ティベルギアン/ピアノ・リサイタル(2009年6月27日 東京文化会館小ホール)
セドリック・ティベルギアン ピアノ・リサイタル東京文化会館で聴く
シリーズ「ヨーロッパ・ピアノの最先端」第2回
2009年6月27日(土) 18:00 東京文化会館小ホール(K列22番)
セドリック・ティベルギアン(Cédric Tiberghien)(P)
ブラームス/8つの小品 op.76
Brahms / Piano Pieces op.76
バルトーク/野外にて Sz.81
Bartók / Out of Doors Suite Sz.81 (Szabadban)
I. With Drums and Pipes(笛と太鼓)
II. Barcarolle(舟歌)
III. Musette(ミュゼット)
IV. The Night's Music (夜の音楽)
V. The Chase(狩)
~休憩~
バルトーク/3つのチーク県の民謡 Sz.35a
Bartók / 3 Songs from the District of Csík Sz.35a
I. Rubato
II. L'istesso tempo
III. Poco vivo
バルトーク/ブルガリアのリズムによる6つの舞曲(「ミクロコスモス Sz.107」第6巻より)
Bartók / 6 Bulgarian Dances (from Mikrokosmos vol.VI, Sz.107)
バルトーク/ルーマニア民俗舞曲 Sz.56
Bartók / Roumanian Folk Dances Sz.56
I. Stick Dance(棒踊り)
II. Braul(飾り帯の踊り)
III. The Stomper(足踏み踊り)
IV. Bucsumi Dance(ブチュム人の踊り)
V. Romanian Polka(ルーマニア風ポルカ)
VI.Quick Dance(速い踊り)
ブラームス/ハンガリー舞曲 第1番~第10番(ブラームス自身によるピアノ独奏版)
Brahms / 10 Hungarian Dances (original version for solo piano)
~アンコール~
ブラームス/ワルツOp.39-15
ドビュッシー/スケッチ帳より
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1975年生まれのフランスのピアニスト、セドリック・ティベルギアンのリサイタルを聴いた。
先週のシーララに続き、東京文化会館小ホールでのシリーズ「ヨーロッパ・ピアノの最先端」の第2回目である。
シーララがまだ知る人ぞ知る存在だったのに対して、ティベルギアンはすでにCDもかなり出しているため、それなりに知られているのだろうか。
かなり席は埋まっていた。
私の席はシーララとのセット券で同じ場所だったのだが、ちょうど真ん中あたりで、手の動きも見えつつ、響きの面でもちょうどよく聴こえて恵まれた席だったように感じた。
長身のティベルギアンは、鍵盤に向かいながら、前かがみになったり、背筋を伸ばしたり、自在な動きで演奏する。
それが見た目にうるさくならず、音楽の流れと自然に連動した動きになっているのが良かった。
最初のブラームス、第1曲の「カプリッチョ」の冒頭、ゆっくりめのテンポから徐々にテンポをあげて、基本的なテンポにつなげていくという箇所など細やかな表情をつける。
8曲を通して、含蓄に富んだ響きで成熟した音楽を聴かせてくれた。
一変して、バルトークの「野外にて」は激しいリズムが特徴的な作品群。
打楽器的な要素を盛り込んでいるため、演奏者がそのように弾くのは作曲家の意思に適っているのは確かだが、ティベルギアンは激しいながらも決して汚い音にはならない。
そのコントロールのうまさに非凡さを感じた。
後半は民族色を前面に出したバルトークとブラームスの作品でまとめ、前半と好対照をなしている。
そのプログラミングは確かに良く考えられたものだったと思う。
バルトークの3つの曲集は拍手による中断もなく、若干の間を置きながら連続して演奏された。
それにしても、「チーク県の民謡」と「ルーマニア民俗舞曲」が民族色豊かで、いかにもスラヴの響きといった趣だったのに対して、
その間に演奏された「ミクロコスモス」に含まれている「ブルガリアのリズムによる6つの舞曲」は、スラヴ調というよりも、どことなくJazzyな明るさと開放感が感じられたのが興味深かった。
ティベルギアンの演奏も、そのあたりを意識した弾き方だったように感じた。
最後はブラームスの連弾用「ハンガリー舞曲」の第1番~第10番を作曲家自身がピアノ独奏用に編曲したものが演奏された。
これは、プログラムの最後に置かれるにはもってこいの気楽に聴けるエンターテインメントであった。
しかし、見た感じ、恐ろしくテクニックが要求されているようで、ティベルギアンも忙しそうに手を動かしていたが、テンポの急激な変化やリズムの扱いなども含めて、全く見事に演奏され、聴いていて思わず体を揺らしたくなるほど楽しめる音楽だった。
アンコールで弾かれたブラームスの有名なワルツで聴き手は癒され、続いて弾かれたドビュッシーでこのピアニストのルーツを思い起こさせて、盛況のうちにコンサートは終了した。
テクニックと音楽性が共に備わったピアニストとして、今後ますます大成していくであろう。
2週にわたっていいピアニストを知ることが出来て、満足の週末だった。
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