュミットの交響曲、どんな感じなのか興味がわきます。

「七つの封印を有する書」は彼の代表作の一つのようですが、ほかの作品も含めて、今後少しずつこの作曲家の再評価がなされていくのかもしれませんね。

投稿: フランツ | 2009年7月14日 (火曜日) 01時45分

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受信: 2009年7月12日 (日曜日) 11時08分

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